2話 当たり前な日常の小さな幸せってやつは、どうやら当たり前すぎて気づけなくなっちまうらしい
二人の出会いは、偶然…
彼女が探していたクラスの列は、声を掛けた俺の並ぶクラスだった。
そして、それをきっかけに徐々に二人の距離は近づいていった…
百華の見た目は、俗に言う文系女子。
文学部や図書委員に居てもおかしくない女子生徒。
綺麗な黒髪に細めのスリムな楕円形をした黒縁の眼鏡、落ち着いた話し方で綺麗な言葉使い…
外見だけではなく、彼女の性格は外見と一致した、大人しい性格だった。
彼女は、人付き合いが苦手らしい。
会話の際、何を話せば良いのか考えてしまい上手く話せない…
それが、コンプレックスになってしまい、さらに自分から話しかける事が怖くなると言う、悪循環に陥っているらしい。
中学時代などは、友人との会話は常に聞き手になるばかりなので、静かな女子だと周囲からは思われがちだったと言うことだった。
…
付き合い始めだんだんと心を開いてくれている本当の彼女は…
好きな本や音楽やお笑いやアニメなどの話をしている時の楽しそうな笑顔を見ていると話す事が本当は大好きなんだと伝わってくる…
そして、恋愛観念については、同年代の女子と同じに憧れは当然あったと話していた…
ただ、周囲の女子が初kissをした、初体験をした、高校生で処女はあり得ないなどの意見に振り回される事なく、
しっかりと自分の恋愛観や貞操観念を持っていてとても芯が強い女性なんだと俺は彼女を知る度に惹かれていった…
そして、夏休みが終わり初めての文化祭で彼女から告白を受け、俺も自らの気持ちを伝え付き合い始める事になった。
彼女との時間は楽しかった…
登下校デートや試験前の勉強デート…
勿論、休みの日も色んな場所で遊んだし、互いの家に遊びに行き互いの両親にも挨拶をした。
その時に、彼女の父親に…
「二人は学生だということを分かっているよな?」
「節度ある付き合いを、自分たちの判断でもう子供じゃぁないから出来るよな?」
「判断は二人に任せる…」
「ただ二人とも、今が楽しければ良い、将来結婚しようねとか結婚するんだからと、軽はずみに高ぶる一時的な感情に流され決めつけだけで考えも無しにはスルな。いいな!」
「二人で話し合ってきちんと決めろ!二人で決めたなら文句は言わないから!」
「ただし三日月くん、理不尽に娘を泣かしたらわかるな?」
と凄まれ釘を打たれてしまった。
(ありゃあ、オヤジ達と同じ臭いがすんな!でも、スジが通っていて信用できる大人なのかも知んねぇな。)
と心の中で思いながら…その後…
二人で話し合った結果は、大学に入るまではsexはしない。kissまで。
大学入学以降は、二人の将来の為にやりたい事を探しながら卒業後、生活ができる事を互いの両親達に認めさせ結婚できるようになる事を目標にしながら、きちんと避妊具をした上で、ピルも服用する。
そして、二人の将来や問題は、溜め込まず一人で悩まずにきちんと話し合って決めていこうと言うものになった。
そして…
付き合い始めてから月日は流れ…
学年も2年生に進級し、百華とはクラスが別々になった。
こんな事は、学校生活の中ではあたり前のはずなんだが…
百華は夏休み前6月下旬辺りから徐々に前のように、二人の時間を大切に過ごすのではなく、
「クラスの友達と約束があるから」
「予定が立て込んで忙しいから」
と、そんな理由で毎回のように断るようになり、二人が逢う時間はどんどん失われていった…
次に、登下校も
「クラスの友達が一緒に行こうって…」
「今日はクラスの友達が買い物に…美味しいカフェに…行こうって誘われているから…約束しているから…」
と断られ、二人で登下校をする事が今ではなくなってしまっていた。
クラスも違い教室もかなり離れているので、廊下でバッタリと遭遇する事もなかなかない。
だから、俺は今の百華がどんな姿になっているのかも知るよしがなかった…
最近では、ラインすら既読スルー、
次の日になり、悪びれずに…
「忙しくて返信なかなかできなかったごめん。また今度」
と、そっけないラインが変身されてくるだけ。
俺は一つの不安を頭に浮かべながらも、それを振り切って冷静にポジティブな考えに頭を切り換えた。
新学年そして新しいクラス…
元々、人付き合いが余り得意ではない百華が、新しいクラスメイトの中で、良い友達や仲間を見つけられた。
そんな新たな環境と自分で見つけた友人達と過ごす時間が、今は楽しいのだろう…
仲間や友人に恵まれる事は俺自身人生を変え大切なのを知っているからこそ信じて待とう…
俺は百華を信じる事を決め、自分勝手な寂しさに蓋をし学校に通い続けた。
しかし…不幸は突然に牙をむくのであった…