冒険者 13 魔獣 その2
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「生き物が『瘴気』に侵されると、こうなるのだ」
ヨミが静かに言う。
「『瘴気』に侵され、魔獣化した肉体は、倒されると同時に劣化が始まる。
侵されていた時間が短いものは肉体を残しているが、長く魔獣化していたものの肉体は砂と『瘴気』の溜まりと化してしまう」
初めの「闇狼」たちは、まだ魔獣化してから時間がたってなかったのか。
一番スプラッタっぽいやつらに出会っちゃったわけだ。
最後の一匹が残した、黒いタールのような『瘴気』の溜まりはまだブツブツと泡立ち、周囲の草が茶色く枯れていく。数日たてばタールは消えるが、病んだ大地が回復するには数年がかかると。
ヨミは剣先で黒いどろどろをつつき、小さな黒いビー玉のようなものを弾きだす。
「砂と化した奴らが残す、これが『魔石』だ」
立ち昇る禍々しい瘴気に涙目になりながら、私はうなずいた。
動力や発火装置にも使われる、魔力の塊。
魔獣狩りの『ハンター』たちが狙う獲物だ。
『Eランクの「闇狼」だとこんなサイズじゃな』
Fランクの『角兎』や『凶栗鼠』の魔石は爪の先くらいの小ささだという。
これが、Eクラス。
下から二番目の強さ。
こんなものを通常に狩って生計を立てている、魔獣狩り専門の『ハンター』たちって凄い。
そして、この禍々しい、イガイガする、息が詰まる、『瘴気』。
こんなもん、私にどう『浄化』しろと?




