冒険者 23 カラハンの騎士 その3
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〈熊さん視点〉
まったく、当てが外れおったわ。
闇の奴隷商人が高額の物件を取引したと聞いて、てっきり攫われた『聖女』だと思ったのに。
必死で追いかけて急襲してみれば、物件はエルフだった。
各国が保護の対象としているエルフだから、救出の褒美は出るだろうが。
『聖女』探しは、また、振出しに戻ってしまう。
しかしあの男・・・只者ではないな。
熊、いや、アルフレッド・バリアンスタールは、静かにたたずむ背の高い冒険者を見つめた。
なぜあんな弱そうな女を仲間にしている?
他の騎士がエルフを引き取ろうと近づいたが、エルフたちは女にしがみついて離れようとしない。
エルフなど、とんだ足手まといだ。
ここはすでにパンタール領、パンタールの領主に引き渡さねばならない。
団長は、ヨミに声をかけた。
「パンタールまで、その二人の世話を頼めるか?報酬は払う」
冒険者は相棒の女とうなずき合って、答える。
「お受けしましょう」
これでもう、その件は片付いた、と、団長は馬車の方へ戻った。
車輪の外れた馬車は応急修理が済み、なんとか動かせるようだ。
「ヨハン、あの二人、何か変った所はなかったか?」
「いえ。
男の方は良い腕ですが、ペアでヒトツメの森に挑むのには、少々無理がある、と思っただけです。
『風魔法』を使う女の方は、『瘴気酔い』で苦労していました」
ふん、『瘴気』への耐性も持たぬ女か。
『瘴気』を甘く見て魔獣狩りに挑んだ、身の程知らずの低級冒険者だな。
『神聖魔法』を使える『治療師』を同行しないと、魔獣を狩るのは困難を極める。
『瘴気』の恐ろしさも知らぬ、素人が。
これに懲りておとなしく薬草採取にでも戻るが良いわ。




