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僕は異世界で  作者: ray
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異世界最強ものはおかしいと僕は考える

 前に活動報告に書いていたものです。

 はじめにはそういった内容も多いですが、途中からなくなります。普通のファンタジーです。

 それほど長くはないのでちょっと見てやってください。

 僕は考えた。

 よくある異世界転生やトリップものでは現代の知識を使って(本当にできるかどうかは度外視に)チート行為ができるというもの多々がある。

 確かに、できなくはないだろう。相手の知らないことを自分ができるのだから。

 ―――だが、大きく間違っている点がある。

 そもそも、“その主人公たちのやったことを本当に今まで誰もなしたことのないことなのか”という疑問点が生ずる。


 考えても見てくれ、この世界で発展してきた技術(面倒なので全て一くくりでまとめさせていただいた)はこの世界の歴史で人が編み出してきたものだ。

 よくある言い訳には、『ほかの脅威が存在してそれどころではなかった』とか『そんな技術が必要ではないほど魔術が発展していた』などなどの理由が並べられるのに、主人公たちが戦争や魔物の大侵攻に巻き込まれたり『飢饉で奴隷になった』などの描写があるのは明らかにおかしい。矛盾している。

 人間はよりよい環境を求めて行動する。それが理由で“魔術だけに文明が発展することなどありえない”とさえ言える。確かに、宗教などの関係で科学などが遅れたときが地球でもある。だが、それならその技術そのものが宗教上の禁忌であるため、主人公たちが実力をつける前に処刑されて終わるのが当然の帰結であろう。

 と、言うよりも、ただの学生がそれについて深く関わらない限り詳しい構造や原理を知っているわけが無い。

 農業だったらその土地の気候や土壌や育てる作物が密接に関係するし、技術方面なら今のような都合のいい道具がそろっているわけも無い。それでもできるというのなら今すぐに外で現代の道具を一切使わずにそれらをつくってみろというものだ。

 さらに言えば、いくら才能があったからといって、今まで特に修行も何もしてこなかった餓鬼が数ヶ月で剣術でその道のプロと互角にやりあえるはずが無い。魔術も数式や科学のように準備さえすれば誰でも同じ結果が出せるようなものでなければ、今までそんなものに触れたことも無い餓鬼が無双できるはずも無い。誰でも同じ結果が出せるのであれば、その人の持つ燃料(魔力)さえ多ければできなくはないだろう(ただし最強ではなく強いにとどまる)。つまり、限定的な条件に限ってだけ異世界トリップものではチート行為(最初から特に多くは何もしてないのに強い)はできるはずが無いということだ。

 一応補足しておくと、ここでは『剣術をやっていた』という設定はほぼ無意味だと考えている。実践と稽古は違うのだ。また、“相手を殺すための剣術”と“きれいに攻撃を当てる剣道”では大きく違うのは言うまでもない。


 ほかにも、『召喚されたから補正……』などとほざくふざけたものも存在するが、そんなご都合主義は犬にでも食わせてしまえ。召喚の魔方陣にそれにまつわるものが付与されているのなら自国の兵士にその部分を上手く取り出して使う研究が絶対に行われるし、魔の“法則”である以上、それはできるはずだ。

 『神に謝罪の意味をこめてチート能力をもらう』というのがもっとも滑稽である。お前らはいつの間にか踏み潰していたアリ一匹にいちいち謝罪するのか?さらには、まあ墓まで立てるのであれば分からないでもないが、神がいちいち死んだ一個人を優遇して対処していたら今頃この世界にもチートたちはあふれている。また、『神が遊びで……』というのもまず無いだろう。虫を捕まえて虫かごには入れてその中の世話をしたとしても、それ以上はしない。するはずも無い。“遊び”なのだから。『暇つぶし』なら苦労するようなものを投げ入れても観察して終了だ。わざわざ強くしてやる必要は無い。というよりも完全に無駄だ。もはや暇つぶしではなく、それが仕事だ。



 ―――これでは夢も何もない。あるのは現実やこのような捻くれものの批判である。

 だが、それがどうした。世の中ハッピーエンドでは終わらない。一騎当千の無敵ともいえる将も二千、三千、一万の兵の前には敗れる。一撃で金剛を叩き割る怪力でも届かないところからの矢の雨には何の意味も無い。全てを防ぐ盾ならば盾で守られていないところから攻撃すればいい。無限ともいえる魔力で大規模な攻撃を続けるならば相手に休ませる暇も与えずに攻撃を続ければいい。睡眠をとらなければ集中力は落ちるし、疲労はミスを生む。


 これまでの条件を元に考えた“最強”の主人公は果たして本当に最強といえるのか?

 “一人で国に喧嘩を売る”“魔王軍を仲間数人とともに討伐できる”まだまだあるだろうが、それが今考えた捻くれものの意見だ。

 結論として、異世界において現代人の意識を持ったものが最強になって好き勝手できない。というよりも、そもそも最強とかどんな条件においてもありえない。



 パチパチパチと乾いた拍手が鳴る。

 その音を発生させた男は実に不服そうにこちらを見た後ため息をついて一言こういった。

「夢が無いな」

 その台詞に僕は激怒した。

「セイジが異世界最強ものについてどう思うかと聞いてきたんだろう! わざわざここまで言ったのにそんな態度を取られると思わなかった!!」

 ―――余談だが、先ほどの話に五分ほどかかっている。十分に弁論である。

「お前も高校生なんだからもっと夢を持って生きようぜ……」

 そういって哀れみの目を向けるセイジをにらみつけ、

「叶わない夢を見るぐらいなら現実を見て目標を立てる」

「夢と目標の違いは?」

 その問いには自信を持って答える。

「叶う可能性のあるものが目標、叶うはずのないものが夢」

 はっきりと告げ、理由を入れようと思ったところでセイジが口を開いた。

「ハジメ、お前の基準だと子供がプロ野球選手になるんだといっていたら、それは夢になるのか?」

 聞きたいことが分からなくもないので正直に答える。

「相手にもよるが、その辺で遊びまわっている大多数の子供については夢というな。本気になってバッティングばかりでなく守備とかも満遍なく練習してたら目標という」

 数秒間の間が開いた後、

「お前は何かそういった叶わない夢を持つべきだ」

「持ってはいるさ、ただ、それについて本気になって語りだしはしないだけで」

 それでそのまま二人で家に帰った。

 そして、そのまま僕はマンションの5階から落ちてきた植木鉢が後頭部に直撃し、即死した。


 中身はそれほど異世界最強ものに対する批判はないのでご安心ください。

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