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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

FIRE STORM

作者: 井村六郎

前にアンケートを取った要素で、短編を作ってみました。

西暦2050年。地球は未曾有の危機にさらされた。突如として宇宙の果てから飛来したギリアス星人と名乗る異星人達が、地球を征服しようと侵略戦争を仕掛けてきたのだ。地球の二百年は先を行くと言われる、ギリアス星人の圧倒的な科学技術の前に、人類は滅亡を覚悟した。



だが、ギリアス星人との戦争に突入してから一年後、地球側の情勢に変化が起きる。凄まじい力を持った超能力者が、次々と現れたのだ。まるで地球が侵略者への、抵抗を行うかのように。超能力者達の戦線の参加によって、ギリアス星人はこの星から撤退していった。



その後も超能力者の数はどんどん増加を続け、西暦2100年、世界人口の約四割が、超能力を持つに至った。政府はこれを、再びギリアス星人が侵略戦争を仕掛けてくる兆候であると判断し、超能力者を新たな戦力とするため、超能力者育成機関、アースガーディアンズ学園を設立した。



これはその学園で日夜超能力を磨き続ける、ある学生達の物語である。






◇◇◇






雛罌粟ひなげし里奈りなは、アースガーディアンズ学園に通う、高等部一年の女子である。


「りーな!おはよー!きゃはっ☆」


そんな彼女に、短い金髪で胸の大きい美少女が、背中から抱きついた。里奈は鬱陶しそうに、少女を睨む。


「いちいち抱きつくな。鬱陶しい」


「も~そんなこと言って、本当は嬉しいくせに♪」


里奈の頬っぺたを右手の人差し指でツンツンつつく少女。彼女の名前は、ティエル・フィーリクト。里奈の友達で、よくスキンシップを図ってくる活発な少女だ。


「離れろ。」


「里奈は女の子なんだから、もっと女の子っぽい話し方しなきゃダメだよ?」


「いいから離れろ。」


「やだ。離して欲しかったら力ずくで引き離してみたら?」


ティエルの能力は、身体能力操作。自身の身体能力を、何倍にも高めることができる能力だ。腕力を少し強めれば、成人男性であっても彼女の抱擁から逃げられない。里奈もこの学園でかなり訓練を受けてきた身ではあるが、やはり直接的な力ではティエルに敵わない。そう、直接的な力では。


「お前もいい加減学習したらどうだ?」


次の瞬間、ライターぐらいの大きさの火が出現し、じゅっ、と嫌な音を立ててティエルの鼻の頭を焼いた。


「うあちゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


火はすぐに消えたが、火に鼻を焼かれた痛みは消えず、ティエルは両手で鼻を押さえて床を転げ回る。これが里奈の能力、炎熱操作だ。炎や熱を自在に操り、何もない場所に炎を出すこともできる。里奈はティエルを引き離す時、よくこの能力で身体の一部を軽く焼くのだ。


「大騒ぎするな。お前の能力なら、その程度の火傷なんて火傷のうちにも入らないだろう。」


「うう、ひどい。まぁそうだけど……」


里奈に焼かれたはずの鼻の火傷は、もう綺麗に消えていた。身体能力操作を応用し、自然治癒力を高めて治したのだ。これぐらいの火傷はすぐ治せるが、痛いものは痛い。


「そろそろホームルームが始まるぞ。席に着け」


「は~い……」


涙目のティエルを無視して時間を告げる里奈。ティエルはとぼとぼと自分の席、里奈の右隣の席に座った。




この学園は普通の授業も行うが、超能力者を育てるための機関なので、能力開発授業というものが存在する。今日は一時間目から、いきなり能力開発授業だ。入学者はまず、特殊なナノマシンを体内に注射される。超能力は使えば使うほど鍛えられ強力になっていくが、このナノマシンには超能力の成長を促進させる効果があるのだ。いつギリアス星人が再び攻めてくるかわからないし、それとはまた別の理由でも、早急に戦力が必要になるためである。ちなみに超能力がどの程度のレベルまで育っているかわかりやすくするため、世界ではランクが決められている。最大で7まで設定されており、里奈とティエルはランク4で、この学園の高等部ならそれなりに優秀と言える。7は今のところ、学園にはいない。どころか、世界中を探してもほとんどいない。なぜならランク7といえば、ギリアス星人と戦って撤退させた、世界最強クラスの超能力者になるからだ。


「でも、いつかそこまで強くなりたいなぁ……」


「……ああ。」


里奈とティエルは、二人でそう言い合った。今二人は体操着を着てブルマを穿き、校庭にいる。と、里奈は不意に思った。


「……強くなって、何がしたいんだ?」


「えっ?」


「お前は何をするために、ここに来たんだ?」


アースガーディアンズ学園は、小等部から大学部まである学園で、二人とも中等部から入った。それからずっと気になっていたことだが、里奈はティエルがこの学園に入学した理由を知らない。何度か訊いたが、いつもはぐらかされてしまうのだ。


「……何をするためとか、そういうのは特にないよ。無理矢理入れさせられたから」


だが、今回はちゃんと話してくれた。


「無理矢理?」


「うん。実はね、あたし自分の両親を殺してるんだ。」


「!?」


「きゃはっ☆驚いた?嘘だと思ったでしょ?でも本当だよ。」


どおりで話さなかったはずだという過去を、ティエルはしっかり、話してくれた。



ティエルの両親はストレスを溜めやすい体質で、ティエルは幼少期からストレス発散のための虐待を受けていた。髪を掴まれたり腹に膝蹴りを入れられるのは日常茶飯事で、痛がって泣けば泣くほどどんどんひどくなっていったという。


「パパもママもそういう体質だって知ってたから、我慢しようと思ってたんだけどね。我慢できなくなっちゃった」


ひどい時には暗い地下室に一晩中閉じ込められたこともあった。何回そんな虐待を受けたか本人にもわからなくなった頃、とうとうティエルはキレてしまい、その最悪とも言えるタイミングで能力が目覚めたのだ。


「命乞いされた気もしたけど、完全に無視してたな~。気付いたら二人とも、潰れたトマトみたいにぐっちゃぐちゃの真っ赤な肉の塊になってたよ。」


身体能力操作で豪腕を得たティエルは、両親を滅茶苦茶に殴り付け、原型を留めていない死体に変えた。その後、騒ぎを聞き付けた近所の住人に通報され、即逮捕。だが状況が状況だったことと超能力者だということで、アースガーディアンズ学園に入学するという処分を受けてお咎めなしになったのだ。これなら確かに、ここに来た目的はない。


「でもいいんだ別に。将来の夢なんかなくても、今が一番楽しいから。毎日あの地下室に入るよりずっといいよ」


楽しそうに、それでいてどこか影があるように言うティエル。地獄から抜け出して、今ようやく光の中で人生を謳歌することができている彼女にとっては、まだ早いことなのかもしれない。


「里奈は?里奈には将来の夢とかあるの?」


「……俺は……」


夢は、ある。それを言おうとした時、


「次!ティエル・フィーリクト!」


ティエルが教師に呼ばれた。


「はーい!ごめんまた後でね。」


走っていくティエル。教師が待っている所にたどり着いたティエルは、クラウチングの体勢を取った後、合図を受けて走り出す。刹那、ティエルの姿が消えた。次に現れたのは、スタート地点から百メートル離れたゴール地点。身体能力操作を使ってスピードを強化し、どれくらいの速度で走れるかの測定だ。身体能力操作が使えない超能力者は、普通に走る。身体能力に直接影響を及ぼさない能力でも、身体を鍛えれば伸びるからだ。ゴール地点に用意してあった電光版が、ティエルのスピードを叩き出す。数値は、約マッハ十五。凄まじい速度だが、上級生にはマッハ百という恐ろしい速度を叩き出せる者もいるので、それなりといったところだ。


「自己ベスト更新!いい感じいい感じ♪」


しかし納得できる結果が出たようで、ティエルは上機嫌で戻ってきた。


「次!雛罌粟里奈!」


「はい!」


今度は里奈が呼ばれた。






◇◇◇






午前の授業を終えた後、里奈とティエルは昼食を摂るため、食堂に向かっていた。その途中の渡り廊下。


「ちょっと君。雛罌粟里奈君、だね?」


突然呼び止められて、二人は振り返った。そこには、赤い髪の少年がいる。二人とも彼の名は知っていた。加島祐介。彼も里奈と同じ、炎熱操作の超能力者だが、彼の祖父はギリアス星人との戦争に参加し、人類を勝利に導いた十二人の超能力者の一人なのである。ゆえに、その子孫である彼の名を知らない者は、この学園にはいない。


「……そうですが?」


里奈は少し嫌そうな顔をした。厄介な相手に話し掛けられたと思ったからだ。超能力は遺伝する。祐介は英雄の家系の息子ということもあってか、受け継いだ炎熱操作能力も非常に強力なものだ。ランクも当然5である。それだけなら、別に問題はない。問題は、彼がそれを利用して、自分のグループをこの学園に作ろうとしていることだ。祐介は自分が英雄の家系であること、強力な炎熱操作が使えることをふれ回り、他の炎熱操作能力者を仲間として引き入れているのである。きっと今回も、里奈をグループに引き入れに来たのだろう。ティエルだけならまだしも、里奈は誰かとつるむのが嫌いだった。だから、自分にそんな話が来たと思うと、嫌な気分になったのだ。


「そう嫌そうな顔をしないでくれ。今日は君に、一つ提案があって来たんだ。」


「提案とは?」


「知っているとは思うが、僕は炎熱操作能力者だけでグループを作っている。聞くところによると、君もかなり強力な炎熱操作が使えるらしいからね。誘いに来たのさ」


ほら来た。里奈の予想通り、祐介は勧誘しに来たのだ。


「お断りします。大人数とつるむのは苦手なので」


「まぁそう即答せずに、もっとよく考えてくれ。君の力を高く買ってるのは本当だよ?だって君、小さい頃に百体近い宇宙獣と戦って全滅させたんだろう?」


祐介の言葉を聞いて、里奈は顔をしかめた。宇宙獣。それこそ、超能力者の早期育成が必要になる、別の理由だ。



宇宙獣とは、ギリアス星人が生み出した生物兵器である。ギリアス星人の命令のみに従う異形の戦闘生物で、ギリアス星人に敵対する惑星の住人を徹底的に攻撃し、滅ぼし尽くす。その上単体でも子を成せる凄まじい繁殖力を持っており、一体を一ヶ月放置すれば百体は増える。しかもその一体でさえ、駆除するのに強力な重火器が必要になるのだ。この学園でも、ランクが3以上にならないと戦うことを許されない。五十年前の戦いでギリアス星人が残していった、まさしく最悪の置き土産。里奈は元々小さな町に住んでいたが、そこを百体近い宇宙獣が襲撃し、その時に超能力が覚醒。宇宙獣を全滅させ、町を救った。


「……どこで聞いたのか知りませんが、あまりその話をしないで下さい。」


里奈は祐介を睨み付けながら言った。ティエルは幼少の頃から、むき出しの殺意に長く接してきたため気付く。里奈は怒っていた。なぜなら、あの時の戦いは里奈にとって、忌むべき苦痛の記憶だからだ。超能力が、何が引き金となって目覚めるのかは、未だに原因が不明である。しかし、里奈の能力が目覚めたきっかけは、怒りだと断定できた。里奈には里恵という妹がおり、あの時宇宙獣に食い殺されたのだ。その時の激しい怒りで、超能力が目覚めた。両親は守れたが、力が目覚めるのが遅かったせいで、大切な妹を失ってしまった。だから里奈にとって、あまりいい思い出ではないのだ。


「なぜ嫌がる?君は力を持つ選ばれた存在だ。それが証明された輝かしい記憶じゃないか」


祐介は里奈の怒りに気付いていないのか、構わずに近付きながら話を続ける。これ以上怒らせてはまずいと思ったティエルは、二人の間に割って入った。


「ちょっと無神経すぎるんじゃないですか?その話はしないでって言ってるでしょ!?」


「君には関係ない。僕と同じ炎熱操作能力を持つ、雛罌粟里奈と話をしているんだ。」


だがティエルの存在は眼中にないようで、止めようとしても取り合ってもらえない。


「君の力は僕のそばで活かされるべきだ。そうすれば、君も自分が選ばれた者だと実感でき」


「そのうるさい口を閉じろ!!!」


とうとう里奈がキレた。全身から炎を燃え上がらせ、近付く者を遠ざける。


「わっ!!」


「っ……」


ティエルは慌てて里奈から離れ、祐介も数歩下がる。が、炎熱操作が使える祐介は炎に耐性があるため、あまり威嚇になってはいない。それでも、里奈の怒りは治まらなかった。


「俺の力の使い道は俺自身で決める。お前が決めることじゃない」


炎がさらに燃え上がり続け、一歩ずつ祐介を自分から遠ざけていく。


(すごい火力……)


ティエルは心も身体も汗をかいていた。里奈の炎熱操作は、操れる炎の規模も熱量も、ランク4の中ではトップクラスだ。相手がランク5のエリートであろうと、火力だけなら負けはしない。そう、火力だけならランク5に届くのだが、それで次のランクに上がれるほど、単調な世界ではない。炎の大きさや温度を状況に合わせて変化させる緻密な制御や、それらをどれだけ早く行えるかなど、ランク5に届いていない部分がたくさんあるため、ランク4にいるのだ。


「それとも二度と近付けないよう少しは痛い目を見た方がいいか?」


里奈の闘争本能にまで、完全に火が点いてしまっている。一触即発状態だ。



その時、



「二人とも、そこまでですわ。」



声が聞こえて、里奈は炎を消した。見ると、青い扇子を持った女子生徒が、こちらにやってきている。彼女の名は、九条初音。水流操作の超能力を持つ、この学園最強のエリートだ。ランクは祐介と同じ5だが、同じランクでもピンからキリまであり、力量的にも相性的にも、彼女の方が上である。


「こんな所で戦ったりしたら、周りに迷惑がかかりますわ。ですから、時と場所を考えて下さいませ。」


「君には関係ない話なんだが。」


「やめるよう言っているのがわかりませんか?」


祐介は初音を無視しようとするが、初音はそうさせない。


「関係ないって言ってるだろ!!」


やがて鬱陶しく思った祐介が、千度という高温の火球を生み出して、初音に向けて飛ばした。対する初音は、動かない。全く動かず、分厚い水の壁を生成し、火球による攻撃を防いでしまった。熱すらも通さない完璧な防御を、一瞬で作り出す。これが、アースガーディアンズ学園最強の実力。もちろん、防御だけではない。初音はまた一瞬で防御壁を、巨大な水の球に作り替え、祐介に向けて撃ち出した。


「うわっ!!」


変化と射出の速さに対応しきれず、祐介は水弾を喰らって倒れた。


「あらあら、ずぶ濡れですわね。少しは頭が冷えまして?」


「……!!」


ずぶ濡れになった自分を見てクスクスと笑っている初音。祐介は恥辱にまみれながらも、敵わないとわかって逃げ出した。


「それにしても、自分より格上の相手に啖呵を切るとは、素晴らしい勇気の持ち主ですわね。」


今度は初音が里奈を称賛する。だが、すぐ里奈に耳打ちした。


「でもわたくしに啖呵を切ることは許しませんわ。炎熱操作能力者など、わたくしにとって虫のように簡単に捻ることができる相手だということを、お忘れなく。」


初音は自分の実力と才能に、絶対の自信を持っている。彼女の祖母もまた、十二人の英雄の一人であり、その血と力を受け継いだことを誇りに思っているのだ。その高すぎるプライドが、自分に逆らう者が現れることを許さない。だから、格上に逆らった里奈を目障りに思い、自分に逆らわないよう言ったのだ。


「ごきげんよう。」


それだけ伝えた初音は、いずこかへと姿を消した。


(……英雄を家系に持つ者は、どいつも変人らしいな)


「里奈~~!!」


(もう一人変人がいた)


ティエルは里奈に抱きつき、里奈は鬱陶しそうな顔をしながらも、ティエルに抱き締められる。


「も~心配したんだよ!?九条さんに何言われたの!?もしかして告白とかされた!?」


「落ち着けティエル。何で今の流れでそうなるんだ」


繰り返し言っておくが、里奈は女だ。初音も女だ。里奈にそっちの趣味はなく、初音にも……たぶんない。


「や~だ~!!里奈はあたしのお婿さんなんだから、いくら英雄の孫でも絶対渡さない!!里奈と結婚するのはあたし」


「落ち着けと言っているだろうこの馬鹿。」


「うあちゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


勝手に自分を婿にしようとしたため、里奈はティエルの鼻の頭を軽く焼いた。ティエルは里奈から離れ、地面を転げ回る。


「ひ、ひどいよ里奈……あたし達友達じゃないの……?」


「俺に同性相手に結婚願望を抱くような友達はいない。」


「あっ、待ってよ里奈~!」


ティエルを放置して食堂に行く里奈。ティエルは慌てて里奈を追いかけた。






◇◇◇






現在は午後の授業の真っ最中。


(……あと五分か……)


授業終了まであと少し。これが終われば、放課後はフリーだ。里奈は特に部活などもやっていないし、あとはもっと能力を強化するための自主練習。超能力は使えば使うほど強力になる上、里奈の炎熱操作は日常生活でも応用できる。練習方法に困るということはないのだ。



時計の針が、授業の終了時間を差そうとした時、異変は起きた。



突然校庭が騒がしくなったのだ。怒号が飛び交い、銃声のような音も聞こえる。里奈は偶然窓際の席だったため、外で何が起きているか知ることができた。


「あれは!?」


銃やヘルメット、防弾チョッキで武装した多数の兵士達が雪崩れ込み、生徒達を襲っているのだ。里奈のクラスメイト達も、校庭で起きている出来事に気付き始める。やがて兵士達は何人かの生徒を人質に取り、兵士達のリーダーと思える男が出てきて、拡声器でこう言ってきた。


「私は、ギリアス星人のバリン・ギュルメイ。本日はこの学園の超能力者達を、我が母星の戦力として頂くため、参上した。」


「ギリアス星人だと!?」


里奈は驚いた。




直接見たことがあるわけではないが、ギリアス星人と地球人の外見上の違いは、全くない。身体能力も地球人とほぼ同じで、超能力なども身に付けていない。とにかく、本人から話を聞く以外の方法で、地球人とギリアス星人を区別する方法がないのだ。


「超能力者は今から全員ここに集合しろ!ただし、妙な考えはするなよ?私以外の兵士は、全員地球人なのだ。この車の中にある思考コントロール装置で、洗脳しているのだよ。もし要求に従わずにおかしな真似をしようとすれば、お前達を攻撃させて強引にでも連れていく!同士討ちなんてしたくないだろう?」


しかし、ギリアス星人は凄まじい科学技術を保有しており、これによってのみ地球人を圧倒した。遮蔽物の外から中にいる人間だけを消滅させる物質透過兵器や、様々な攻撃を防ぐバリアなど、地球からすれば完全に未来の技術である。人間を洗脳する装置があったとしても、不思議ではない。それを使って超能力者を洗脳すればいいと思ったが、しないということは超能力者に洗脳装置が効かないということなのだろう。超能力者はギリアス星人達にとって、未知の存在である。超能力者が現れることを予想してなかったから、ギリアス星人は撤退したのだ。


「さぁ早くしろ!こちらもあまり気が長い方ではないのでな!」


「どうしよう里奈!?あんなこと言ってるよ!?」


ティエルは里奈に訊いた。里奈はこれからどうするべきかを考える。超能力者の存在がギリアス星人側に渡ることは絶対に避けるべき事態だが、人質がいる以上うかつな行動はできない。


(慎重に動く必要があるな)


とりあえず、あのバリンとかいうギリアス星人に従うふりをして、こっそり思考コントロール装置を破壊する。兵士達を解放しさえすれば、相手は一人。いかに超科学の持ち主といえど、恐るるに足らない。



そう思っていた時、突然車の後部に無数の穴が空いた。それと同時に、兵士達の動きが変化する。なぜ自分達がここにいるのか、自分達が何をしているのかわからないといった感じの、かなりの取り乱しようだ。



「洗脳に人質とは、授業で習った通りの残虐な性格の持ち主ですのね。ギリアス星人って」



現れたのは初音。彼女は思考コントロール装置のある場所を見抜き、水弾の嵐を叩き込んで破壊したのである。中に他の人間がいないかどうかも、ちゃんと確認した。確認の方法は、大気中の水分に干渉し、他の水分を感知するというものだ。人間は体の大部分が水分なので、多量の水分を感知すれば、それは人間がいるという証拠なのである。


「皆さん!!その男はギリアス星人ですわ!!お逃げなさい!!」


初音が逃げるよう言うと、人質達は蜘蛛の子を散らすように逃げていく。


「……あーあ、まさかこんな大胆な生徒がいたとはなぁ。」


計画が台無しになったと見るや、バリンの口調が砕けたものになった。恐らく、こちらが彼の本性なのだろう。間違いなく怒っているが、初音は怯まない。


「あなた、この学園が創立された理由をご存知?ギリアス星人を滅ぼすためでしてよ?逃げ惑うためではありませんわ。」


先ほど逃げるようには言ったが、本当に逃げるとは思っていなかったので、初音は内心失望している。だが同時に、こうも思っていた。まさか本物のギリアス星人に会えるとは思っていなかった。ここでこのギリアス星人を倒せば、自分の名と力は学園中により広く知れ渡る。そう考えれば、一対一で戦えるこの状況は逆に好都合だと。


「あなたなど、わたくし一人で十分ですわ!」


扇子をバリンに向け、初音は挑発した。


「……九条さんって思ってたより大胆な人だったんだね。でもおかげで人質はなくなったし、相手も一人だから余裕だよ!」


ティエルはこの状況、初音一人で攻略できると考えていた。事実、誰が見てもそう思うだろう。


「あの馬鹿……相手の実力もわからないのに……!!」


だが、里奈はそうではなかった。


「で、でも、九条さんは学園最強の超エリートだよ?能力だって強力だし、五十年前も超能力者が勝ったし!」


「不意討ちで勝てたような戦いだぞ!?五十年も経ったんだから対策されてるに決まってる!!」


そう。あの戦いから、すでに五十年が経過している。それだけ長い時間が経てば、ギリアス星人側が超能力者への策を立てるには十分だろう。


「お前、自分が超能力者だから勝てるって思ってるだろ?おあいにく様だ!こっちはとっくに、対超能力者戦の手を打ってるんだよ!!」


バリンがそう言った瞬間、彼の左右両側に、小型の竜巻が出現した。初音はこの学園にいたおかげで、竜巻が何かに気付いた。


「これは、風力操作能力!?」


「超能力者には超能力者で立ち向かう。俺は五十年前の戦いのデータを研究して生み出された、人造超能力者だよ!!」


人造超能力者。地球でも未だに超能力者を自在に生み出す方法が確立されておらず、自然に生まれるのを待つのみだというのに、ギリアス星はそれをやり遂げた。超能力者はギリアス星人に対して絶対的な戦力にはならないということが、証明された瞬間だった。


「……だから何だというのですの?」


しかし、初音は冷静だった。相手も超能力を得たとして、それでどうだというのだ?それならギリアス星の超能力者を倒して、地球の超能力者の方が優秀だということを、証明すればいいだけの話ではないか。そしてそれを、自分がやってみせる。そうすれば初音どころか、九条家の名が世界中に轟く。


「わたくしがあなたの相手になるということは変わりません。」


初音は興奮を抑えながら、あくまでも冷静を装って言った。それを見たバリンは、つまらなそうに鼻を鳴らす。自分の力を見せて素性を明かせば、絶望して戦意を喪失すると思っていたのに、拍子抜けだ。


「じゃあ他の生徒の相手は、こいつらに頼むか。」


バリンは右手を高く上げ、指を鳴らした。その瞬間、学園の外から何かが飛び込んできた。一体だけではない。人間の身体に犬の頭を付けたような怪物、蜘蛛とカマキリが融合したような怪物、頭が二つあるトカゲのような怪物。その他にも様々な異形の怪物が学園を包囲しており、バリンの合図で一斉に侵入してきたのだ。ギリアス星人の合図で動く怪物となれば、宇宙獣以外に考えられない。人質を奪われた時の保険として、大量の宇宙獣を待機させていたのだ。


「生きたまま連れて行けないのは残念だが、死体に変えてでも母星に持ち帰る。俺を恨むなよ?お前が抵抗したのが悪いんだ。」


「……外道め!!」


瞬時に水弾を生成して飛ばす初音だったが、バリンは右の竜巻を自分の前に移動させてそれを防いだ。


「宇宙獣があんなにたくさん……!!」


「落ち着けティエル。俺達はこういう状況のために、今までこの学園で訓練してきたはずだ。」


慌てるティエルを、里奈が落ち着かせる。自分達が戦う相手は、ギリアス星人を初めとする侵略者達だ。その侵略者と戦う機会が、ようやく巡ってきたのだと。


「……そうだね。あたしどうかしてた!」


「訓練通りにやれば大丈夫だ。迎撃に出るぞ!」


「うん!!」


里奈とティエルは学園を、学園の生徒達を守るため、行動を開始した。






◇◇◇






アースガーディアンズ学園は侵入してきた宇宙獣達のせいで、どこもかしこも阿鼻叫喚の地獄絵図だ。生徒達も反撃してはいるが、宇宙獣との実戦経験の少ない者もいるせいで統率が取れておらず、敵の数も多く、幸い死人は出ていないが非常に劣勢だ。ティエルは校庭の一角で、宇宙獣の群れに包囲されていた。周囲に他の超能力者はおらず、孤立している。



が、これでいい。



「周りに誰かいたら、邪魔だもん。」


そう言ってティエルが腰から外したのは、金属の塊だ。心なしかこの塊、刀身のない剣の柄に見える。ティエルはこれに、いつも自分を強化する感じで、これを強化しようと意識を向けた。すると、柄は二メートルを超える長さに巨大化し、鍔からその倍以上の長さの刀身が出現した。



ティエルのような身体能力操作の超能力者は、当たり前だが徒手空拳以外に攻撃方法がない。しかし宇宙獣の中には、全身を猛毒で覆っているなど、素手で直接触るのが危険なタイプもいる。そういった宇宙獣に対抗するため、この学園では身体能力操作能力者専用の武器が支給されるのだ。このメタモルソードも、その一つだ。超能力者だけが持つ特殊脳波パルスに反応するイリーガルアイアンという金属でできており、能力者のレベルに応じて自在に形状や高度、切れ味や重量を操ることができるのだ。ただティエルはメタモルソードという名前をあまり気に入っておらず、巨大な剣に変えて使用するのが好きだから、こう名前を付けている。


「斬城剣。」


城すら一太刀で破壊する。そういう意味を込めて付けた名前だ。今はまだそこまでの威力はないが、いつか必ずその領域に到達すると決めている。


「チェストォォォォォォォォォォォォ!!!!」


ティエルは斬城剣を肩に担いで突撃し、目の前の巨大な宇宙獣を一刀両断。


「ハァァァァァァァァァァァ!!!!」


後ろから飛び掛かってきた宇宙獣三匹を、気合いの咆哮とともに横薙ぎ一閃、斬り捨てる。大人数人がかりでも持ち上げられない大きさの斬城剣を、身体能力を三十倍以上にも強化してぶんぶん振り回す。こんな戦い方、ティエル一人でいる時にしかできない。他に誰かいれば、確実に巻き込んで斬ってしまっている。宇宙獣は次々襲ってくるが、ティエルに恐れはない。


「よしこぉぉぉい!!!」


斬城剣を振りかぶり、まとめて斬り捨てた。




ティエルが一人斬城剣無双をしている間、里奈もまた襲ってくる宇宙獣と戦っていた。


「はっ!!」


宇宙獣の二匹を、片手から放つ火炎放射で灰に変える。火力だけならランク5に匹敵するので、これくらいは容易い。それに、宇宙獣なら殺し慣れている。問題は、超能力が使えるギリアス星人の存在。バリンと初音の戦いを見守るため、里奈は常に二人から目を離さないようにして戦っている。見たところ、バリンの能力は風。水の超能力者である初音にとっては、あまり相性がいいと言える相手ではないが、初音はエリートである。バリンの超能力はあまり出力が高くなさそうなので、問題なく押し切れるだろう。


(このまま行けばな。だが、うまく行くか?)


いくら思考コントロール装置や宇宙獣の大群があったとはいえ、敵陣に一人で飛び込むだろうか?何かあるのではないかと、気掛かりで仕方なかったのだ。


(とにかく今は様子を見よう。危なくなったら助けに入ればいいだけの話だ)


そう思いながら、里奈は宇宙獣の一匹を燃える右手で掴み、一瞬で炭にした。




初音は水弾を大量に撃つが、バリンは竜巻を盾にしてそれを防ぎ、竜巻の後ろから真空の刃を多数飛ばしてくる。一発でも当たれば切断されてしまうため、初音は素早くかわして再び水弾を撃つが、その頃にはまた竜巻が生成されているため、膠着状態を打破できない。大気中の水分から相手の体内の水分に干渉して倒す、という手もあるが、これはある程度大気中の水分がないと使えない技だ。思えば最初から、バリンの周囲には不自然に水分のない空間があったが、あれは風で周囲の水分を吹き飛ばしていたからなのだと、初音は気付いた。


(ならば!!)


あの竜巻ごと大きな攻撃で、バリンを圧殺する。


「はぁぁっ!!」


そう決めた初音は扇子を振り上げ、その一拍で竜巻より大きな水弾を作り、また一拍でそれをバリン目掛けて飛ばした。


「小賢しい……!!」


飛んでくる水弾を、バリンは全身からよりたくさんの刃を放つことによって防ぐ。水弾は全て細かく刻まれ、もう竜巻を突き破るほどの威力をなくした。だが、


「甘いですわ!!」


初音は切り刻まれた水弾を素早く集合させ、数本の槍を作る。


「なっ!?」


バリンはそれを切ろうとするが、槍は切れない。水をさっきより強く、極限まで圧縮して作った槍であるため、真空の刃でも切れないのだ。これなら、竜巻も貫くことができる。


「わたくしの、勝ちですわ!!」


水の槍を、バリンに向けて全力で飛ばす。だが、


「なっ!?」



初音の槍は、止められてしまった。それも、普通の止め方ではない。誰の目から見ても、異常と言える止め方だ。



水の槍が、『凍りついて』空中で静止していた。この場において本来ならあり得ないことが、現実に起きていたのだ。



「まさか、冷気操作まで使うことになるとはな。」


そして、それはバリンの一言によって確定した。初音は震えながら呟く。


「二重……能力者……!!」


超能力者の能力は、基本的に一つしかない。だがごくまれに、能力を二つ覚醒させる超能力者がいるのだ。二つ超能力を覚醒させた者は二重能力者と呼ばれており、地球にもわずかしかいない。だが、バリンはその少ないはずの二重能力者だった。これはギリアス星人が超能力のメカニズムを完全に理解し、自在に生み出せるようになったということの証明に他ならない。もはやギリアス星人は、超能力においても完全に地球より優位に立ったのだ。


(まぁギリアス星人でも二重能力者は少ししかいないんだが、そこまで教えてやる義理はないしな)


もっと強力な超能力を一人の超能力者に多数使えるようにする。その研究のために、地球人の超能力者のサンプルが必要なのだ。だから、この学園に二重能力者であるバリンが襲撃を掛けた。そして彼の勝利は、揺るぎないものとなったのだ。


「……どうして、冷気操作能力をもっと早く使わなかったんですの……?」


冷気操作能力は、水流操作能力者にとって相性最悪と言える能力である。ただ冷やして凍らせるのみならず、凍らせたものを操ることもできるのだ。いくら水を操っても凍らされてしまい、武器を与えてしまう。弱い冷気操作能力なら、初音は強引に突破することもできる。だが、バリンの冷気操作は初音の全力も止められるほど、かなり出力があった。初めからこの能力を使っていれば、とっくに勝負は着いていたはずである。


「お前さぁ、自分が真面目に相手してもらってるって思ってた?そんなワケねぇだろ!二重能力者である俺が、ゴミ相手に最初から本気なんて出すかよ!遊びだ遊び!」


バリンはここぞとばかりに初音の自尊心を傷付ける。学園最強のエリートではあるが、初音には一つだけコンプレックスがあった。それは、二重能力者ではないということだ。二重能力には、本当にあらゆる意味で恵まれた者しかなれないという。自分は才能にも、力にも恵まれていたはず。それなのにどうして……そう思っていたが、途中から自分の持つ一つだけの能力を極めようと思い直した。だが、こうして実際に二重能力者を前にすると、劣等感を実感させられる。


「何が二重能力者!!ならばわたくしが二重能力者を倒して、実力を証明するだけですわ!!」


初音はそれを認めたくなくて、水の弾や水の刃、水の槍を滅茶苦茶に飛ばす。しかしバリンはそれら全てを凍らせ、風の刃と一緒に返してくる。超能力が二つというのは、聞くだけなら単純だが、実際の意味は非常に大きい。手数も戦略の幅も、一気に広がるのだ。初音は攻撃を必死にかわすが、あまりの手数の多さに水の壁を作ってしまう。それは冷気操作能力者との戦いにおいて、絶対にやってはいけないことなのに。


「きゃあっ!!」


水の壁が凍りついて、初音に向かって破裂したのだ。倒れる初音。氷の破片は無数に集まって、生き物のように初音の両手両足を拘束し、地面に縫い付ける。


「だがお前は俺に本気を出させた。それだけは、褒めてやるよ!!」


腕を振って風の刃を飛ばすバリン。動けない。逃げられない。ああ駄目だ、死んだ。絶望が初音を包み、その目を見開かせる。



だが、



「あんたがもう少し謙虚だったら、使わずに済んだんだがな。」



横から飛んできたもう一本の風の刃が、バリンの攻撃を相殺した。


「!?」


「誰だ!?」


二人は風の刃が飛んできた方向を見る。そこにいたのは、里奈だった。


「何だぁ?お前も風使いか?いいぜ。まとめて相手してやるよ!二重能力者の俺の敵じゃねぇ!」


バリンが挑発すると、里奈はゆっくりと歩き出し、二人の間に割り込んだ。しかし、バリンは里奈の能力を知らないため、今起きたことの異常性に気付けない。初音だけが、気付くことができた。


「どういうことですの!?あなたの能力は炎だったはずですわ!!」


「何!?ということは……」


「そうだ。俺も二重能力者だよ」


里奈がそう言うと、右側に火柱が、左側に竜巻が出現する。そこにちょうどティエルがやってきて、この現象を目撃する。


「炎と風……里奈って二重能力者だったの!?」


それに答えるように、里奈は語り出す。


「子供の頃宇宙獣に襲われた時、炎熱操作と風力操作が同時に覚醒した。炎を風で強化して使ってたから、何も知らないやつが見たらわからなかったろうな。」


「そうか!それで里奈の炎って、火力だけがものすごく強いんだ!」


里奈はいつも能力を使う際、炎と風を同時に使っていた。炎と風は相性が良く、風は炎の勢いを強める。火力だけがランク5に匹敵するほど高かったのは、そういう理由があったからなのだ。


「……へへへ、こいつは面白い。まさかこんな所に、天然モノの二重能力者がいたとはな。ギリアス星の二重能力者とどっちが強いか、お手合わせ願おうじゃねぇか!!」


自分と同格の存在がいて嬉しいのか、バリンは空気を冷やして雪を作り、それを竜巻で巻き上げて里奈に飛ばした。猛吹雪ブリザード。二重能力者の手にかかれば、自然現象すら自由自在である。


「わからないやつだな。」


対する里奈は火柱と竜巻を融合させて、それを吹雪にぶつけた。


「ぎゃあああああ!!!」


勝ったのは里奈だった。炎が吹雪を打ち破り、バリンの全身を焼いたのだ。


「炎と冷気。どっちが強いかは比べるまでもないだろう」


風と冷気なら、風はただ冷気を撒き散らすのみ。しかし風と炎なら、風は炎の勢いと熱を増大させ、冷気を打ち破る。


「貴様ァァ~!!」


ボロボロになったバリンは、それでもどうにか立ち上がる。里奈はそんなバリンに、


「俺は、お前達ギリアス星人を滅ぼす!!」


さっきよりもずっと大きな炎と竜巻を融合させて、バリンにぶつけた。燃え盛る炎と、荒れ狂う大風。それはまさしく、炎のファイヤーストームと形容するに相応しいものだった。バリンは炎の嵐に飲まれて、灰も残さず焼滅した。


(誓うよ、里恵。俺は、お前を死なせたギリアス星人を、滅ぼしてみせる)


子供の頃から燃えている、復讐の業火。妹が死ぬ遠因となったギリアス星人を、決して許しはしない。卑劣な侵略者達を、一人残らず自分の炎で焼いてやる。そう誓った。それが、里奈が力を求める理由だ。


「……大丈夫か?」


「……えっ?」


里奈は炎の嵐を目の当たりにして呆けている初音に、手を差しのべた。


「あっ、は、はい……」


初音は里奈の手を掴み、立ち上がる。


「さて、宇宙獣はまだ残っているんだ。さっさと全滅させるぞ!」


「うん!」


「は、はい!」


三人は散開し、残りの宇宙獣を掃討しに掛かった。






◇◇◇






アースガーディアンズ学園の生徒達は苦戦を強いられながらも、襲撃を仕掛けてきたギリアス星人と宇宙獣を全滅させた。そして、翌日。


「り~なちゃぁ~ん!」


ティエルが座っている里奈にこっそり近付いて、後ろから抱き締めた。


「も~、どうして二重能力者だってこと教えてくれなかったの?ティエルちゃん寂しいよ~?きゃはっ☆」


「……恐らくもう少ししたら奴が来るから、来たら話す。」


「奴?」


里奈はベタベタと抱き着いてくるティエルを鬱陶しいと思いながらも、ある人物の到着を待った。そして間もなく、予想通り、初音がやってきた。


「わたくしがわざわざ隣のクラスから来た理由はわかっていますわね?」


「ああ。」


「どうしてあなた、自分が二重能力者だということを黙っていたんですの?」


二重能力者はこの学園にも、里奈以外にいない。世界でも希少な存在であるため、学園に申告すれば破格の待遇を受けられたはずだ。まぁ申告するまでもなく、昨日の戦いで全校生徒に知られてしまったが。


「……お前みたいややつがいるからだよ。」


「はぁ?」


「お前、昨日のギリアス星人が二重能力者だってわかった時、何をした?」


「何って……あっ……」


里奈に言われて、初音は気付く。昨日初音は、バリンが二重能力者だとわかった時、強引にでも倒そうと動いていた。自分が二重能力者ではないということにコンプレックスを抱いており、相手が自分より恵まれているということを認めたくなかったから。もし里奈が最初から二重能力者だと明かしていたら、初音はバリンの時と同じように、彼女を超えようと毎日でも突っ掛かっていただろう。里奈は初音のようなタイプの人間から目を付けられたくなかったから、自分の能力の秘密を誰にも明かしていなかったのである。


「ティエルの相手だけでも面倒なのに、これ以上面倒を増やしたくない。」


「ひっど~い!あたし面倒なんかじゃないもん!」


「面倒だろうが毎日毎日!いい加減抱き着くのをやめろ!」


「やだ!だって里奈を誰かに取られたくないんだもん!」


「……!!」


「うあぢゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


遂に怒った里奈は、右手の温度を上げてティエルの顔面を触り、ティエルは里奈から離れて床を転げ回った。


「……あなたの言い分はわかりましたわ。」


里奈とティエルのやり取りをスルーしつつ、初音は次の質問に移る。


「あなたから見て、わたくしはどうでしたの?やっぱり、能力が一つしかない、口だけとか、思ってらしたりします?」


どうやら、昨日バリンからゴミ呼ばわりされたことを、相当気にしているようだ。


「俺はそんなことを思ったことは一度もない。お前を敵に回したくないのは事実だしな」


なので、里奈は正直な気持ちを言った。バリンとの戦いでは相性の問題から完封されてしまったが、それを抜きにしてもやっぱり初音は強い。


「俺とお前が戦えば、お前が勝つだろう。」


「それは自分が勝てると思っている方の台詞ですわ!わたくしを認めてなんていないじゃありませんの!」


「いや、俺は本当に」


「ですから、わたくし今日からこのクラスに入りますわ。」


「……は?」


初音は突然わけのわからないことを言い出した。詳細を説明する。


「既に手続きは済ませてありますの。あなたのそばで、あなたに認めてもらえるよう努力します。いつか必ず、わたくしはあなたを超えますわ!」


「……」


完全に目をつけられてしまった。初音は里奈の存在を、今後の目標にすると言い出したのだ。


「それって里奈を寝取るってこと!?そんなことさせない!!里奈はあたしのなんだから!!」


復帰したティエルが、再び里奈に抱き着く。


「違いますわ!!雛罌粟さんはわたくしの目標ですの!!あなた一人の所有物ではなくてよ!!」


初音も抱き着く。二人はギャーギャーと口論を始め、


「お前らいい加減にしろぉぉぉぉぉ!!!!」


里奈の怒りは頂点に達した。




対異星人用超能力者育成機関アースガーディアンズ学園。そこには、三人の超能力者が通っている。



大剣を振るう身体能力操作能力者、ティエル・フィーリクト。



水を操る学園の超優等生、九条初音。



そして、炎と風の二重能力者、雛罌粟里奈。



いずれ来るギリアス星人との最終決戦においてこの三人が突破口となることを、世界はまだ知らない。




雛罌粟里奈


炎と風を操る、世界でも希少な二重能力者。妹を宇宙獣に殺され、その時の怒りで超能力を目覚めさせた。女性だが、口調はかなり男っぽい。



ティエル・フィーリクト


身体能力操作能力者。幼少期に両親から虐待を受け、突如として目覚めた能力で両親を殺している。彼女の性格が明るいのはその時の反動である。里奈を気に入っており、本人曰く一目惚れ。顔を合わせる度に抱き着いており、その度に顔を里奈に軽く焼かれるのはお約束。だが自然治癒力を操ってすぐに傷を治せるため、全く懲りない。斬城剣と名付けた巨大な剣を自在に振り回す。



九条初音


水流操作能力者で、学園最強のエリート。だが里奈の二重能力を見て以来、彼女こそが真の学園最強だと思い、追い回している。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 地の文がしつこい。地の文で説明しすぎ。もう少しキャラに説明させるか今回の短編に関係ない要素を、カットした方が良い。戦闘シーンも地の文で説明しすぎて、爽快感などが全くない。もうちょっと、…
[良い点] 敵が倒される場面に爽快感があります。 [一言] もしも、続編が在る場合、主人公が光輝みたい台詞を言うか光輝みたいな奴が出てくるかで面白さが個人的に変わりますね。 個人的に主人公の「ギリアス…
[良い点] 毎回抱き付いて焼かれているティエルのキャラが面白いと思いました。 [一言] どうも、往復ミサイルです。こちらの短編を読ませていただきました! まさか里奈が炎以外にもう1つ能力を持っている…
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