『寂滅の幻想』
『寂滅の幻想』
㈠
寂滅というものは、進化ではなく退化であると、誰が世間に直言するだろうか。分からないな、ただ、分からないなりに、寂滅というものは、少なくとも成長ではない。寧ろ、老いに近いだろうし、誰もが一度は通る道だろう。
㈡
寂滅を批判する気はない。寂滅であって然りな場面も、人生では沢山あるが、寂滅となることが、所謂、素晴らしいことというのは、甚だ、幻想ではあるまいか。寂滅が俺を先導しないのは、それなりに、訳が有るだろう。
㈢
寂滅とは、幻想ではないだろうか。少なくとも俺は、今迄生きて来て、これからの未来を見た時に、寂滅の状態に成りたいとは思わない。それは、老いたものが、若者に憧れ、同時に、自己防衛のために、名付けた言葉だろうと思う。つまり、寂滅とは幻想なのである、と言ってみた。