冒険者 31 エルフたち その2
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しばらくして連れてこられた若者はおびえてきょときょとしていた。
ヨミは彼のとなりにいた雇い主の奴隷商人をいきなり当て落として、彼だけ攫って来たらしい。
こらこら、なんてことするんじゃ。
若者は碧と翠ちゃんを見るとほっとしたような顔をした。
二人も笑顔で彼を迎える。
「良かった、元気そうだね」
縄を解かれた若者はまだ十七、八だろう。商人ズマの雇人、リクといった。
商品の世話が上手いので、貴重なものを扱うときには同行するのだと。
しかし。
「申し訳ありません、俺の家族は代々ズマ様の商会で働いています。
ご主人の仕事についてしゃべることは出来ません」
違法なことをしていても、しゃべれば家族に類が及ぶと。
「俺に出来るのは、皆が出来るだけ楽になるようにする事だけなんです」
だけどエルフの食べ物のことは教えてくれた。
エルフはやはり菜食主義、というか、主食は樹液、蜜、花粉から作られるパンのようなもの。
人間ほど煩雑に食べる必要はなく、その代わり綺麗な水と空気、森林浴が欠かせない。
「パンタールまでの短い旅なので、特に用意はしなかったのです」
二日ほど前に食べさせて、そのままですますはずだったと。
話してるうちに熊さん隊長がやって来た。
ひげでよくわからないけど、額にしわを寄せたまま。
「面倒なことになった」
エルフたちはやはり、碧ちゃんと翠ちゃんの捜索隊だった。
エルフたちとは、ほとんどすべての国が不可侵条約を結んでいる。
二人を引き渡すことに異存はない。
だが。
「魔女殿を乳母として買い取りたいと」
はあ?




