聖女 7 水晶崩壊
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ピシっ・・・ピピピ・・・カシャン。
水晶珠はいくつかの破片と化して、天鵞絨の台座の上で小さな音を立てて山になってしまった。
ぎゃー!やらかしちゃったー!
凍り付く群衆。
こっ、これ高価そうだよねー。国宝級とかー。
どどど、どーしよう・・・どーしよー・・・。
しかとだっ!
しかとするしかないっ!
私は黒レースの手の甲で口元を隠して、高笑い。
「ほほほ、ずいぶんと安物の魔道具ですことね」
固まっている国王に、にっこり。
「これで、よろしいかしら?」
こくこくと無言でうなずく王様に背を向け、反対側の扉へ向かって歩き出す。
たっぷりしたマントで良かったぁーっ。膝が笑ってるよぉーっ。
すっ、と青に金モールの軍服が近づいてきた。
カチリ、とブーツの踵を鳴らして敬礼する。
「ご案内します。アルカ様、こちらへ」
金色のくせ毛を背に垂らした、青い眼の。
おお、舞台で見るような男装の麗人っ!
ここまで見事に軍装を着こなす女性は、夏冬のイベント会場でも見たことがない。
眼福、眼福。
長い廊下をついて行き、案内されたのは、豪華な客間。
お茶と軽食の乗ったテーブルの横で、ブルーとピンクの、パステルカラーのふわふわの髪をした、双子の少女が揃って頭を下げた。
「どうぞ、おくつろぎくださいませ」
おお、色違いで同じ顔だ。これはかわいい。
チカっ。
【二件の『愛玩申請』感知 受諾しますか?】
え?しない、しない
にこやかに次の間や寝室、浴室の仕様を公開する二人を見ながら、ふと疑問に思う。
頭の中で聞こえるこの声、さっきは問答無用で失敗宣言してたよね。
【マスターのお好みを考慮しました】
なんですとー?
男装の麗人は、私が満足そうなのを見ると、再び綺麗な敬礼をして、去っていった。
あれ?
あの武官さん、何もしかけてこなかった。
初めてまともな対応だったわよ。