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僕は異世界で  作者: ray
断章
18/20

哀れな苦労人の青年の叫び

 とりあえず、本編で説明不足だったところを補足してます。とりあえず完結にするけどまだ増えると思う。

「俺は自慢ではないが、生まれも育ちもいい自信があるし、能力としても平均よりも遥かに…とまではいかなくとも、十分に高い自信がある。

 学年では筆記実技ともに上位にいるし、得意な分野ならば高校生にも負けない自信がある。


 ―――そんな俺に、今現在唯一と言える汚点があるとしたら江藤葵において他あるまい。

 親の仲がいいという理由で幼いころから知っているし、そいつがどんなやつなのかも知っている。確かにあいつは俺以上に才能にあふれ、特に遠距離の攻撃魔法の掃射と言う点においてなら大人とも渡り合えるだろう。

 だが、己の立ち振る舞いに無頓着すぎるのはいかがなものか。

 魔力がほしければ貪欲に魔力をむさぼり、魔力を持つものがいたら何をしてでも奪い、その魔力を持って魔物を打ち滅ぼす。


 その行動を一言で表すならば痴女そのものといえるだろう。

 中学入学後、最初にあった侵攻では屋上にて一騎当千の活躍ではあった。が、たまたま近くにいて、魔力に余裕があったからといって隣にいた女子生徒の唇を奪い昏倒させた。

 それからその女子生徒に付きまとわれるも情け容赦なく叩きのめし、侵攻があると魔力に少しでも余裕がありそうな近くの生徒の魔力を略奪して敵を殲滅する姿から“魔力喰らい”と言うあだ名がつき、今現在もその悪名で知られている。おそらく知らないのは新入生ぐらいだろう。それでもすでに何人かは知っているようだが……。


 ―――と、そんなことが言いたいんじゃない。問題なのはその魔力喰らいが努力も何もしていないくせに俺よりも能力が高く、そいつのせいで俺に面倒ごとが降りかかるって言うことだ!!

 幼馴染と言う環境で、一方がこれほどまでに能力が高く問題児なのだ。当然その尻拭いはすべてもう一方に来る。

 まだ、『あの痴女を何とかしてくれ』とか、『魔力喰らいを止めてくれ』といった請願ならいい。だが、『あのアホ女のせいで彼氏に振られた』とか、『あの人にこれを渡してください』とかの特に恋愛関係に関するあいつのごたごたに巻き込まれるのはごめんだ! もういやだ! うんざりだ!!


 侵攻が終わった後に奪われた青少年があの“見た目は”いいところも合わさって“勘違い”をして、あいつに告白し玉砕されるのはもはや恒例行事だ。毎度のことだ。だが、その理由を俺のせいにするのは間違っている。どう考えても間違っている! 俺は確かにあいつの幼馴染だし、始めのうちは哀れな犠牲者たちのために尽力してきた……。だが、今では俺のほうから何かするわけでもないのに、あいつに関わる不満などはすべて俺の元にやってきて、俺の平和を壊していく……!!


 それで今回一年の件だよ。あの後俺はとある人に一時間ほど尋問され、疲れきって家に帰ればまた家でも親に散々言われたんだ!!

 何で俺がこんなひどい目にあわなければならない!! 俺には何の非もないはずだ。俺は何の失敗もしていない。強いて言うならばあの魔力喰らいを野放しにしていることだが、それを誰が責めることができると言うんだ!?



 ―――すまない。思わず叫んでしまった。愚痴を聞いてくれてありがとう」


「いや、そんなことは気にするな。持ちつ持たれつと言うやつだ。

 しかし、それほどまでにひどくなってたか…お前が江藤に関してこれほどまでに愚痴をこぼすなんて考えられないからな。かなりストレスがたまってたんだろう。

 ―――だが、ここでそんなに大きな声で言うとは勇者だな。と言うより命知らずと言うべきか?」


「どういう意味だよ」


「お前が自分で言ったとおり、あいつは容姿がいい。お前の言う勘違いしているやつも多いだろう。だが、それでも男子の欲望の的であり、女子の羨望と嫉妬を集めるあいつのことをこんなカフェの中央で大きな声でぼろくそ言うやつを|勇者(命知らず)と呼んで何が悪い」


「―――いいたいことはわかるが……」


「あー、何も言うな。何か言えばそれだけお前は敵を増やす。


 ―――本人同士のことを俺がとやかく言うつもりはないからな……」




 ―――卒業式 帰り道―――


「えっと、同じ高校いけたね」


「そうだな。まあ、わかってはいたが……」


「そ、それでね」


「ん?」


「あの……私と、つ、付き合ってくださいっ!!」


「はい!?」


「付き合ってください!」


「―――落ち着け、落ち着くんだ俺、こいつはさっきから何を言っている?」


「ずっと好きでした。私を嫌ってることも知ってる。それでも私は、自分の気持ちはしっかりと伝えたいの! ごめんなさい。迷惑、だよね」


「えっと、あ、えっ!?」






 ―――その後方約二十メートル―――


「おー、やってるな。予想通り今日か……しかし、あいつは何で自分に全員が文句を言いに来たか知らなかったのか。ある意味すごいのかもしれないな。断るときにいつも『好きな人がいるんです。でも、全く振り向いてくれないし、嫌われちゃってるのかな?』っていってるのにな。そのあたりまで聞かないのか、それとも断られたほうが言わないのか。

 どちらにせよ、このあとの二人が楽しみだよ」


「先輩が言ってた『心配しなくていい』って言うのは、こういうことだったんですね。あの人はいつから?」


「だいぶ昔じゃないか? 本人は全く気づいていなかったし、俺も相談されるまでは知らなかった、と言うよりも思いもよらなかった」


「じゃあ、なぜあの人はあれほどはしたないことを平気でするんでしょうか?」


「―――ほめられたことではないが、目くじら立てることでもないだろう……潔癖症だな。

 最初は自分の気持ちを否定するためだったらしいが……途中から趣味の範囲だな。絶対に」


「趣味?」


「場を引っ掻き回して周囲が混乱するのを見るのが好きらしい。少なくとも俺はそう聞いた」


「―――それだけの理由でするとは思えないんですけど」


「それ以上は俺も知らんさ。でも、あの時以来奪われているのは女子生徒ばかりだぞ。何か本人にもあったのかもしれないな」




 遥か前方ではうろたえる苦労人の姿があった。

 これからは苦労人ではなく、男の嫉妬の的とでもいうべきかも知れないが……。




 そういえば皆様よいお年を。

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