冒険者 11 冒険者(初心者)
11
『ギルドには寄らん。ギルドランクが上がれば面倒が増えるだけじゃ』
昇格試験だの、討伐以来だの、人とのしがらみが出来て来る。
Fランクのままなら、数多い駆け出し冒険者の中に紛れ込んでいられるのだ。
『このまま旅を続け、ヒトツメの森でレベルアップを図っていこう』
久しぶりのちゃんとしたベッドから出た私たちは、装備をしっかり整え、市場でたっぷり食料を(目立たぬように)買い込んでマントの収納に入れ、ポントスの街を後にして、ヒトツメの森に向かった。
魔獣の闊歩する、広大な森。
森に分け入って、すぐわかったのは、今まで旅をした、街道沿いの森林とは違うということ。
比べてみると今までの森は、危ないとは言え、人間と共存し、利益が得られるように、ある程度の管理がされていたのだ。
人の手が入らないヒトツメの森は、古びた樹々が陽を遮り、低く垂れさがった枝と茂った藪に塞がれて、道らしい道もなく、積もりに積もった腐葉土の下には何が潜んでいるかわからない。
しっかりパーティーを組んだ魔獣ハンターたち以外は近づかない、危険に満ちた場所だった。
虎のシェイプシフターであるヨミは、街よりもそんな森の中の方が性に合うらしく、迷いないしっかりとした足取りで進んでいく。
マントの『気配感知』が遠い生き物の存在を教えてくれるが、まだ近くには現れない。
普通の小鳥や栗鼠の姿はあるし、『採取』のために入る駆け出し冒険者も少ないため、薬用植物の類が結構豊富で、私は『鑑定』をかけながら、植物の知識をどんどん増やしていった。
森の中を進んで、半日。
初めて出会った魔獣は『闇狼』
『五頭、いや、六頭じゃ』
帽子が言うけど、私に見えるのは、藪から出てきた三頭だけ。
グレートデーンより一回りも大きな、毛むくじゃらたちが。
ポントスで買い整えた長剣と小盾を構えたヨミが前衛、私の頭の上に浮かんだ帽子が魔法攻撃の後衛。
私は一応杖を構えて、帽子の下で、『邪魔にならない事』に専念。
私たちの初めての「戦闘」はそうして始まったのだった。




