kingの存在・2話
やっと主人公、マコトの登場です。
ここから話が動いていきます。
ぜひ読んでください。
僕は一面真っ白の部屋にいた。
天井も床も壁紙も全部が真っ白だと立っているのに浮いているように感じてしまう。
そんな部屋。
「ここは…どこ?」
思ったことを言葉にしても返ってこない。
ここはどこなの?
僕しかいないの?
疑問ばかりが脳内を埋める。
僕は1人なの?
急に不安が押し寄せる。
安心して。大丈夫。ここは暗闇じゃない。
よく見れば、壁があるのはすごく向こう。
きっと真っ白すぎて距離感が掴めていないだけなんだ。
誰かいればすぐに見つかる。
なんにも問題ない。
頭で理解できても、心は落ち着かない。
…ちょっと待って。
向こうに赤が見える。
一ヶ所だけ白くないところがある。
あそこに行けば誰かいるかもしれない。
期待を胸に、ひたすら走る。
走る、走る、走る。
赤の正体はどうも人みたいだ。
赤いマントを纏った背の高い男の人。
後ろ姿を見るだけでも美男なのがよくわかる。
くしを入れる必要がなさそうなさらさらなアーモンドブラウンの髪には上品に輝く冠がのっているし、何とも言えない男らしい背中は強さを物語ってる。
こっちに顔を向けると、息ができなくなるくらいビックリした。
真珠の肌に黒水晶の瞳…それはあの歴史で習ったダビデ像よりも綺麗。
一言で表すなら『王様』がいちばん合ってると思う。
「王様…?」
なんとなく、口からこぼれた言葉。
この人はきっとこの世の全てを司る人…王様。
つまりkingなんだ。
kingは無表情で答えた。
「マコト」
マコト。
それは僕の名前、大野真実。
でも今の声は聞いたことがある気がする…
「マコト…」
「なんで僕の名前を知ってるの!?」
「マコト、マコト」
「教えてよ!」
「起きないとまずいって、マコト」
「ねぇってば!」
…あれ?
ここは真っ白の部屋じゃない。
いつも見ている普通の教室。
目の前にkingはいない。
隣にいるのは見慣れた顔。
「…ユウキ?」
僕の親友、久遠裕樹。
人見知りであんまり目立たないけど勉強もスポーツもできるすっごくいいやつだ。
でも、そのユウキがなぜここに?
「いい夢見れたか?大野。俺の授業で居眠りするなんていい度胸だな。そんな余裕あるのか?」
ユウキがマズイって顔してる。
黒板に広がるのはたくさんの文字式。
そして怒らせてはいけない数学教師の青山先生。
あぁ、やってしまった。
ここは現実だ。
「い、いえ…そんなことは…」
これはきっと(というか絶対)怒られる。
「そうだよな。この間のテスト、赤点だったよな?居眠りする余裕なんてないよな?大野」
「はい…」
「提出物は真面目に出しているから、するつもりはなかったんだけどな」
「はい…」
「今日1日授業の荷物全部運べ。あと、放課後補習な」
「そんな!」
青山先生の補習は厳しいことで学校でもとっても有名。
あぁ、本当にやってしまった…。
「わかったか?」
「はい…」
これはもう返事するしかないな。
仕方ない仕方ない。
ん?
『大丈夫。俺も手伝う』
ノートの端に書いてくれた、ユウキの文字。
有難い。
本当にいい親友だよ。ユウキは。
とりあえずお礼しないと。
『ありがとう!』
『別に、暇だから』
あぁユウキ、君が天使に見えるよ。
そんなこんなで授業に戻ったんだけど。
僕はまだあの夢が忘れられないんだ。
夢の中のkingが頭に住み着いてるみたいに。
正直男なのにカッコいいって思ってしまったのはあるけど。
それ以前になんか引っ掛かるんだ。
それは遠い憧れの存在みたいで、だけど身近に感じられる。
もう一度、kingを見てみたいな…。
また土日を使って書き進めたいと思います。
感想、御意見その他お待ちしています。