冒険者 27 馬車の旅 その3
27
「エルフたちに何を食べさせていたの?」
奴隷商人、何となくナマズを連想させる太った中年男と手下らしい若い男は、両手を縛られて草原に座り込んでいた。
「ああ、あの子たちには・・・げふっ!」
説明しようとした若い方が、商人から肘鉄を喰わされ、黙った。
商人はこちらを見てにっこり・・・いや、にったりと笑う。大きな口の端が上を向くとますますナマズっぽい。
「それは困っているだろうな、あれらは人の食物を食せん。
特別の餌が必要で、それも慣れた人間の手からでないと受け取らないのだ」
「餌」、という言葉にかちんときたけど、ここは我慢だ。
「それで?何をあげればいいの?いままで何をあげてきたの?」
「あんた、冒険者だな」
商人は見張りの騎士をちら、と見て、声をひそめる。
「取引せんか?あれらを生きたままパンタールに持ち込めれば大金になるぞ」
「エルフを売買するのは禁止されているはずでしょ。私はカラハンの騎士団からあの子たちの世話の依頼を引き受けてるのよ」
「カラハンの騎士どもか。よそ者が大きな顔をしおって。
あいつらが出しゃばって来たおかげで、大損になったわ」
「損どころじゃないわ。
エルフを捕らえるのも、売るのも重罪よ。
家財没収、本人は鉱山奴隷落ち」
と、『帽子』から仕入れた知識で言う。
だが、ナマズはにったり笑いを深くする。




