冒険者 25 馬車の旅
25
西部劇に出て来そうな、六頭立ての大きな幌馬車。
馬車にもいろんな種類があり、これは整備された道を速度を上げて走れる、荷台の大きな商業用の馬車で、魔石を使った道具をサスペンションとして使っているので、揺れはほとんどないそうだ。
ヨミは御者役の騎士と共に御者台に座り、団長さんと二人の騎士が護衛、一人が替え馬と荷駄をひき、馬車に繋がれてた商人二人と生き残った護衛四人は縛られたまま荷駄に乗せられ。
総勢二十人。すごい大所帯になった。
パンタールまで、馬車で十日。
途中で官憲に引き渡せないかと、団長たちが相談している。
騎士六人でこれだけの面倒見るのはきついだろう。
ゆっくりと馬車が動き出した。
私は御者台に背を向けた位置で座り、エルフの子供の「翠」と「碧」ちゃんはいろんなことがあって疲れたのか、両側から私の膝を抱えて、うとうと。
貴族のお姫様は一方にしゃちこばって座り、しかめ面のお婆さんはもう一方でショールにくるまり、美女二人は後ろの方で外を覗いては銀鷹の騎士たちの品定めに余念がない。
奴隷商人から解放された安心感もあってか、大声できゃいきゃいとはしゃぐ声に、次第にお姫様の顔が引きつって来て、とうとう爆発した。
「いいかげんになさい!あなたたち!
はしたないですわ!
騎士たちのお仕事の邪魔になりますことよ!」
「あーあ、いい子ちゃんぶっちゃってぇ」
「おじょーひんでいらっしゃいますわねぇ、お姫様」
「おんなじ奴隷同士だったくせにさ」
「おだまりなさい!
私はアスコレットの男爵令嬢!身代金目当てに誘拐されたのよ!
下賤なあなたたちと一緒にしないで!」
「アスコレットー?知ってるー?」
「知-らないわねー。どこの田舎貴族ー?」
ぎゃはは、と笑う二人。
「翠」と「碧」ちゃんが目を覚まし、おびえたように身じろぎする。
「あなたたち少し静かにして。この子たちがこわがるわ」
「なーに、冒険者風情があたいたちに命令する気?」
「態度でかいわよ、この年増!」
ぴきっ!
「うるさいと、言われておろうが」
私が言い返す前に、地の底から響くようなおどろおどろしい声で老婆がしゃべった。
ショールの下から鳥の足のように干からびた指が出て、二人を、そして御令嬢を指さす。
「モアの呪いで口を閉ざされたいか?」
ひぃっ、と息を呑んで三人がのけぞる。
「ふんっ!」
じろりとにらんだ老婆は、ショールにくるまり直し、眼を閉じる。
なんだかすごく怖いんですけどー・・・。
『やれやれ』
思った通りじゃと、帽子がため息をつく。
私も御者台に乗りたいよー。
早く先に進みたいのに、戦いや馬車の修理で時間を喰ったため、街道沿いの宿場に着く前に陽が傾いて来た。
今夜はどこかで野営することになる。




