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聖女召喚されたけどハロウィンの仮装をしてたので魔女と間違えられました  作者: 葉月秋子


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聖女 47 脱出 その6

47



 ほんの数時間うとうとしただけで、夜が白んできた。


 夜明けと同時に王都の門が開き、生鮮食品を市場に持ち込む荷馬車がどっと入ってくる。


 メッシュの入った髪さえ隠せば、ちょっと背が高いけれど、古着を着たヨミは街の人たちと見分けがつかない。

 私も古着屋で買った生成りの大きなエプロンをつけ、マントには茶色に短くなってもらい、帽子は古い日よけ帽に見せて、こざっぱりして市場に出てきた、農家のおかみさん風。

 昨日王子からもらったお小遣いがたっぷり残っていたので、市場の混雑に紛れて、具だくさんのスープと揚げた小魚とパンで朝食を取り、中古のバスケットにこの先いりそうな雑貨とか保存食とか買い込んで、のんびりした風を装って、門の方へ歩いて行く。


 大きな正門には関所があって、身分のある者や、ギルドの加盟者、街で店を出す者なんかは、そこで登録する仕組み。


 だけど、周りの農村から野菜を運び込む農夫や、海から魚の籠を担いでくる漁師なんかは、横の門からほとんど出入り自由。衛兵もだらしなく槍に寄りかかって、若い女の子に声をかけたり、野菜を抜きとってかじったりしている。


「なんでもない顔をして、周りに溶け込め」


 ヨミに教えられ、私は農場へ戻る空の馬車の荷台に乗せてもらい、林檎に似た果物を食べながら、正門の方を眺めた。



 大きな隊商が、いくつも王都から出ていくところだ。

 遠目にはラクダに見える動物とか、大きな牛のような動物とかが、荷物満載で引かれていく。

 連なった幌馬車。馬に乗った一団。


「あ、熊だ」

 熊のように大きな赤毛の男が、大きな軍馬に乗り、何かわめいている。

 何台か連なる、豪華な馬車の指導者らしい。

 

『ほう。面白い話をしとる』


 帽子には彼らの話が聞こえる。

『遠耳』のギフトなら、私も欲しかったのに。ぐすん。


『ありゃ、中央のカラハン国の一行じゃな。

 瘴気の被害が深刻で、聖女の来訪を願って山のような支度金と貢物を差し出したのに、確約を取れずに追い出されたと、えらく怒っておるわ』


 どきり。


 私の、せい?


 いや、それより、山のような支度金と貢物?


『ナンドールの聖女と聖騎士団を呼ぶには、大金がかかるそうじゃよ』


 この国って、聖女を使って金儲けしてるの?



 と、ムカついていたら、王宮の方から、凄い勢いで出てきた一団がいる。

 見る間に通りを走り抜け、正門に近づき、大声を上げた。

 兵士たちが騒ぎ、いまにも門を出ようとした熊男の一行を引き止め、門を閉じようとする。


 熊男が、凄い声で怒鳴って、大騒ぎになってる。


「ほう、何かあったんかいの」


 私の乗ってた馬車ががっこん、と横門を越え、老いぼれ馬を操る農夫がのんびりと言った。


「こっちに来るよー。この門も閉じるのかなあ」


 回りにいた人々が騒ぎ出す。


「とんでもねえ。入れなくなったら生きの良い魚が腐っちまう!」

「子供たちを置いてきたんだ。出られなくなったら大変だよ」


 人々が門に殺到し、騒ぐのをしり目に、馬車はごとごとと郊外へ出ていく。


 いつの間にか、ヨミが馬車の横をゆっくり歩いている。


「早起きしてよかったねー」


 王都、脱出ーっ。


 


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