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第九章 賀藤音矢 2



    2



音矢が思った歯牙にもかけない学生二人とは信夫と江野のことである。

今回の鮎川洋二強襲作戦、音矢は〈チャンピオンシップ・フレンドシップ〉の動画も観たし、洋二のネット内の様々な痕跡からそいつらが元イジメグループだとも知っていた。

―エンマコンマ化をしたというのにヌルいことしていやがる。

音矢は自分の境遇と周囲のエンマコンマ化した人々と対比して、洋二の能天気ぶりにまず不快感を持っていた。

だからか、ここでその学生が近づいてきても、動画撮影くらいにしか考えていなかった。

というか、ここ最近の一連の強襲や内乱で音矢は(音矢だけではないのだが)エンマコンマではないニンゲンを見下す感情が芽生えていた。

だから、信夫と江野がこの戦闘に参加するという発想がなかった。

エンマコンマ同士の決闘の鉄則で、普通の人間が作戦地域に出ることは考えられなかった。

しかも、彼ら二人が抱えて持ってきたものが、なんなのか直ぐに判断つかなかった。

洋二には複数のエンマコンマが存在し、組織化していることが予想はできた。

だから一人だけでなく、二人以上で来るこのも想定内ではあった。

―二人?

―エグゼンザ、追手はこちらを一人としか見ていないよな?

これは以前、脳内AIと話している時に浮かんだ戦法だ。

敵が複数でも一撃離脱を一回できれば、捲土重来を図れる。

信夫と江野が持ってきてものは家庭用プロパンガスのボンベ。

そのプロパンガスボンベには洋二が自作した差込口が付いていた。

(そういう意味では洋二の発想は斗美らのアタッチメントと近い発想ではあった)

エンマコンマの爪や毛のUSBが差し込まれるためにある。

不器用にだが「せーの!」と信夫と江野がボンベを洋二にぶつける。

重くて・太いボンベである。

音矢がその場違いな物体に虚を突かれた。

その流れは音矢が、レーザー・カッター・アタッチメントを振り上げた時に行われた。

つまり、完全に、相手の、懐に、入り込んだ、時だ。

信夫と江野が後方に退くことの確認を洋二は忘れていない。

差込口に毛髪USBを繋ぐ、その接続後に刹那、スパークさす。

―ヒット!

脳震盪という言葉があるが、まさに脳内に自分の真の本体がいるエンマコンマは、食らった瞬間に、脳への神経デバイスを一時的に切断することで、本体への衝撃を抑える。

だが、これは飯田安奈の姿を見た時に、涙した洋二が義体の身体にフィードバックしないように取った手段と同じで、つまり洋二は音矢がそうすると察知していた。

レーザー・カッター・アタッチメントは未だ煌々とその禍々しい光を放ち続けている。

地面に伏せて、プロパンガスの爆発をかわした洋二は、くずおれた音矢を腕挫逆十字の要領で、そのレーザー・カッター・アタッチメントが接続された右腕を取り、レーザー部を音矢の首に近づける。

「賀藤ぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

ここまできて、こいつの仲間が自分への強襲に参加してこないのは、明らかにこの賀藤音矢の単独行動だと思われた。

つまりここで賀藤を始末すれば、逃げ切れる可能性は高まる、と洋二は戦闘中、既に判断していた。

「やめなさい!洋ちゃん!もう十分だよ!」

倒産したラーメン屋から戻ってきた麻井藍がそこにいた。

後になっても、この時、藍が止めなかったら自分は音矢の首をはねていたのか?と考えあぐねる洋二であった。

あの時に止まったのは、藍のひと言か、自分の良心か、と。

全ドローンが地面に落下する。

レーザー・カッター・アタッチメントが急速に冷えていく。

音矢は身体と脳内の本体との再接続、つまりリブートをかける。

洋二と音矢はかなり密着する態勢だったので、今更恥ずかしく思い、直ぐに離れ、二人とも直ぐに立ち上がった。

そしてにらみ合うのだが、音矢の方の視線は直ぐに洋二の後方へと注がれた。

「弓、来ていたのか」

賀藤弓がそこにいた。

「その人、この人のカレシのようだったから、止めたんだ」

弓の傍らにいた藍が云う。

「なぁ、こいつはオレらの番組を潰して、学校も乗っ取ったんだ!ふっかけてきたのはこいつだ!」

洋二が藍にこのような口の利き方するのは初めてのことであった。

洋二としては、周囲の人間、特に藍を守ることを第一に考えてきたので、こうなった。

「いや、先に手を出していたのは、洋ちゃんだ」

「エッ!?最初からいたの?」

「気づいてないじゃん!」

藍と洋二のやり取りに信夫が「まずオレらと合流したのさ」と云い、江野が「遠くから見ていてくれ、とお願いしました」と続ける。

そこで弓と出会ったらしい。

「でも、ふっかけてきたのは・・・」と洋二が云いかけると藍が「先に手を出す方が悪い」と言い合い、そこで音矢が口を開く。

「いや、番組をBANしたり、芸能プロダクションを潰したのは、俺の仲間がやったことだ」

「おい、そういうの後出しはナシだぜ」

洋二がくってかかる。

「鮎川、あんたはエンマコンマ、最後の一人だ。それで様子を見に来た」

「両腕に武器つけて、拳銃ブラ下げてかよ」

またにらみ合う二人。

「その様子を見に来たの説明と、あんたのケンカに乗った説明をさせてもらいたい。聞きたいこと、いっぱいそっちもあるだろう」

その時に音矢は少し笑った。

洋二としては、相手をする側が自分より強大だったため、家庭用ボンベで一本取った時点で、プライドは保たれた。

「兄ちゃん、私もいていい?」

と弓。

―妹だったのか、そういえば似ているな、この二人。

洋二も、隣の藍もそう思った。

「じゃあ、私も行くわ」

と藍。

「江野くん、オレたちは帰ろう」

「エッ、信夫くん、なんで?」

「だって、オレら二人は物凄く居辛いと思うよ」

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