冒険者 35 アルフレッド・マルドゥーク・バリアンスタール
35
私はカラハンの銀鷹騎士団団長、アルフレッド・マルドゥーク・バリアンスタール。
たまたま同行することになった不審な女冒険者が強大な水系の魔法を駆使して、エルフたちの襲撃を未然に防いだ。
だが魔術師の正装をまとったその女は、とんでもない事を言い出した。
自分はナンドールによって召喚された異世界人だが、聖女ではない、と。
どういうことだ。
ドア・ナンドールの聖女召喚は瘴気に侵されつつあるルウム大陸の八王国すべての希望。
各国は召喚の秘儀を伝える唯一の国、ナンドールに莫大な貢物をして聖女による浄化を希う。
かくいう私も、召喚の儀式が滞りなく行われたという声明を受け、ナンドール王に拝謁し、カラハンへの浄化の旅を願って来たところだというのに。
それが、失敗だと?
この女。
ステータス鑑定の水晶珠を破壊するほどの魔力を持ちながら、制御することが出来ないという。
聖女は全属性を持つが、攻撃魔法を使うことは出来ないはず。
ヨハンの話によれば、浄化の魔法は使えず、ひどい瘴気酔いをおこしていたという。
ならば、この女はただの魔女にすぎないのか?
聖女召喚が失敗に終わったのなら、この度の魔との闘いは大変に厳しいものになる。
魔法に長けるエルフのステータス鑑定を受け付けぬほどの力を持つ、魔女。
召喚したナンドールを忌避し、逃亡した魔女。
これは緊急事態、早急に王の采配を仰がねば。
この女。逃がすわけにはいかぬ。
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エルフたちを阻んだのはただの生活魔法だとは、夢にも思わない熊さんでした。




