冒険者 9 冒険者(初心者)
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久しぶりの大きな街、久しぶりのお風呂。
ふう、生き返るーっ!。
魔法を使うなって言われたから、旅の間『洗浄』が出来なくて、苦労していたのよ。
街の雑貨屋さんで、元の世界のオリーブオイル石鹸とローズマリーリンスによく似たものを手に入れた私は、久しぶりのお風呂をゆっくり楽しんだ。
なんと上下水道が通っているので、部屋に備え付けの浴槽に水をため、火の魔石でお湯にする、というやり方だった。街の背後に見える雪を頂いた山から、水を引いてくるんだそうだ。
そういえば、古代ローマでも似たような方法で大衆浴場作ってたよね、と漫画の受け売り。
ポントスの街は王都とパンタールの街を結ぶ中間にある、この地方の中心。
税金が高めだけれど、こういう公共施設が整っているので住むには人気らしい。
冒険者ギルドも大きかったし、商業ギルドの建物もあった。
明日は市場でおいしいものをたくさん買い込んでいこう。
さっぱりして戻ると、帽子とヨミがこの先のルートを検討している。
街道はここからヒトツメの森と言う森林地帯を大きく迂回して、パンタールへ向かう。
ずいぶん遠回りになるが、旅行者は森を避ける。
なぜなら。
『魔獣が出るからの』
瘴気の影響の少ないドア・ナンドールの国で、一二を争う、不吉な場所。
なんでも森の奥に朽ち果てた神殿の跡があり、そこから湧き出す瘴気が周囲を汚染しているのだそうだ。
瘴気に汚染され、魔獣化した動物は食用にならない。
けれど倒せば魔石が取れるので、冒険者の中でも魔獣専門のハンターと呼ばれる人たちは、ポントスを根城にして魔獣狩りをするのだ。
『EからCランクの連中の狩場だの』
「だがここを通れば、だいぶ行程を短縮できる」
まだFランクの私たちだけど、ヨミの腕と帽子の魔力があれば、十分いけるはずだって。




