冒険者 16 魔獣 その5
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駆けつけたのはヒトツメの森のはずれ、あと少しで森はきれ、街道に出られると言うあたり。
一本の大木の下で九頭の闇狼に囲まれていたのは、鎖帷子にプレートメイルの騎士。
鎧の上に着るサーコートはちぎれてずたずた。
回りでは三頭の死体が瘴気の溜まりに還ろうとしていた。
「助太刀いたすっ!」
と思わず叫びたくなりそうな凄絶な姿。
「頑張ってっ!」
帽子が『風の刃』を放ち、ヨミが音もなく魔獣に襲い掛かる。
数分後には、すべて片が付いていた。
「有難い、助かった」
と、荒い息をついてこちらを向いたのは、見事な赤毛の頭。
ぽかん、と見た私は、つい、口を滑らせた。
「あ、子熊」
とと・・・。
ヨミより頭一つ低い騎士は、中肉中背、鎧の上からでもわかる、がっしりした体つき。
それだけなら普通、いや、凄く強そうな人と言っていいんだけど。
・・・そっくりだっだ。
あの、カラハン国の赤毛の巨漢と。
そっくりそのまま、縮めて丸っこくしたような。
丸っこい鼻、大きな丸い目。雰囲気全体が。
あの熊さんに、そっくりなのに・・・丸まっちい。
私の声を聴いて、騎士はあきらめたように、笑う。
「兄をご存知ですね」
「あ、は。はい、お姿だけは存じ上げておりますデス」




