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第七章 ハンニバル 1



    1



特殊詐欺グループ壊滅作戦の折に、当初の計画通りに運営できなかった原因の一つに、運営スタッフが浜野や熊本が派遣した民間団体からの出向が挙げられる。

約1年かけて足立が関与する特殊詐欺グループを配下につけたものの、そのスタッフは半グレだけあって軟弱に過ぎ、とてもこの前のようなミッションは遂行できないと竜馬は判断した。

初期メンバーの斗美や亜夜子はペントハウスにいて、竜馬率いる実行部隊は改造中のホテルにいる。

サポートメンバーというポジションは今やなくなり、皆が竜馬の指揮のもとに動いている。

何に動くのか?

前回のような特殊詐欺グループや暴力団を潰しているが、昨今では汚職政治家やニュースに出るような猟奇殺人の犯人もマトにすることが候補に挙げられていた。

挙げているのは木本や本多らの後発組で、亜夜子や璃恩は反対し、斗美は静観している。

結局、自分らエンマコンマ同盟の存在を割るかどうかということに繋がる。

それも国民全体なのか、政府の限られた権限者までなのか、その外郭団体になり果てるのかといくつかの選択肢はある。

今まさに同盟は岐路に立っていると組織の実態を知る者どもは実感していた。

美香と斗美はそのことで何やら動いているらしいし、竜馬も独自に動くことした。

配下の獲得である。

いやいや、竜馬には有紀や木本を始めとするエンマコンマたちがいると思われるだろうが、縁がある有紀は別として、斗美や亜夜子と同じで、竜馬じしんも彼ら・彼女らを信用していない。

イベントのような、スカッとする作戦を欲しているという幼児性もあるが、戸泉や綾瀬の普段の無気力や本多や澤洋の犯罪性というふうに、人間性がまず悪いのだ。

実は今斗美が動いていることにも関係するが、エンマコンマに普通のサラリーマンや役人が今のとこといないのに疑問がわいているのだ。

それこそ警察官や自衛官、官僚や役人がエンマコンマ化すれば、中枢への働きかけが容易になるのに、それがない。

日本の土地にしか発生しないことを合わせて、やはり何者かの意思を感じるのであった。

―起業家の私や女優の亜夜子、漫画家のみゃーこ、シングルマザーの有紀に、復讐代行の竜馬、とどう考えても社会の周縁にいる者たちだ。

斗美は斗美でその考察から動くが、その復讐代行という特に変わった経歴を持つ竜馬は私兵を欲していた。

部下のエンマコンマを抑えるのに普通の人間で太刀打ちできないだろうが、それは自分でやればいよく、騎士であるエンマコンマの下に兵士で構成された兵隊がを持ちたかった。

そこで来たのが新宿は歌舞伎町。

ここに巣くう不良少年を更生させたいと以前から竜馬は思っていた。

竜馬はムチャクチャな手段を取る男だが、心の底では正義を持っていて、その言葉に殉じたいと思っていた。

―自分がやりたいことをいかに為すか?が命題であって、組織の運営や保身を考えるのは間違っている。

竜馬の計画では、ゆくゆくは部下のエンマコンマたちにも彼らを矯正・教育していくことで、克己心を学んでもらいたいという考えがあった。

なにより自分の意思と行動を継ぐ者を欲していた。

部下のエンマコンマにそういう人材はおらず、エンマコンマでなくともよいのだ。

この界隈に昔の自分のような半端ものの少年少女が集まってくるとメディアから知らされていた。

足を運んでもう5回目。

話しかけても無視されたり、逃げられることばかりだ。

それを彼らが恥ずかしがっているからと解釈したが、竜馬は大学生くらいの年齢で、しかもウエイトもあり、背も高い。

動物じみた本能やすみ分けは持っている不良少年からすれば、竜馬は避けたい人物であった。

前回、少しからかってやった少年が目の前にいたので、笑顔で近づいていくとスマホをかけながら、駆け出し、去って行った。

その折にスマホの相手に「ハンニバルを呼んでくれ!」と云ったのだが、そこまでは竜馬には聞こえなかった。

2021年、真夏の深夜、ラーメン二郎のある通りだが、もう閉まっている。

平日の夜更けだからか、人通りはない。

「織豊竜馬さん、ですよね」

一人だけの例外が話しかける。

「だったら、何だってんだ!?」

会った瞬間に竜馬は理解した。

―こいつはエンマコンマだ。

相手の男は未だ若く、高校生くらいの年齢であろう。

「東南アジアの件くらいまでは隠密活動はほぼパーフェクトでしたが、その後、新入りに任せましたよね。かなりネット内に痕跡がありました。椎名亜夜子さんは芸能人だし、ハヤタ斗美さんは社長なんで、近づき難いし、あなたは最近、やたらこの街に出没するという情報をリークしたので、ご挨拶は、織豊竜馬さんにしようと決めました」

「うちの姐さんたちの名前出して、動揺を誘う手段か!?そんなこといいからかかってこいよ!」

竜馬はやはり自分はこういう男なのだとつくづく思った。

この街に深夜、何度も足を運んだのはこういうヤツとこうしたかったのだということに気づいたのだ。

「いいでしょう。僕も女性に話しかけるのは苦手だから、あなたを選んだ。同時に、それはこうなることを予期することでもあった」

「話早いや。教えろよ!おまえの名前を」

竜馬の誘いに相手の男はこう答えた。

「賀藤音矢だ!」

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