冒険者 29 馬車の旅 その5
29
私はびしょぬれで四つん這いになり、水たまりに手をついてぼーぜん。
ヨミがすぐ横で、私を庇うように片膝をついている。
『主、主っ!偽装が解けとるっ!』
帽子の切迫した声に見上げると、黒いサテンの縁が。
見下ろすと短い冒険者風マントだったものが、裏地が赤い黒のサテンに。
あちゃー。
どしどし、と熊さん団長が、抜身の剣を手に私を通り越し、林との間に立ちふさがった。
「下がっていろ、魔女」
うー・・・ばればれ。
私はヨミに支えられ、がくがくする膝をおさえて立ち上がった。
もう、どんだけ魔力を使ったんだろう。
殺虫剤をかけられた虫みたいに落ちてきた人たちは、ずぶぬれでひと固まりになって。
あ、人じゃないわ、あれ。
二十人くらいか。
皆細身で背が高く、樹々に溶け込むような茶系緑系の服。
フードからのぞく明るい色の髪。
弓を持ってる人が多いけど、構えてはいない。
矢も弦もびしょぬれになっちゃったからねー。
ロビン・フッドの一団。
じゃない、エルフたちだ。
そうだ。忘れてた!
碧ちゃん!翠ちゃん!
私は馬車に走った。




