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僕は異世界で  作者: ray
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僕は屋上で同性愛者に出会う

 今回は短いです。

「ふう、お疲れ、すごい魔力親和率ね。まあ、吸収のほうだけみたい……総じて私みたいな固定砲台の補助やってたほうが優秀のような気がしないでもないけど、弓の一撃は見事だったわ。あれだけで序盤の流れはこちらに向いてたから」

 そうやってほめられるのも久しぶりだ。

「いえ、あなたが優秀なんですよ。僕は誰かにやってもらわないと魔物一体倒せないので」

 しかし、あの戦闘の後でこんなにもぴんぴんしてるのは恐らく僕たちだけだろう。まあ、僕は足に自傷の傷があるけど、これは全滅を防ぐために仕方なかったんだ。

「お互い名前を知らないのは不便ね。私は江藤葵。あなたは?」

 自然と微笑みながら、自分の名を名乗った。

「僕は葉山夏」

 そういったところで誰かがバンッと音を立てて扉を開いた。

 そのまま走ってこちらへとやってくるとそのまま江藤さんに焼かれた。

 ―――ん?

 何かがおかしい気がする。いや、おかしいとかじゃなくて大きく、気にしなければならないレベルで起きた気がする。

「―――なんで人を燃やしてるんですか?」

 ようやく気付いた理性が問いかける。

 今の今まで違和感を感じない自分も自分だが、ここまで自然に燃やす姿はそのまま流しておいてしまう。

「大丈夫、あれぐらいじゃ死なないから」

「いや、そういう問題じゃ……」

「大丈夫」

「え、だから……」

「だ、い、じょ、う、ぶ、だ、か、ら、ね?」

 最後の笑顔がけっこう本気で怖かったのは秘密だ。


「君って中学生とは思えないほど強いのね。知り合いに中学生とは思えない強さの子はいるけど、君みたいなタイプじゃないな。中学の後衛でここまで形になってるのは少ないよ」

 褒めちぎられてもはやうれしいを通り越して恥ずかしい。

「葵、葉山君困ってるから」

「真莉は黙ってて、燃やすよ?」

 燃やされていたこの真莉という人は、どうやら同性愛者のようだ。それで江藤さんに付きまとって燃やされ続けているらしい。

「それに僕はこういう方法でしか戦場で役に立たないので、迷ったりせずに一つに専念できるんですよ」

 足の傷は治癒魔法使いだったらしい真莉さんによってちゃんとした処置がされた。痛みはもう無いが、散々説教された。血を媒体に使う魔法は術者の実力以上のものを使える代わりにリミットを無視して魔力を吸い取るため、CDが無くても魔法が使える方法だが傷によって魔力は減り、さらに魔法が発動する限り魔力を持っていかれるため、危険な方法だ。

 CDは人の残魔力が8000(これを下回ると健康に支障をきたす)を下回らないようにリミットを設けている。このリミットは原則どのCDにもかかっていて、医者が患者によってはそのリミットを10000などにあげることがある。これは魔法を使うための道具であると同時に全ての人民に対する健康チェッカーでもあるのだ。


「葵さん、最後の魔法の連発は見事でした。さすがは……」

 いつの間にか座っていたところに現れた男、イメージとしてはいいところの天才。基本的に能力が高く、偉そうなやつ。

「―――さすがは魔力喰らい、消費に見合うだけの戦果は挙げたようですね。で、今回は何人食いつぶしましたか?」

 一瞬にしてこの場に殺気が満ちる。

 とてもじゃないがこんなところにいたくないほどだ。口の中が乾く。

「―――残念だったわね。今回は誰も私のせいでは倒れてないわ」

「残念ではありません。喜ばしいことでしょう。しかし、となるとどうやって魔力を? まさか最後までサボっていたわけではないでしょう」

 いちいちケンカを売るようなことを言うやつだ。お前のせいで殺気が濃く、冷たくなっていて怖いんだよ。

「この子に魔力をまわしてもらったの、サボってはいないから安心して」

「ああ、あの最初の一撃を入れた子ですか。それだからあの矢が二度目以降来なかったんですね」

「―――それは違います。あれは長い時間をかけたからできたのであって、放出力の問題で僕には戦闘中にあの威力のものを二度目撃つだけの放出力がないんです」

「ふむ……」

 男はその答えを聞いてこちらを覗き込むと数秒してもとの背筋をしっかりと伸ばした体制に戻り、

「葵さん、あと少しでやばい状態ですよ。やりすぎです」

「―――今が満タンなんですが……」

 重すぎる沈黙が数秒流れて男が一つ確認を入れた。

「これで?」

「はい……」

「すまなかった」

 そういってこちらに頭を下げる。

 もしかして悪い人ではないのかもしれない。

「そうなると君は魔力親和率が吸収のほうに高いんだね。それなら確かに吸われ続けてもこちらのほうが強ければ問題ないし、弓という武装の選択も理解できる」

「そうね、キスまでしても大丈夫だったし」

「「「―――は?」」」

 なにやら隣と前と出入り口近くで声がかぶった。

「お前は痴女か! そこまで奪ったのか!? というかそれでよく無事だったな!!」

「そんなにキスしたかったら私がいつでもしてあげたのに!! 今すぐにでもしましょう。それがいいわ!!」

 いきなり混沌としてきた。とりあえずこの場にいたら精神衛生上問題がありそうだし、先ほどの出入り口近くの声も気になるのですぐさま逃げ出す。

 江藤さんの目から見て何を考えているか分からないし、真莉さんは場合によってはこちらにあの暴走の矛先を向けてきそうなので逃げることにする。

 名前を名乗っている地点でほとんど意味が無いような気もするが、そんなことまで今は考えが回らない。まわしたくない。

 ある程度はなれたところで呼ばれた気がしたが、聞こえなかったことにしてそのまま出入り口に走った。


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