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聖女召喚されたけどハロウィンの仮装をしてたので魔女と間違えられました  作者: 葉月秋子


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冒険者 5 冒険者(なりたて)



 日本にも、昔はあった木賃宿。


 旅籠とは違って、寝る場所と、竈と、水だけ用意してくれる安宿だ。

 客は薪代だけ払って水をもらって自炊し、板の間の大部屋で雑魚寝。

 一人一泊で小銀貨一枚なのはありがたい。

 日本ならワンコインで泊まれるって感覚かな。

 その代わり、かっぱらいや喧嘩があっても、宿側は知らん顔だと。こわー。


 私たちの自炊は豪華だった。


 昨夜、虎になったヨミが、大きな猪を仕留めたの。

 その場で解体し、枝肉を無限収納で簡単に低温エイジングしておいた。

『採取』の練習で集めたアビの根っことタナベの若い葉と一緒に、シシ鍋。

 腿肉一本と交換に、宿代がタダになったのもうれしい。


 旅の親子連れと相宿になったので、多めに串焼きも作って、おすそ分け。

 小さな女の子が、にこにこしてほおばってくれた。


「粗末なものですけれど」

 と、お返しに差し出されたのは、固い茶色っぽい平たいもの。

 ん、この穀物の粒粒かげんは・・・。

「お米?」

「はい。一度蒸したものを天日に干して、乾燥させたものです」


 そうか!昔の日本の携帯食!(ほしいい)だ!


「えーっ、お米があるんですねーっ!」


 どこで手に入るの?とかいろいろ話をしながら、鍋の〆はみんなで雑炊をおいしく食べたのよ。



 板の間に毛布を敷いて、マントをかけてごろ寝。

 でも、石ころだらけの荒野で寝るよりずっと楽だ。

 人がいると、ヨミが虎になってくれないから、モフモフできなくて寂しいけれど。



 次の朝は『洗浄(クリーン)』ではなく、井戸水で顔を洗い、仲良くなった女の子ルミちゃんと遊んだ。

 幼稚園生の姪っ子と同じくらいで、ちょっと胸が痛む。


 縄跳びの縄を作ってあげて、「けんけんぱ」みたいな遊びを教えてもらって。

「あやとり」をしたら、向こうも知ってて、「川」や「はしご」が同じ名なので、驚いた。


「ルミ!」

 二人で縄跳びの二重飛びに挑戦してたら、昨日お米の話で盛り上がったお母さんがちょっとあわてて駆けてきた。

「ルミ、あんた昨日は熱っぽかったのに・・・あら、平気なの?」

 額や頬に手を当てて、確かめる。


「すみません、この子は体が弱くて・・・。

 夕べも熱があったので、風邪をひかせたかと心配していたんですよ」

「ああ、風邪のひき始めなら、あったかいものを食べて、良く寝るのが一番ですね。

 シシ鍋はあったまりますからねぇ」


「ええ、ありがとうございます。

 あんなにおいしいお雑炊を食べたのは初めて。

 食べた後まで身体がぽかぽかとして、とても温かくなって。

 主人も腰痛が楽になったって喜んでいました。

 私も、今朝は肩が軽いんです」


 ・・・えーと・・・。


 昨日の鍋、私売り物にならないって言われたササメ草も放り込んじゃったんだ・・・。

 薬草は苦みが出るからだめじゃって、帽子に言われてあわてて拾い出したんだけど、ちょっとほろ苦風味だったね・・・。

「おいしいよー、あったまるよー」って、ルミちゃんたちにも勧めちゃったけど。

 薬草をしゃぶしゃぶしちゃった鍋。なーんちゃって・・・。



 ルミちゃんがぽすっと飛びついて来た。


「ありがとー、おばちゃーん」


 んー?


 そこは「おねえちゃん」でしょーがーっ!ねえっ!

 

 


        ---------------------



    雑炊にしっかり保温効果がついたのは薬草ではなく遥の『言霊』のせいなんですが・・・。  

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