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僕は異世界で  作者: ray
2/20

僕は異世界で確信する

 あの時の弁論で言っていなかったことがいくつかある。

 その中の一つは“そもそも記憶が受け継がれるのか?”というものだったが、あれの答えは“受け継がれることがある”というものに落ち着くだろう。

 話はそのまま異世界についてという方向に行くが、君たちは考えたことがあるだろうか?この世界の“科学的なもの全て”が“ほかの世界にとっては魔法である”と。批判する前にまず聞いてほしい。我々が当たり前と考えている“科学”が他世界にとっての“魔法”であり、我々にとっての“魔法”が他世界にとっての“科学”であるかもしれないということだ。

 これでは“魔法のファンタジーの世界とどう違うんだ”と考える人もいるだろう。確かにこれでわかったらその人は理解力に優れているか、すでに考えたことがあるかのどちらかだと僕は思う。

 つまり、人が呼吸によって酸素を取り込み、糖を二酸化炭素と水とに燃焼させつつエネルギーを作り出し、二酸化炭素を吐き出して活動するこの世界の常識が、ほかの世界では例えば、人が魔素を呼吸によって取り込み、魔元を魔素によって魔力に変換し、魔力を保存しつつ魔排を吐き出して活動する世界も存在しえるということだ。

 言い換えれば、人の身体のつくりがそもそも違うということである。

 また、人が魔物が多く戦闘が多いために野生的な毛深い種族かもしれない。実はそういった脅威は存在せずにただただ退化が進み、手足が短く、頭だけが大きくてそれを支えるための首や足などは異様に太いかもしれない。それらは分からないのだ。


 何故こんなことを言っているかといえば答えは簡単であり単純明快。現状として考えられる自分の現在位置が異世界だからだ。

 進化のくだりは見ていないからはっきりいえないが、その他の部分では大体現状を言い表している。

 そしてさらに言おう。やはり異世界最強ものは無理だった。

 あの時あげた中でほぼ唯一認めている方法の転生も、意味はありませんよー。魔力は人並み以下、成長は周囲より遅く喧嘩やったら負けまくってます。

 力なき正義が何の意味もないと理解した瞬間だったね。ついでに言って力があればある程度は何やってもどうにでもなりそうだ。

 あと、世界観は近未来? しかもここには科学というもの自体が存在しないから現代知識でチート行為も不可。アイディアでと思っても見たことのあるようなものばかりが並んでいる。

 大きく違うとしたらこのヒト体内エネルギー変換術、通称“HIBET(ハイベット)”(Human Inside of the Body Energy Transduction)これがあちらでは魔法と呼ばれるものになるだろう。事実こちらでも魔法と言うことのほうが多い。ハイベットというのはこの体内のエネルギーを変換して起こす現象全てを指すため、どちらかというと人が体内のエネルギーを使う伝説のものである“魔法”ということのほうが多いのだ。正式な場ではハイベットといわれる。わかりにくと評判の例えでは、果汁100パーセントでない果汁入り飲料をジュースというのと同じだろう(果汁100パーセントでないとジュースではない)。同じようにこのエネルギーを魔力というほうが多い。正式名称は“HIBE(ハイブ”(Human Inside of the Body Energy)であるが、むしろ知らない人も多い。

 このハイベット、ヒトが体内に貯蔵しているエネルギーを制御装置CD(Control Device)で体外に放出して操るというものだ。

 はっきり言おう。このエネルギーが切れたらヒトは死ぬ。

 まあ、当たり前だろう。生きるのに必要なエネルギーとここで使っているエネルギーは同一のもの。元々人間がどれぐらいのエネルギーを持っているのかは知らないが、この世界では一般男性でテニスコート程度の場所を灰燼に返せる程度らしい。が、そんな平均なんてどうでもいいことだ。問題は今の自分である。

 はっきり言って、ハイベットの能力が高さは簡単に言って才能と財力が基準である。

 ハイベットのエネルギーの元になるのは先ほど説明したとおり人だ。そして、そこにためておける最大量はもう才能としか言えない。そればっかりはどうしようもない。

 次に、何故財力かという点だが…当たり前だがただ食うだけでもエネルギーを補充できるだろう。そう思うのは間違っていない。

 だが、人のエネルギーを放出してほかのものに変換する技術は元々エネルギーをそのまま人に流し込んで活動を続けさせようとした医療方面の成果である。元々は重病人が手術に耐えられるほど体力が無いというのが理由で救えない命を救うためのものだった。逆に言うと、コンセントで充電するように人の食事を省略できるのだ。予備充電でも持って充電器を買える金持ちのほうが有利というわけだ。

 一応ほかにもエネルギーを補充する方法がある。あちらでは考えられない方法だが、精神統一して周囲からエネルギーをかき集める……としか言いようが無い。

 これで十年以上何も口にせずに生きた人を“仙人”と敬意をこめて言うらしいが、それが敬意なのか、心の底の嘲りなのかは分からない。少なくともこの台詞に純粋な敬意は感じられず、どこか皮肉めいたいやらしさを感じる。


 ―――さて、言わずにいた異世界から転生したこの僕であるが、現在の齢は13歳中学二年に上がり、総エネルギー量約13000、同年代平均30000……しっかりと落ちこぼれていた。

 落ちこぼれとは言ったが正確には“身体が弱い”というべきだろう。しっかりと自我を持ったのが3歳でそれまでは何度も高熱を出してほとんど寝たきりの生活だったらしい。それでも生きながらえたのは生きるのに必要なエネルギーを常に供給されたからだろう。

 それに落ちこぼれとはいっても魔術実技だけであり、その他においてはむしろ優秀である。だが、この世界に魔物といわれる明確な外敵が存在する以上、実技も必要不可欠である。

 だが、僕にも唯一にして最大の才能があった。それは“特異的魔力親和率の高さ”である。

 魔力親和率とは、体内のエネルギーを魔力として放出するときの変換効率だ。また、周囲から魔力を取り入れる能力の高さでもある。

 だが、大きすぎる問題がある。

 この特異的魔力親和率というのは魔力親和率でも吸収のほうの能力をさす。しかも放出のほうには制限がかかるといういやらしさ、本当にいやになってしまう。

 つまり、放出できないくせに吸収だけはできるということだ。さらにはためておける器が小さすぎるからあまりにも使えない。

 いや、まあ、いいことなんですよ。自然の中で動く分には体力が底無しだし、基本的に寿命が存在しない(ただし魔物による被害が多く、病で食欲がなくなり、機械によるエネルギー供給を受け付けない人もいる)この世界においてこの能力はいわば無限の寿命を手にするのと同じようなものである。

 しかも元々の量が少ないから機械によってエネルギー供給ができる(機械によるエネルギー供給は器が大きいと難しくなる)。言ってしまえば状況的に“寿命チート”といえるだろう。




「使えねぇ……」

 つぶやく声は外の実技中の生徒の声に邪魔されて掻き消えた。

 現在数学の時間。教師がしっかりと説明を(僕とは当たり前だが違って)わかりやすくしているが、昼過ぎのこの時間、初老で低い眠たくなる声の先生である以上、教室の中では脱落者が多数存在している。

 その中でまじめに聞いている女子生徒がいた。

 竜崎加奈子、クラスの人気者で天才。筆記で歴史と魔法学を除いて高校レベルの僕に僅差で続き、実技では成人男性を超える容量で繰り出す強力な魔法、さらにいいとこのお嬢様で性格もよく容姿も整っている。

 母親同士が友人の所為で幼馴染というものだが、最近はそこまでの接点は無い。

 照れ隠しでもなんでもなく僕はこいつが嫌いだ。理由があってのことではなく、ただ単純に嫌いなのだ。

「このX-2をAとおいて……」

 もう一度外を見る。

 開け放たれた窓からは涼しい風が入り込み、低くなっていく太陽は眠りの世界へと僕を誘うかのようだった。

 ならば、拒否する必要は無い。

 そのまま重くも無いまぶたを閉じて、眠りの世界に旅立とうとしたとき、うるさいサイレンが鳴り響いた。


 サイレンを聞くと同時に実技の成績優秀者は鍵つきのロッカーに走り自身の武器を手にする。

 実技の落ちこぼれはその集団が去った後にロッカーから自分の相棒とも言える弓矢を取り出す。そしてそのままCDをほとんど意味無く起動させて定位置である屋上に向かう。

 いまだに魔物は姿を現しておらず、その間に周囲の魔力をかき集める。戦場では“使い損なった魔力”にあふれているためそれを集めてそのまま矢に流し込む。

 三〇秒で中級、五分で上級、三〇分で最上級、一時間で戦略級といったペースで魔力が集まる。だが、これは囮だ。魔物はより巨大な魔力を目指して攻撃をする。

 だから僕はこんな目立つ屋上で魔力をかき集めるのだ。最後のボス的な魔物が現れたらすぐにこれを撃ち、ダメージを与えてそのまま待機というのが僕の仕事だ。

 大きな侵攻だったらこのまま第二射の準備か周囲の魔力をかき集めて魔力譲渡だが、今回は比較的小さな侵攻だ。不必要だろうと思い、周囲の魔力を集めて学校自体に注ぎ込む。

 学校は魔力で動いている。こうやって魔力を入れておけばいざというときに誰かが引き出すだろう。


 僕の矢は最大威力が高いが消費魔力の多さと連射ができない理由で嫌われがちだ。

 まあ、分からないでもない。だが、僕の魔力放出能力ではあのスピードが最大なのだ。誰かと契りを結べばその人に魔力をほとんどロス無くすばやく渡せるためそのときのほうがはっきり言って僕の重要度は高くなるだろう。

 だが、はっきり言ってこれは元々立場が逆だ。元来男のほうが放出能力が高く。女のほうが貯蔵量が多い。だから男に魔力を明け渡す女と強力な魔法攻撃をする男で契りを結ぶのだ。まあ、女でも放出力も高い奴はいるし、男でも貯蔵量も多い男もいる。それらは俗に言う天才と言うやつだ。天才は天才同士で一緒にいるから放出能力の高い女と僕が仲良くなることも無い。また別段容姿が言い訳でもない僕が女子と契りを結べるはずも無いため一人でこのような戦法を取るしかないわけだ。

 しかも数値で測ってくれるのは貯蔵量と放出能力のため僕のことはみんな“秀才だけど実技は落ちこぼれ、魔力回復が速い男A”程度だろう。多少の差があったとしても平均したらその程度だ。学力試験の前一週間の人気者さ。

 少々僻み始めたので自省し、大きな音を立てて倒れるボスっぽいものを見ているとまたあの竜崎と目が合った。

 最大限にまで悪意をこめてにらんでおいて、教室に戻るとそのままロッカーに弓矢をしまい席に戻る。

 後十分もすればまた授業が始まるだろう。

 それが今の日常、落ちこぼれの弓使いだった。


 今の彼は作中にもありますが、旗から見たらただの勉強ができるやつAです。実力を隠しているとかそういうものもありません。



 ―――というか、異世界でヒャッホーって言っているやつがチートな力を手にして隠すという行動をとると思えない。

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