表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

〔第六話〕十代目・石川五ェ門

深夜の護帝神社。春花の寝室に健太が入ってきた。


「小隊長、起きて下さい」


「きゃあ、あんた本当に襲いに来たの!」

「違いますよ。不審な輩がいるんです」

「不審なのは、あんたでしょう」


「だから、違いますよ。たぶん盗賊だと思うのですが」


「えっ、盗賊?」


「変な話し声が聴こえたので、見に行ったら、不審な男たちが五、六人、境内に集まっていたんです」


春花は飛び起きて、健太に指示した。


「早く、パワードスーツを着るのよ」



この夜。護帝神社の境内に集まった盗賊の首謀者は、自称『十代目・石川五ェ門』と、いっても、安土桃山時代の大泥棒・石川五ェ門とは、全く関係のない人物である。


この男は、西日本の某城下町に生まれた。呉服屋の末っ子であったが、少年時代は剣術道場に通い、筋が良く、将来は免許の皆伝を受けるであろうと噂される。


しかし、十代の頃に江戸の呉服屋へ奉公に出て、そこで博打を覚えた。悪い仲間もでき、彼は剣術自慢でもあることから、博徒の親分の子分になってしまう。


だが、そんな彼は、博徒としての頭角を現し始めた頃に、女性問題で、兄貴分を斬ってしまった。


そのまま大阪に逃げた彼は、それ以降、盗賊になり『十代目・石川五ェ門』を名乗って、京阪を荒らし回っている。今では手下を率いる『お頭』であった。


この五ェ門は、以前から、護帝神社に奉納された宝刀『月夜見(つきよみ)ノ小太刀』を狙っていた。宮司が留守であると聞いて、今夜、手下を集めたのだ。



春花は、パワードスーツを着用しながら言う。


「相手が五、六人なら、火器は使わずに格闘戦よ」

「はい、了解しました」


パワードスーツには、マシンガン、グレネード・ランチャー、ミサイルが装備されている。だが弾には限りがあるために、なるべく温存したいと、春花は考えた。


二人が境内に出ると、やはり盗賊らしき人影がある。暗視眼鏡で見ると、凶悪そうな人物が、六人。


「自分が、行きます」


健太は盗賊の前に躍り出た。


「なんだ、お前は!」


盗賊の一人が、そう言うより早く、健太の脇腹を短刀で刺した。もちろんパワードスーツの装甲で守られている。


「な、なんだ?」


その男は何度も刺したが、全く刃が立たない。すると今度は、大柄な男が前に出て来て、


「ふんっ、ワシが相手じゃ」


健太に向かって、突進してきた。


「おりゃあっ、小僧が!」


ガツン!


激しく激突する。健太は正面から受け止めた。


「見かけによらず、恐ろしい力じゃ。だが」


大男は、足を掛けた。


「ワシは元力士じゃ!」


投げ技を出す。


ドスン。


健太は地面に叩きつけられた。それを見て春花が怒鳴る。


「なに、やってんのよ!」

「いやあ、そうくるとは」


立ち上がった健太は、大男のボディにパンチを叩き込んだ。


ズドンッ。


「う、うぅっ」


悶絶する大男の顔面を狙い、飛び回し蹴り。


バギンッ!


キックが決まると、大男が真後ろに倒れ、気絶した。


「おいおい、あんまりナメるなよ」


自称・石川五ェ門が、


シャキーン。


背中に背負った忍者刀を抜く。


「俺は、こいつらとは違うぜ」


気合い一閃。


「いやあぁーっ」


五ェ門は健太の左首筋へと斬り込んだ。


ガッ。


首筋に当たる刃。そのまま五ェ門は、


ググッ、


と、忍者刀に、力を込めた。首を切断するつもりだ。


「死ねやッ!」

「死なないよ」


両手で刀身を握る健太。そのまま、忍者刀をへし折る。


ガギイィーン!


「な、なんだ。本物の化け物か」


五ェ門は血相を変えて、脱兎のごとく遁走した。


「う、うぁっ」


他の仲間も、蜘蛛の子を散らしたように、逃げる。ただ一人、気を失った元力士が大の字になりノビていた。


「こいつ、どうするの」


と、春花が指差す。


「おい、生きているか?」


コン、コンと爪先で、大男の脇腹を蹴る、健太。


「う、うぅっ」


さすがは元力士だけあって、回復が早い。すぐに、両目をパチリと開いた。そして、健太の姿を見る。


「あっ、うぁっ、化け物!」


大男は、バネのように跳ね起きて、全速力で逃げ去った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ