聖女 37 目標
37
聖堂前で待たせていた馬車の所に戻ってみると、御者は御者台に座ったまま居眠りをしていた。
人間の姿のヨミを見られちゃまずい。
と、思っていたら、帽子がささやいた。
『どれ、手本を見せるか。『眠れ』』
御者の首ががっくん、と下がり、眠りが深くなった。
『ほほう、レベルは1でもうまくいくのう。ではもう一つ。
『鏡反射』』
ヨミの姿がちらちらして見分けにくくなる。
急いで馬車に乗り込み、ヨミが虎に姿を変える。
アンドレアが御者に合図を送った。
「ぐずぐずするな!城に戻るぞ!」
ガタン、と馬車が動き出す。
見上げる空は、もう夕焼け。
ここにきてまだ二日目。なんだか長い一日だった。
くたびれた私は、床に窮屈そうに座っているヨミの身体を撫でた。
なでたりなくなって、つい首を抱いてしまった。
向かいに座ったアンドレアが目のやり場がない顔。
だって緊張し続けだったんだよ。
もふもふで癒させてよ!
空には白く半月が浮かんでいる。
ああ、日本と同じようだ。
と、思ってたら、少し上にもう一つあった。
『月は三つあるぞ』帽子がささやく。
もう、ムードぶち壊し。
王宮の門をくぐり、アンドレアのエスコートで階段を上がっていくと、美形四人のその一、金髪王子が出迎えてくれた。
「我らの都はいかがでした?アルカ様」
にこやかに、私の手を取る。
・・・チクッ。




