恋
【浜塚める】
宿泊研修は、あっけなく終わってしまった。新しい友達もできず。
そして今日、恐れていた委員会が始める。一応あの怖い人は学校にきてるけど、ちゃんと委員会出てくれるかな。いや。絶対出ないよ。逆に出たら奇跡じゃない!?“人は見た目で判断するもんじゃない”て言うけど、さすがにあれは…。
私は思い切って声を掛けることにした。よく思い切ったと自分でも思う。
「あのっ、今日委員会だからね?」
「あ?」
彼はすごく機嫌が悪く、人を殺せそうなほどの目つきで私を睨みつけてきた。
「だから…、その、委員会…。くじで決めたから嫌なのもわかるけど、楽しそうじゃん、一緒に頑張ろうよ、?」
(小学生かよっ)
私は心の中で自分に突っ込み下を向いたまま、顔をあげられずにいた。
「別にサボるなんて言ってねーし」
「え?」
確かにそうだ。この人サボるなんて一言も言ってない。私が勝手に決めつけたんだ。やっぱり人は見た目じゃない。この人中身はいい人なのかも。ちゃんと仲良くならなきゃ。
「じゃあ、これからよろしくね!」
私は彼に握手を求めた。
「あんたどこまでウザイの。今時よろしくとか、握手とか…、きもっ」
え…。
きもい、?
彼は固まっている私にお構いなく教室を出て行ってしまった。
【粒羅瞳】
放課後になり、私は委員会のおこなわれる教室に向かっていた。
可愛い女の子がいるといいなぁ。早く友達作らなきゃ。
「うわっ」
ドスン//
前をちゃんと見ていなかった私は誰かにぶつかってしまった。慌てて顔をあげるとそこにいたのは心配そうな顔をしたチャラ男だった。この人…?
「あ、同じ委員会のチャラい人!」
思わず声をあげてしまった。
「え、まあ、チャラいけど、そんな大声で言うなよー。あ、あのそれより、大丈夫か?」
転んだ姿のままの私に彼は手を出してきた。まさかこの手を握れと?生まれて一度も男の子と手をつないだことがない私。ここで手を握れば、初繋ぎ?的なものになる。どうする、私。
「あ、ごめん。手出すとかきもいよな。そんぐらい自分で起きれるよな」
そういうと彼は手を引っ込めた。
彼の頬はほんとりと赤く染まっていて、照れているのがわかる。かわいい。チャラ男のくせにこんなギャップがあるだなんて。
「一緒に教室まで行こうっ」
私は立ち上がり彼に笑顔で言った。
「おぅ」
教室に着くともうほとんどの人が集まっていて、クラスごとに座るようになっていた。
「はい、じゃあ委員会始めるぞー」
先生の声で教室が静かになる。
「今日は委員会の委員長と副委員長と書記を決める。イベント委員会では学年ごとにそれぞれ決めてもらう。じゃあ学年ごとに聞いていくから話し合え」
一年生は全部で5クラスだから、ここには今10人いる。その中から委員長1人、副委員長1人、書記2人の計4人を決めないといけない。
「ねえ、どれかやる?」
私は隣のチャラ男くん=平優太くんに声をかけた。
「めんどいから俺はいいかな〜」
予想どうりの返事だった。
「一年生はどうだ?始めての委員会がだけど、ちゃんと話し合ってるか?」
さっきから全然話せていない私たちの元へ先生が来た。
すると、
「先生!私委員長やりますっ」
そう言いまっすぐ手をあげたのは3組の浜塚めるちゃんだった。可愛いのにしっかりしててすごい子だなぁ。負けてらんない。
「じゃあ私副委員長やりますっ」
負け時と私もまっすぐ手をあげた。
「おぉ、女子は積極的だなぁー、男子はどうしたんだー?」
先生は男子たちを見回した。
「じゃ、じゃあ俺書記」
静かに手をあげたのは私の隣にいる優太くん。
「私も」「俺も」
同時に声をあげたのは1組の2人だった。
「おぉ、いいなあ1年生。じゃあお前ら5人が代表でやれ、居残り多いからなっ」
そう言うと先生は早速私たち5人だけを残し計画表を書かせた。
「浜塚めるですっよろしくね?」
委員長になっためるちゃんはわざわざ私の元へ来て自己紹介してくれた。
「私粒羅瞳っ、よろしくっ」
「おっけい、瞳ね‼私の事めるでいいから」
いきなり呼び捨て。すごく話しやすいし、このことは仲良く慣れそうな気がした。
「あ、あの!私は伊藤悠李ですっ」
私たちの元へ新たな女の子。すごく可愛らしく、見るからに人見知りですごく緊張していた。
「よろしくー、じゃあぱっぱと書いちゃおう」
男子たちはほっといて私たちは3人で計画表を書いた。
悠李とは途中まで帰る方向が同じだとわかり私たちは一緒に帰ることにした。
「優太くんっ、またね」
下駄箱で優太くんに手を降ると、
「電車でしょ?どこで降りるの?」
優太くんの頬はまた少し赤く染まっていて、なんだか私も照れてしまった。
「南町で降りるよ?」
「俺のその次の駅だから、一緒に、帰ろ」
「あ、悠李もいるけど、うんっ、3人で帰ろう!」
私たちは3人で門を出ると、めると涼介くんがカップルのように前を歩いているのが見えた。
「あの2人ってやっぱり付き合ってるのかなぁ。」
悠李がぽつりとつぶやいた。
「クラスの人たちもみんな噂してた。美男美女カップルって」
続けて悠李はつぶやく。
「あ、そっか悠李、涼介くんと同じクラスだもんね?…、もしかして、さ。好きなの?」
ぽかんと2人を眺める悠李に私は訪ねて見た。
「え、あ。いや、そんな、なわけ?まだ席が隣ってだけだし。ちょっとしか話せてないし。かっこいいとは思うけど、だって、ねぇ、めるちゃんみたいな幼馴染がいて、さぁ。私なんて…、はぁ」
かわいい。恋する乙女ってまさにこんな子の事を言うんだよね。
「まだ付き合ってるかわかんないじゃんっ」
その後も恋バナで盛り上がり、電車の中でも悠李の昔の恋の話や、好きなタイプについて語った。結果“涼介くんともっと話してみる”と言い、悠李は私たちよりも先に、電車を降りた。
「ごめんね?2人で盛り上がっちゃったー」
「うん、俺も青春してーなー」
優太くんは遠くを見つめつぶやいた。
男の子と2人の帰り道なんて私は初めてで、すごく緊張していた。電車は満員で、優太くんはさりげなく、私を守ってくれていて、距離が近くて、ついつい腕の筋肉とか見ちゃうし。あたしの恋も始まろうとしてるのかな。