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43話 始まりの号令

――同日。


コルセア・シティの中心には、市庁舎よりもなお巨大で立派な建物がある。

石造りの塔といくつもの倉庫群からなり、そこへは昼夜関係なく荷馬車が入り、荷物を下ろし、また別の荷物を載せていく。

コルセア・シティに拠点を構える巨大商業組合の一角、クロムウェル商業組合その本社である。


ただ、今夜の本社はいつもと様子が異なっていた。

明かりの数が異様に多い。

いくつもの篝火、いくつもの魔法の明かりが爛々と輝く。

本来ならば商人たちが駆けずり回っている荷受け場には、代わりにクロムウェルの組合兵たちが物々しい様子で並んでいた。

全員が槍や剣を持った完全武装で、今から戦争でも始めるのかと勘繰ってしまうほど。

いや――実際に戦争を始めようとしているのだ。


「全員揃ったかな?」


組合兵たちの前には、黒い鎧に身を固めたアニマルヘッズが1人立っていた。

腕組み仁王立ちするその男は、狐を模した兜を被っていた。

最も深き迷宮(ダンジョン)でエリオットに敗れたはずのフォックスである。


「これより始める作戦は、社長直々の勅命である。この命令の前では全てが優先される」


彼の手には社印入りの命令書が握られていた。

この紙きれ1枚の力によって、今日この夜だけはフォックスがコルセア・シティにおけるクロムウェル商業組合の警備部門の大半を掌握しているのだ。


「我らがクロムウェル商業組合の命運を分けると言っても過言でない。成功した暁には他の巨大商業組合よりも我々は頭1つ飛び出た……いや、他を凌駕する戦力を得た存在となる」


組合兵たちは直立不動でフォックスの話を聞く。

感嘆の声すら漏らさない。よく訓練された兵士たちだ。

フォックス直属の部下で、他の組合兵とは練度が違う。Aランク冒険者すら正面から倒してしまうほど。


「内容は非常に簡潔だ」


フォックスは漆黒の三角盾(カイトシールド)をこれ見よがしに掲げた。

それこそ最も深き迷宮(ダンジョン)の奥底より奪取してきた異界の防具である。


「この盾の対となる漆黒の剣を回収する。ただそれだけだ」


フォックスは三角盾(カイトシールド)を左腕に通した。

すると、心なしか彼の鎧がその黒さをより濃くしたように見える。


「どのような手段を用いようとも構わん。いくら人死にが出ようとも構わん。クロムウェル商業組合の輝かしい未来のためならば、些細な話だ。行けッ!」


フォックスの号令の下、組合兵たちが速やかに動き出す。

組合兵たちは後ろに止められた輸送用に馬車の荷台へと乗り込んでいく。

板金により補強されたチャリオットめいた馬車だ。

全ての組合兵を乗せ終えた荷馬車は猛然と走り出す。

そして2手に分かれ、それぞれの目的地へと向かう。


動乱は突如として訪れる。


コルセア・シティが炎上しようとしていた。





KABOOOOOM!!!


突如として起こった爆発にエリオットの自宅は崩壊!

アパートは完全に瓦礫と化してしまった!


時刻は深夜。


極彩色の魔法光看板よりもなお煌々と輝く満月が、炎と黒煙を見下ろしていた。

武装馬車から降りた完全武装の男たちが、最小限の物音で瓦礫の山へと近寄った。

顔は覆面で隠されてはいるが、彼らの纏う防刃外套にはクロムウェル商業組合の紋章がある。フォックスにより派遣されたクロムウェル商業組合の組合兵、それも特殊部隊たちだ。

彼らの非凡な腕前は爆破跡を見ても明らかだ。

住宅が密集しているというのにアパートのみが爆散している。


組合兵たちは一言も発することなくハンドサインのみで展開、瓦礫の山を囲む。

数は10名、囲みは2列。前列が槍を突き出し、後列がクロスボウを構えている。

組合兵がにじり寄ると、瓦礫がはらはらと崩れ落ちた。


「やったと思っただろ?」


組合兵たちは弾かれたように見上げた。

隣の安アパートの屋上、そこには満月を背に佇む黒い影。

異形の左腕を掲げたエリオットである!

組合兵たちは警告も無しにクロスボウを斉射!

しかし、矢は夜空を射抜くのみ。


――どこへ?


組合兵がそう思った。

その時であった。


ニューロンが加速する。



血飛沫が上がった。

それも大量の。

頭を切り飛ばされた組合兵たちが、全員首から間欠泉めいて血を吹き出して倒れる。

瞬きよりもなお短い時で、組合兵が全滅する。


否、1人だけ首が繋がっているものがいた。

尋問するため、あえて1人残したのだ。

エリオットは生き残りの組合兵を掴み、首筋に鉤爪を沿わせた。


「次やるときはもう少し殺気を抑えるべきだな」


カーテンめいた月の光が波打ち、タマが現れた。

ドヤ顔で腕組していることから彼女が真っ先に気付いたのだろう。


「で、これはなんだ?お前ら、何が狙いだ?」


組合兵は何も言わない。

ただエリオットを見るのみ。

エリオットの片眉が跳ねた。


「愛社精神は結構。だけどそれは自分の命があってこそだと思わないか? もう一度訊く。今さらどうして俺の家を吹き飛ばした?」


組合兵は懐に手を入れた。

エリオットは怪訝な顔でそれを見て――取り出したのは魔法爆弾(グレネード)


「お前の家だけ(、、)だと思うか?」


組合兵の言葉に、エリオットの顔色がまともに変わった。


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