冒険者 17 魔獣 その6
17
あきらめ顔で微笑む騎士。
まずいなー。
いつも見比べられて、気にしてるんだろうなー。
だけどこれほどの相似形なのに・・・丸まっちい・・・かわいい・・・。
ぶふっ・・・いかんいかん。
と、思わず横を向いてしまった私は、しっかり『瘴気』を放つ溜まりと向き合ってしまい・・・。
「ううーーーー・・・」
やってしまった。
もう、みっともねぇったら。
「ああ。『瘴気酔い』をしておられますね。これを」
騎士がガントレットを取って、腰の物入れに手をやる。
ヨミがさっと間に入った。
「あ、害意はありません。『酔い止め』をさしあげようと」
と、小袋を探り、掌に載せて差し出したのは・・・。
「飴?」
オブラートそっくりの物に包まれた、蜂蜜色した飴玉だ。
受け取ったヨミが、渡してくれる。
『鑑定』
【主成分蜂蜜に数種の薬草を練り込んだ飴玉。リミの薄皮に包んである。『瘴気』の悪影響を緩和する神聖魔法の加護つき。カラハン神殿謹製】
「神聖魔法の加護!」
「ああ。『鑑定』を持っておられますか。
我が国の『光』の神殿が作っている『酔い止め』です。
国は『瘴気』の害がひどいので、魔獣を討伐する騎士団は必ず携帯しています。
新米のころはよくお世話になりましたよ」
「ありがとう。いただきます」
口に入れると、薄荷のような香りがふわっと鼻に抜けた。
うわーーーー。
おいしい。
こんな純粋な甘みを感じたのは久しぶりだ。
加護のせいか、薬草のせいか、すーっと胸苦しさが消えていった。
凄い効き目。
私の顔色が戻って来たので、警戒を解いたヨミに向かって、騎士は優雅に頭を下げた。
「ありがとうございました。さすがに魔獣の数が多かった。
私はカラハンの銀鷹騎士団のヨハン・マルドゥーク・バリアンスタール。
どうか、ヨハンとお呼びください」
「冒険者の、ヨミとハルだ」
ヨミはぶっきらぼうに答えた。
「異国の騎士が、なぜ一人でこんなところへ?」
あ、そうだ、感知した二人の未成年は?




