聖女 20 王都 ナンドール その2
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サテンのマントはつやを消して毛織物っぽく見せ、帽子はちょっと地味目なターバン風にまとめ。
裕福な商人か普通の貴族の女性が、下町の賑わいを覗きに来た、くらいに見てもらえれば、いいかなって。
子爵も正装じゃない普段の軍服だし、王子に言ってお小遣いもしっかりもらって来た。
たぶん護衛の者たちが目立たないようにどこかに尾いてるだろうけど、そんなものは無視。
初めての異世界の見物をしよう!
貴族街の商店は、きちんとアーケードの中に入っていたけれど、こっちは噴水のある大きな広場の周りを二重に取り囲むように並んでいる露店だ。
お客はその二重の真ん中を歩いて、両側の店を眺めるようになってる。
午前中は近隣の生鮮食品、午後は雑貨や衣類、屋台の店と、売るものが違ってくるのだそうだ。
「特選品は出入りの商人が直接王宮や貴族の館に納め、上質な衣類や宝飾品、魔道具などは、上街に店を持つ商人が扱っています。
このような所にアルカ様のお目に留まるようなものが並んでいるかどうか」
「いいの、いいの。雰囲気を楽しみたいだけだから」
瘴気と魔物の発生に苦しんでいるっていうけれど、人たちの様子はにぎやかで、明るい。
わー、薬屋だ。
生の葉や干した葉や、木の皮。乾燥した蜥蜴だの、得体のしれないもの。液体に漬かった蛇や・・・あわわ、見ない、見ない・・・。
薬師のギフトのせいか、葉っぱなんかに手を触れてしっかり集中すると、その名前と効能が頭に浮かぶ。
熱さましにきくヒカゲ草とか、疲労回復に良いレンの種とか。お茶にするとおいしい槿葵の花。
十種類以上も見ていると、頭の奥で何かピコン、と音がして。
『植物鑑定スキルを入手しました』
はい?
ギフトでなく、スキル?




