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12:ユリ、顔も知らない敵対心

 五月も終わりに近付き、テストが終わって一週間経った放課後。帰りのHRで返ってきたテストの結果を見て、私は愕然としてしまった。

 うちの学校は廊下に順位を貼り出したりはしない。

 個人に配られる紙に、各テストの点数と学年の順位が書かれているだけ。クラスの順位すら書いていない。だから、点数や順位は自分にしかわからない。

 まぁ皆友達と見せ合いっこしてるけど。ほら、あっちのほうとか。そっちのほうとか。部活に入ってない子とかが、テストの結果を見て一喜一憂している。

 私? する友達がいないですが何か?

 ……それはさておき、私は人には言ってないけど、今回は自信があった。

 ホスト教師にも一位を取れとか言われていたし、いつも以上に勉強した。どの教科も死角なく、万遍なく。なのに……。


「あ、ユリ先輩二位じゃないッスか。すごいッスね!」


 うるさい駄犬。耳元で騒ぐんじゃない。というより、勝手に人の成績を見るな

「うわぁ、マジだ」


 お前もか。

 思わず佐藤を睨んでしまった。が、こっちを向かれる前に慌てて視線を逸らして事なきを得る。

 はぁ。アンタたち、いつ来た。というか、人の成績勝手に除き見てんじゃないわよ! なんて心の叫びはイケメン共に聞こえる筈もなく。残っているクラスメイト(女子)の嫉妬の眼差しに曝されながら、会話は続いていく。


「俺だって学年で十位以内に入ったんですよ。高校初のテスト頑張ったッス。褒めて下さい、ユリ先輩」


「凄いね、藤堂くん」


 ぶっちゃけ、駄犬の成績になんて興味ない。しかし、やんちゃで軽そうな見た目に反して頭良いとか。ギャップにお姉様方のファンが増えそうですね。


「ズリイ!」


 おざなりな私の返答に反応したのは、意外というか当然というか、佐藤だった。びっくりした。お姉様人気に対する嫉妬かと思ったじゃない。


「じゃあ、佐藤先輩はどうだったんですか?」


「俺? 俺は赤点ギリギリ。マジで危なかった」


 胸を張って答えたバ……佐藤のせいで、会話が途切れた。

 何と言えばいいのか。たぶん心の赴くままに口を開けば、嘲りの言葉しか出てこない気がする。


「あぁ、佐藤先輩ってバカだったんですね」


 まぁ、バカの成績なんてさらにどうでもいいし、反応は駄犬に任せて私はスルーさせてもらおう。

 私にとって重要なのは、私の上をいく存在だ。

 手の中の成績表をもう一度見つめる。どれだけ睨んでも、書かれている結果が変わることはない。

 一位って、誰よ? あんなに勉強した私より上に誰かいるなんて、そんなの今までなかった。ムカつく。絶対冴えないガリ勉野郎だわ。

 あ、でも。もし控え目な眼鏡っ子だったら、ぜひお友達になりたいかも。成績上位同士、一緒に勉強したり!

 よしっ! それなら早く一位が誰なのか知らないと。嫌だけど、ここはイケメン達に頼るか。有名な分、私よりはるかに顔が広いでしょ。


「私、今回は結構頑張ったんだけど、二位だったんだよね。一位とった人ってどんな人なのかな?」


 これで男だった潰す。


「あー俺知らねえや」


「俺も、学年が違いますし」


 ちっ。使えない。役立たずはイケメンだろうと役立たず。『ただしイケメンに限る』なんて言葉は私の辞書にはない。

 でも、そうよね。馬鹿なイケメン共より、その辺の男子のほうが役に立つわよね。適当に声かけて、一位が誰なのか聞かないと。こんなに手間かけさせるなんて、一体誰なのよ一位は!


「橘だろう」


「え?」


 あまりにもタイムリーに割り込んできた第三者の声に、心の声が漏れていたのかと焦ってしまった。振り返れば、そこにいたのはツンデレ風紀委員長。

 何で三年が二年の教室にいるのよ。風紀の仕事はどうした。暇なの? 委員長って実は暇なの? まぁ、一年の駄犬もサボってるし、そんなに忙しくはないんだろうな。でなきゃ、顧問のホスト教師もあそこまでウザくはならなかったでしょ。

 なんて、そんなことはどうでもいいのよ。ツンデレ、今何て言った? タチバナ? それが一位のヤツの名前? たまには役に立つじゃない。流石、氷の委員長。

 よ、二つ名が厨二臭いぞ、恥ずかしい。あぁ、初めて貴方の存在に感謝します。委員長様。


「あの、タチバナってどんな人なんですか?」


「言いたくない」


 は? ちょっ、ちょっと待ってよ。

 何、言いたくないって。教えるくらいいいじゃない。秘密にする意味がわからない。いやいや、どうせここからツンデレ発動するんでしょ。


「君も、橘には関わらないほうがいい」


 予想に反して、ツンデレ委員長の表情は硬いままだった。背を向けて、私達から離れていく。

 どういうこと? タチバナって誰よ。男? 女? というより、関わるなって何? そんなの無理に決まってるでしょ。

 私は完璧でいたいの。そのために今まで努力してきたのよ。それなのに、二位なんて地位に満足できるはずないじゃない。

 見てなさい、タチバナ。絶対アンタに勝ってやるんだから。


 見栄っ張りの根性舐めんなよ!


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