冒険者 18 魔獣 その7
18
「仲間は街道の方に。我々はパンタールへ向かう途中、街道で不審な馬車を見つけまして」
子熊のヨハン君(いかんいかん名前、ぴったり過ぎ)が話し出した。
「中を検めようとしたところ、いきなり襲い掛かってきたのです。
違法な奴隷商人たちだったらしい。
こちらは六人、あちらは十人ほど。
乱戦の間に拘束されていた奴隷たちが逃げ出し、二人がこの森に向かって走ったのです。
魔獣よりも人間が怖かったのでしょう」
まだ戦闘中だったので、気付いたヨハン君だけが追いかけたのだと。
「しかし、これほど街道近くで『闇狼』に囲まれるとは思わず、苦戦してしまいました。
ご助力、感謝します」
言うとヨハン君は、背後の高い木に呼びかけた。
「魔獣共はすべてやっつけた。安心して降りて来なさい」
・・・・・・。
「人さらいもみんなやっつけた。降りてきて大丈夫だよ」
木の葉がさわさわと揺れ、小さな白い顔がのぞいた。
続いて、もう一つ。
しかしその顔は、騎士の姿を見て、怖そうにふるふると首を振る。
「さがしてるひとは、いない」
「わたしたち、しらない」
笛のように澄んだ、高い声。
「そうじゃない。ここは危ないから、安全な所につれていってやると言っているんだ」
ん?さがしてるひと?
人探し?
騎士が一歩近づくと、顔はさっと消える。
『急がんと、他の闇狼が『瘴気』を嗅ぎつけるぞ』
騎士が困り始めたので、私は近づき、顔が見えるように帽子を取って樹を見上げた。
「ねえ、大丈夫?けがはしてない?」
また二つの顔がのぞく。
「ここは、また魔物が出て来るから。
お姉ちゃんと一緒に安全な所に行こう」
「「・・・おねえちゃん?」」
「そう、おねえちゃん!」
断じておばちゃんじゃありません!
帽子がささやく。
『主、『聖樹様に誓って、嘘は言わん』と言ってやれ』
『せ、聖樹様』?
『聖女様』じゃないのね、ややっこしい。
「おねえちゃんと一緒に、安全な所に行って、おいしいご飯を食べよう。
『聖樹様』に誓って、嘘じゃないよ。大丈夫だよ」
こそこそこそ、と相談する気配。
そして、子供が二人、するすると身軽に降りてきた。
わ・・・。
繊細な顔をした、よく似た二人。
私のウェストくらいまでしかない、細く優しい体つき。
頭の形に添うくらい短い、純白の髪。
そして、ちょっと先のとがった・・・耳!
耳!
☆☆☆!
ちょっと、これ・・・。
もう、定番の・・・。
つ・・・ついに・・・。
「・・・ねえマント。たしかに【未成年】ではあるけど・・・」
これ、この子たち、人間じゃないよね・・・。
【誤認しました】
ま、『気配探知』もレベル1じゃしょうがないのか・・・。
「エルフの幼体だな」
ヨミが言った。
や、やっぱりーっ!




