10話 繰り返す同じ毎日なんざぁ存在しねぇんだぜ
祭り(決戦日)…昨夜の賑やかな喧噪が嘘のように静かに朝日は昇る…
そんないつもより静寂な朝日の中、俺は一人いつも通りの通学路を学校へと歩を進めた…
学校はいつもと変わらずに始まりの鐘を鳴らし…周りのクラスメイトは、退屈で毎日が同じ事のルーティーンの様な時間が流れていく…
毎日が同じなんて本当はそんな事がない事すらにも気づかずに…そして、そんな幻想を壊すのはいつも突然に起きると言う事も知らぬままに…
3時限目が始まり俺は、特別棟の前に立っていた。
そして…3時限目も半ばにさしかかった辺りで、俺のスマホがブルブルと振動し祭りの始まりを告げた…
「もぅ!ミカ先輩ったら一人で」
そう頬を膨らましながら背後から滴が声を掛けて来た。
俺はその声に振り向き
「悪ぃ悪ぃ、久々の大勝負で落ち着かなくてな」
「でも、昔と違ってちゃんと勝手に動かねぇで合図待ってたろ?なぁそんなに怒んなって…」
そう話しかける俺を滴は赤面しながらフリーズしたような顔で俺を見つめていた
「んっ?どうした滴?」
「えっと…あのですね、そのぉ…ミカ先輩その格好…」
「あぁ、これか?朝気合い入れて横の髪の毛久々に剃り上げて、昔みたいに後ろで一本に縛って、眼鏡も、銀縁のスリムな長方形の薄い青レンズに戻したんだが変か?この髪型にはこの眼鏡が一番しっくりと来るんだけどな」
「違います!変なんじゃあなくって、その…あの…昔みたいでやっぱりミカ先輩は一番そのスタイルが似合っています」
「そっそっそうか…ありがとう」
そんな二人の温い空気を邪魔するように、今度はスマホが通話をブルブルと知らせる
「もしもし」
「ミカさん姉貴とイチャついている所すまないっすけど準備完了っす」
「ハイハぁイ♥ミカちゃーん♥アナタのリリスちゃんよぉ♥」
「おいおい、グループ通話になってんじゃあねぇか!」
「フフフフフッ…私にかかればあんな事もそんな事もチョチョイのチョイよ♥」
「滴ちゃんのスマホもチョイッと通話繋げちゃったのよん♥なので、二人の会話はみぃーんなで聞いちゃった♥」
「うぅー生まれてきてごめんなさい…誰か殺ぢでぇ…」
「おい!祭りの前に滴が壊れちまったじゃあねぇか!後で覚えておけよリリスさん」
「いやーん♥ミカちゃーんにキツーいお仕置きされちゃうのされちゃうの♥やる気がぁー爆上げェー♥」
「と言うわけで、全員スタンバイ完了っす」
「おい!龍二くんテメェも後でわかるな?スルーしてんじゃあねぇぞコラッ」
」じゃ、じゃぁ、リリスさん頼むっす」
「ミカちゃんが欲しいかぁ!龍ちゃんも欲しいかぁ!オラッ!気合い入れて行くわよん!BAR 薔薇貴族の力見せるわよん!ハッキングはもう完璧ね?じゃあデカい花火ドーンッ!と打ち上げいくわよん」
「カチャッ…」
スピーカーのむこうから聞こえたキーを叩く音が響くと同時についに祭りの幕が開いた…
そして学校中に響く授業中にそぐわない校内アナウンスのピンーポンーパーンポーン♪と言う音…
これが当たり前に同じ毎日が続くと思っていた全ての人間の考えを破壊する打ち上げ花火の前座とは誰も知るよしがなかったのである…