11年後再会…時は煙草が燃え尽きるように煙と共に流れゆくもんだ
ざまぁ作品は、昔のTVや漫画などの様に、勧善懲悪…悪いことを強く強調し、全との対比の幅が大きい程最後のやり返しや裁きがスッと感じるのを意識して作品を書いていました。
現代の作品は、そうした流行や規制の変化の中洗練され現在も名作は生まれ続けています
ネット文化になり、作品は伏線など読者に考えさせながら楽しませる流れになり、読者も考察や現実との擦り合わせや物語の辻褄など細かく考え簡単に批評できる時代になりましたが、作者としては、そうしたもの全て考えず、面白かっただけの作品になればと努力してみました。
それでも、考察や色々あるようで。
作者としては、前述通り、対比を表現したのと、どんなに真面目に誠実だと言われていた人間も、誰しもがある日突然に魔が差して転落を選択する可能性があると表現したかっただけなので。
それと主観的に、軽い気持ちで人の人生を壊しかねないNTRと言う題材が過去から続く必殺シリーズなどの、晴らせぬ恨み晴らす、現代で言うざまぁに当てはまると考えその中で表現ができたらと書いたのですが、文才など含め力不足で伝わらなかったのかも知れません
それらを含め、後日談と屑男の顛末を追加執筆させて頂きます
時は流れ…11年の月日が流れた…
街中を一台のクラシカルなスクーター・ベスパが走っている…
それを運転する男の姿は銀色の半帽を首の後ろに引っかけ身体の前にゴーグルをぶら下げ、黒に赤ラインのボルサリーノハットに黒スーツに黒シャツ、ワンポイントにブルーシルバーのネクタイを締めた眠たそうな顔ををした男だった…
ベスパは、前方に見えたコンビニの駐車場へと入り、コンビニ入り口近くでエンジンを切り男はベスパから降りスタンドを立て、スーツの内ポケットをガサガサとあさり始めた…
そして、ジャケット内側から手を引き抜き取り出したスマホ画面をタップしながら耳にスマホを当て、店内へと足を進めた…
店内を見渡すと客はおらず、主婦らしきパート店員さんの何人かは、楽しそうにおしゃべりをしながら品だしをしている最中らしく、レジには一人ぽつんと佇む女性が…その女性は、楽しそうにおしゃべりをしている主婦達よりも歳が下だとは思うのだが、不潔に感じてしまう髪型や雰囲気が暗く重い空気を纏っているせいなのか男には老けているように見えた…
店内には店員しか居ないことを確認した男は、廻りに迷惑の掛からない程度の声量で電話相手と話しはじめた…
「悪ぃ、待たせちまって…運転中だったもんでな。そうそう、依頼は完了だぜ。で、今そっちに帰る途中だったってわけだ」
「はぁ?馬鹿言うなよな、今回の依頼が成功しても、金がねぇのには変わりがねぇわけなんだから寄り道とかするわけねぇだろ滴!」
「それにな、いくら探偵事務所開くのに、古い三階立てのビルを住居兼事務所にってよ、虎ジィが紹介してくれて安く購入したから、家賃が無いとは言え、1Fのテナントの喫茶店含めてもビルの管理費用だのでテナントの家賃代が入っても、飛んでいっちまうんだから!あぁ!どっかのお金持ちから高額依頼はないのかねぇ?」
「つうかよ、話しあっから連絡して来たんだろ滴?旦那に小言だけの為にかけて来たとか言わねぇよな?」
「でっ?うん…うん…うん…えっとな…それは違うからな!お店の女の子には調査を手伝って貰えるようにお願いすんのに、謝礼はいくらかって聞いたら、遊んで行ってくれるだけでいいって言われちまって…だからちゃんと帰りに調査料の必要経費として領収書も貰ったし…えっ?女の子達が事務所に顔出したの?マジ?この間の一回で謝礼分じゃないのか?また遊びに来てだって?いやいや、浮気じゃないから!俺は奥さんである滴一筋だから!」
「ったく!からかうなよな…調査する側の探偵が浮気とかねぇから全くよ」
「ん?それマジか?大企業の代表取締役じゃあねぇか?仕事内容は?息子がNTRされたから相手の調査ってか?」
「はぁー高校への調査とか、こりゃあ大変そうだなぁ…まぁ分かった、話は詳しく帰ったら聞くな。それにしても、懲りないねぇ時代が流れても屑は居て、悪魔の囁きに足を踏み外しちまう奴、それに心を殺されちまう奴…」
「この仕事始めてよ、色んなトラブル解決してきてよ一番多かったのはやっぱり浮気調査だろ?なぁ滴…そんなによ結婚までしたっつうのに、隣の芝っつうのは綺麗に見えるもんなのかねぇ?」
「ん?いきなりなんだよ滴?おっおぅ、ありがとう…分かってるし疑ったりしてねぇよ…俺も愛してるぜ滴」
「まぁな、大人になりゃあ色々経験してっからショックはあるが立ち直りも時間がなんとかしてくれる事もあるが、中高生じゃあなぁ…それも初の恋人となっちゃあ、男女問わずよ恋愛に夢や理想持って憧れも強いからな…相手が経験してるかしていないかっつうのにどうしてもこだわって寝取られ現場なんざぁ見たら世界の終わりに感じちまう奴も居て当たり前だろうしな…今回の依頼もそんなとこだろうし」
「せいぜい俺は、かみさんの為に頑張って、パァーッとうめぇモンでも滴に食わせられるよう頑張るわ!」
「さっさとこの仕事終わりにして、そちらさんと話さないとな!旦那さんはやる気出て来ましたぜ!急いで帰るからな」
「今、コンビニだけど、何か買って帰るもんあるか?おぅならデザートな、じゃあまた後で」
話を終え男はスマホの画面をタップし電話を終えた…
そうこの男、柳生三日月 現在28歳 職業 私立探偵 霧隠滴と結婚し、所員に、霧隠龍二と三好葵と言うメンバーで小さな探偵事務所を運営している、あの男だった…
三日月は電話を切り買い物を始めるかと顔をあげると、レジに立つ女性が驚愕の表情でこちらを見ているのに気づいた…
だが三日月は、とりあえず買い物をし、その女性の立つレジへと向かった…
彼女は俯き何か聞き取れない声でボソボソと言いながらレジ打ちをしていた…そして支払いを終え立ち去ろうとしたその時…
「三日月くん…」
彼女は、そう俺の名前を呼んだのだ…
だが俺は、彼女が誰なのかまだ気づかず
「えっと、どこかでお会いした事ありましたっけ?」
その言葉に彼女はショックを受けたようだが、決意をしたようにまた口を開いた…
「そうだよね分からないよね…服部百華です…私が声を掛ける資格がないのは分かっているんだけど…お店に三日月くんが入ってきた時にすぐに分かったの、それから電話の内容聞こえて…今更だけどちゃんと謝らないとって…」
彼女はそう言いながら唇を震わしながら泣きそうなのを必死に堪えるような表情をしていた…
「あぁ、そうだったのか、久しぶりだな。全然分からなかったよ。なんて言うか雰囲気とか全然違うし。それによ、謝るってあの時に落とし前は俺なりにつけたわけだし気にしてないぜ。あそこで俺は全て終わらせたつもりだからよ」
「でも…本当にごめんなさい…今なら分かるの。人の純粋な思いを踏みにじった人間は、一生その報いがついて回るんだって」
「俺は何も言えねぇぜ、見る感じよどんな人生になってるのかは想像はできるけどよ、同情はしねぇし後は、お前次第なんじゃねぇの?とにかく謝りたいなら謝罪は受け取るがそれで気がすむならな」
「ウッ、とにかくごめんなさい。あなたの純粋な気持ちを踏みにじってしまって…それと聞こえちゃったんだけど結婚したんだねおめでとう…」
「あぁ…そうだな…あんまし客が居ないからって話してるのも店に迷惑だし俺行くわ…お前も元気でな…」
「あっ、最後にお節介だろうがよ、なぁ?人はよ誰でもお前みたいにフッといきなり足を踏み外しちまう誘惑がそこら中に転がってんだ、それに堕ちちまう奴も居るけどどん底まで堕ちても、途中でなんとか踏みとどまってもよ、結局一度堕ちちまった罪は付きまとうわけなんだが、それでもよ、そいつ次第で這い上がって行けるもんなんだぜ、色んなもんが邪魔をして楽じゃあねぇだろうけど堕ちたままよりはマシだと思うぜ…言い忘れたのはこれだけだ、じゃあな…」
俺はまだ何かを言いたそうな百華のレジから立ち去り店を出て愛車のベスパに跨がりエンジンをかけ走り出した…
「まいったねぇ、足掻いて足掻いて這い上がれるかはアイツ次第だしなぁ…俺自身だって踏み外した事に気づかず堕ちていく人生って未来もあったかも知れないわけだしな…結局は、自分を信じ周りに助けられ俺はそれを回避できたってだけだしな…腐らず頑張れやってしか言えねぇわな…さてと早く帰らねぇと」
三日月はそんな思いを風に流し家路に走って行った…
✳百華視点✳
「彼は出て行ってしまった…でも、謝れた…謝ったからどうなるの?私の結局はエゴ…自分の罪の意識を軽くしたいだけ…許して貰えるなんて都合の良い事も思っていなかったが…でもやっと言えた…」
彼は、無関心だった…私の罪は消えない…当たり前だ…彼にしてみればきっちりと私たちに落とし前をつけ終わらせたのだから、本当に彼の言うとおり彼はあそこで全て終わらせたのだろう…私達罪を犯した人間だけが許される事無く過去に追いかけられ私は結局はこんなザマ…
でも、彼は最後に言っていた、私次第だと…
私は、彼の言うとおり自分を見失い足を踏み外して堕ちた…途中で気づく事無く、どん底まで…そして消えないネットタトゥーが昔の罪人に与えられる入れ墨のように私の元に残った…、楽じゃないけど私次第と言っていた…
「まだやり直せるのかな…やっぱりミカくんは優しいよ…馬鹿だな私…ちやほやされて自分を見失い大切な物を自ら手放して…」
彼女はレジで涙を流しながらもその顔には先ほどまでとは違い何か決意を決めたような表情を浮かべていた…
END