冒険者 8 カラハンの騎士たち
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「進展はない」
カラハンの鷹の紋章を付けた騎士が言った。
酒場の奥の、貸し切りの一室。
集まっているのは、十三人のカラハンの騎士。
そして、薄汚れたなりをした、小男が一人。
『『聖女召喚』は成された。
だが、聖女の姿を確認した者はおらず、直後、王の賓客としてもてなされたのは、使い魔の白い虎を連れた魔女だった』
ここまでは、確認したのだ。
「その魔女は翌日、目撃されている。だが、現在王宮にその姿はなく、召喚した聖女を讃える聖騎士のパレードも行われていない」
「聖女を迎えようと、各国の使節団が、続々到着している。
そろそろ何らかの声明がされる必要があるだろう」
「ナンドールの欲深王め。
何を画策している事やら」
「聖女が監禁されている様子はない。
そして、我らが王都から出立する時の、あの厳しすぎるほどの詮議と捜索」
騎士の中から怒りのうなり声が上がる。
あの時刃傷沙汰にならなかったのは、一刻も早い聖女の浄化を求めて、皆必死で耐えていたからだ。
ナンドールに逆らえば、聖女の浄化の旅が行われなくなる。
業腹な王に阿り、莫大な貢物をしてでも、待ち望まれている、瘴気の浄化。
「聖女は、何者かに拉致され、連れ去られた。それしかあるまい」
「いや、そもそも、召喚されたのは、聖女だったのか。魔女だったのか」
赤毛の騎士団長は、小男に向かう。
「引き続き、情報を探ってくれ」
もし、聖女が何者かに拉致されたのなら。
それを我らが阻止し、聖女を手に入れることが出来たら。
『聖女』がナンドールのものでなければ、こんな腐った国などひねりつぶしてしまえるのだ。
「聖騎士団長のガダン、そして、宮廷騎士アンジェロ。
この二人が北へ向かったのは、確かなのだな」
「そうだ。途中の街や村落を一つずつ確認しながら、こちらへ向かっている」
「聖女か、魔女か。どちらを捜索しているのやら。
こちらからも、眼を離すな。頼んだぞ」
小男はうなずき、人目につかぬよう、そっと部屋を出ていく。




