羊の眠り番
掲載日:2026/07/31
夢畑は、夜になるとゆっくり光りはじめる。
光は強くない。ホタルが遠くで瞬いているような、柔らかい明るさ。
メイはその光の中を、静かな足音で歩く。
眠れない人がいる夜は、畑の苗が少しだけしおれてしまう。
心がざわつくほど、苗の先がくたっと垂れ、色がうすくなる。
メイはしおれた苗のそばにしゃがみ、自分の毛を一房だけそっと置く。
その毛は"安心の毛"。触れたものの呼吸をゆっくりにする力がある。
毛が苗に触れると、苗はふわっと立ち上がり、色が戻り、光が少しだけ強くなる。
その光は風に乗って、眠れない人の枕元へ届く。
光がまぶたに触れると、心のざわつきがすっとほどけていき、眠りが静かに降りてくる。
その様子を見たメイは、"ふ"と息を吐き出し、また見回りに出るのだった……。
noteに公開している寝物語の1本。
眠れない夜のお供にどうぞ。




