聖女 49 冒険者
49
『冒険者』、遥、レベル1。うっふっふっふー。
『・・・・・・・・・』
いいじゃない、言ってみただけよ。
『まったくお前様は、危機感がないというか、なんと言うか・・・』
だって、そっち系のコスプレが多かったし、ちょっとあこがれてたんだもん!。
『ふん、お尋ね者では、どうせギルド登録は出来んさ』
しかしヨミが答える。
「小さな町のギルドには、ステータス鑑定の大きな水晶などはない。
真偽判定が出来る略式のものだけだ。
表示されるのは、申告する名とギルドランクだけ」
嘘発見器みたいなものか。
私の名はちゃんと発音されてなかったし、ヨミの過去はない事になったし。
うーん。それで押し通せるかな。怪しいけど。
農村のはずれまで乗せてもらった馬車に別れを告げ、私たちはしばらく道を歩いた。
人影がなくなった所で、荒野に踏み込む予定。
『しかし、二人とも『冒険者』には見えんなぁ』
ヨミは古着のチュニックとズボン。私は変化自在マントの下は、黒のカシミヤのセーターとロングスカート。
ウェストポーチにスニーカー。子守りだったので動きやすくしてたんだ。
市場で買ったバスケットに軽食と果物剥きくらいのナイフを買うと、王子のお小遣いもさすがに尽きてしまったし。
『本格的に荒野に入る前に、どこか店があるところで装備を整えなければいかんぞ』
でも、その前に、それを買うお金をつくらないとね。
『まったく、計画性のない主じゃ』
しかたないじゃない、四人組につかまっちゃったんだもの。
「俺が獲物を狩ってきてもいいが」
『じゃが、武器もないじゃろ。
爪と牙で倒した獲物をどう言い訳する?』
するとヨミは、チュニックを肘までまくり上げて、前腕に沿わせてつけた長いナイフを、ズボンのすそを折り返して足首につけた短めのナイフを、次々に出してきた。
二本、三本、四本?
さすが元『暗殺者』というか・・・。でも、いったいどこから?
「虎の姿は目立つ。変身は最後の手段だ」
私も、足元の雑草を注目してみる。
【ドクミダ草】匂いがきついのであまり使われない薬草。生の葉をもんで傷薬に、干して薬草茶にする。
私も、『鑑定』があるから、『薬草採取』くらいは出来そうだし。
あはは、何とかやっていけそうじゃない。
「じゃ、試してみましょうよ。あっちの森で」
頭の上で、呆れてため息をつく帽子を無視して、私はヨミと腕を組んで道から外れて歩いて行った。




