聖女 50 冒険者 その2
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結局。
街道沿いの荒野や森じゃ、ろくな獲物はないし、薬草も捕りつくされちゃって見つからない。
もっと深くまで森に入っていけば違うんだろうけれど、さすがにこの格好じゃ無理だし。
というわけで。一日目はヨミが作ってくれた焚き火で、ヨミがナイフを投げて捕り、解体して、串にさしてくれたウサギを焼いて、買って来た軽食と一緒に食べたの。
私?『料理』のギフトで、塩を振ってあげたわよ。
だって、鍋もお皿もやかんもないし、串焼きしかできないのよね。
『だから、先に装備がいると言うたんじゃ』
だから、お金がないんだってば。
ふう、『冒険者』になるのも、まずは形からよね。
焚き火のそばで膝を抱えていたヨミがくっくっと面白そうに笑う。
王都の人ごみの中で、すごく緊張していたヨミは、自然の中でとてもリラックスしていた。
「『シェイプシフター』って、ころころ姿を変えるわけじゃないのね」
つい、私は聞いてしまった。
毎回服を脱ぎ捨てるんじゃ、大変だなと思ったの。
「俺たちは元々山奥や砂漠の、人間の少ない処で生きてきた種族だからな」
ヨミは静かに言う。
「獣の姿で狩りをし、人型になって村で憩う。
昔からずっと、そんな素朴な暮らしをしてきた。
人間が増え、俺たちを狩り始めるまでは」
ふっ、とため息をつく。
「こういうことは、知識として、頭に入っている。
だが、俺自身が、どこに暮らしていた誰だったのか。
それは全くの空白だ。
どの国にも、どの土地にも、親近感を覚えない」




