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第五章 椎名亜夜子 5



    5



男の名は織豊(しょくほう)竜馬。

勿論偽名だ。

高校の時、ひじょうに巧妙なセクハラをする教師を複数回殴る・蹴るして退学した。

その後、コンビニのアルバイトをしながら、ネットでこのような教師やムカつくクラスメイトや先輩を発言している若者を探した。

探して、持ち掛ける、復讐を。

依頼料は一律50,000円

中高生にはイタい金額であるが、この金額には切実さが詰まる。

相手が男性の場合は闇討ちにし、女性の場合は悪質なストーカーを演じ依頼者への攻撃が止むまで続ける。

織豊竜馬はこの商売をガーディアンと呼んでいた。

歪んだ正義だろうが、自己満足だろうが、そんなのは関係ない。

弱い立場の人が苦しむ様を見逃す偽善が竜馬には許せなかった。

だから天田有紀の場合も見逃せなかった。

竜馬が料金を取るのは相手の本気度を知りたいだけで、弱い者がいじめられている時は即座に助ける。

だから街中や車内ではしょっちゅう揉め事を起こしている。

近所に住んでいた天田有紀がアパートの駐輪場で夫から蹴られている時に竜馬は割って入り、その歪んだ正義感で夫をタコ殴りにしていた時に有紀から止められた。

「私の娘がこのひとの友達に預けられていて、どこにいるのか判らないんです!」

その後、有紀は竜馬にすがりつき、やめてと連呼した。

その通り、やめた、というのが竜馬と天田有紀の縁である。

バイトから帰ってみたら、ニュースで有紀が夫への傷害を知り、近所の聞き込みでこの警察署に捕縛されたことを知った。

―今まで夫の加害を無視していたクズのクセに、逆襲したら逮捕かよ!

竜馬はその性格や行動により何度も警察に尋問されたが、実刑はない。

それでも警察にはただでさえ嫌いなのに、弱き者をくじくとは!と彼の倫理観がそれを許さなかった。

それが今ここに彼がいる理由だ。

手の甲を回転させ、斗美の細い足首を掴む、そして引っ張る。

亜夜子ががら空きとなった竜馬の脇腹にスタンガンを押し付ける。

各種武器がアタッチメントに接続され、エンマコンマの腕を伸ばし切ると服を破りせり出してくる仕組みだ。

だが対警察官用にとスタンガンのアタッチメントにしたのが失敗だった。

エンマコンマの肉体には電気はさほど通用しない。

だが服が破れてスタンガンが出てきたというギミックを女性二人が隠していたという準備と、暴力を日常とし身長185・体重120のこの自分とやり合うという非日常が、竜馬を少々混乱させた。

その少々を斗美と亜夜子は見逃さなかった。

亜夜子はそのまましゃがみ込み、勢いよく立ち上がる。

斗美は竜馬の右手から逃れ、空中にいる時、電信柱を強く蹴った。

すると竜馬の顎には亜夜子の頭突きが、後頭部には斗美の蹴りがそれぞれ炸裂し、さすがのタフネスも片膝をついた。

そして、現実から脳内のコクピットへ意識が移動した。

―なんだ、こりゃ。

竜馬の混乱が続いている時に斗美が「これがエンマコンマ。あなたの身体は縮小化され、脳内に収まっている。そこは今の身体の脳内だ」と云った。

そこに藤谷みゃーこが空から舞い降りる。

イヴィトール・ユニットだ。

「斗美さんの右目と同期していたから、文字通り飛んできたけど、大丈夫だね」

「あんたらと話し込んでいるヒマはねぇ。俺は天田由紀という女性を救いに来た」

竜馬が立ち上がりながら云う。

「天田由紀! 同じ目的じゃん! バトルする必要なんかなかったんだ」

斗美が返す。

そこに沙也が天田由紀を抱えて戻ってくる。

沙也の背中には今夜、睡眠ガス散布機のアタッチメントが装備されていた。

ガスや毒は当然エンマコンマには効かない。

六人はトレーラーに乗り込んだ。

天田由紀は竜馬と四人の女性に礼を述べた。

そして次に「娘、こよりも助けてください」とお願いした。

そこで竜馬が天田由紀との因縁を語った。

「だったら、その脳内でネットに接続すれば直ぐに判ると思うよ」

しかも一瞬で探し物は見つかる。

だが斗美は事前に調べた天田有紀の素性から、その娘の居所を掴んでいたのだ。

「このまま板橋区に向かうよ」

有紀の娘は、九歳。

その居所は児童養護施設だった。

有紀の夫は友達に預けたのでなく、ジャマだから妻に内緒で捨てたようだ。

斗美は居所によっては仕切り直す予定だった。

もしチャイルド・セクシャル・アビューズに会うような場所~暴力団組織や繫華街にいたら、天田有紀を外す気でいた。

法を曲げて天田有紀を連れ出したのだ。

娘も正規の手続きを踏まず、今夜中に突然連れ出すに限る。

「本当に判るものなんだな、スゲェ」

「あなたもできるハズだけど」

「生きていた!ラッキー!以外なんにも考えてなかったんだゼ」

「エッ!? そういやぁ、どうしてエンマコンマになったの?」

斗美のその問いに竜馬は答える。

「二週間前、ヤクザに刺された」

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