kingの存在・1話
主人公はまだ出てきていません。
まだ始まったばかりなので、暖かい目で読んでください。
次回からは話の雰囲気が一度代わります。
『トントン』
頑丈な扉を叩く音がする。
「どうかしましたか?king。こんな時間に私を呼ぶなんて珍しいですね」
ふわふわと揺れる女の髪は男を誘っているかのようだった。
形の良い唇の端が微かに上がり微笑をしているようにも思える。
普通の男ならば理性は保たれないはずだ。
「急に呼んで悪かった、リリィ。どうしてもお前にしか任せられない仕事があって」
女の名前はリリィ。本名ではないが、皆はこう呼んでいる。
日本人らしからぬダークブラウンの髪はメレンゲ菓子よりもふわふわと揺れる。一般的な瞳よりも茶色いため女を見ると吸い込まれそうになる。
形の良い眉や長い睫毛、白雪の肌など説明がしきれないほど長所がある。
そう。
一言で言えば女…リリィは美女だ。
「kingご自身からの仕事なんて…どうかしましたか?」
リリィの黒いワンピースから妖しげな香水が香った。
鼻をくすぐるような何とも言えない香りだった。
「リリィ、俺の前では香水をつけるなと言ってあるはずだよな?やけにこの部屋が女臭くなっているように感じるのは気のせいか?」
こんな美女を目の前にしても動じない男…
男の名はking。もちろん、こちらも本名ではないが。
動物界の王・ライオンにも負けない見事なアーモンドブラウンの髪に、黒い鏡のようなオニキスブラックの瞳。整った顔立ちに少し低い声が合って、一瞬で女を虜にしてしまう。
そんなkingの欠点、もとい長所はひとつ。
究極の女嫌いであり最強の男色家であること。
「…申し訳ありませんking。以後気を付けます」
「分かればいい。但し次は無いと思うんだな」
「はい。ありがとうございます、king」
女嫌いであるはずのkingがリリィを近くに置く理由は他でもない。
『狙った男を落とすため』
kingの欲しい獲物が女でないと落ちないときに任せるためだ。
今回もそのようだった。
「今回のターゲットは2年B組、阿部義輝。女好きで有名なんだ。出来るな?リリィ」
なぜわざわざ女好きを狙うのかはリリィにも謎だった。
それでもkingの頼みは絶対だ。
「もちろんです、king。私に落とせない男などいません。お任せください」
「あぁ。ターゲットはミナトの知り合いらしいから、応援を頼んである。何かあったら使え」
「そんなの必要ありません。それでは」
妖しげなリリィの香水がまだ部屋に残っていた。
やっとテストが終わり、コンクールまで時間があるので少しづつ投稿していきたいと思います。
ゆっくりのんびりではありますが、読んでもらえると嬉しいです。
感想や御意見、その他いろいろお待ちしています。