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32話 カウンターアタック

黒煙が立ち込め、炎の匂いに咽る。

巻き込まれた客たちの呻き声が()まない。

爆発で半壊した食堂に押し入ってきたのは、覆面を被った男たちだ。

数は4人、全員剣や棒や弓で武装している。

男たちは炭化した食堂内を見渡して――


「アタシらに喧嘩売ってきたってことは、逆にぶっ殺されても文句言えねえよなッ!」


アニタが吠え、論理詠唱で魔法を放つ。

青い光の衝撃波が光線めいて一直線に飛び、左端にいた男を容易く吹き飛ばした。

男は壁に背中を強かに打ち付け、ぐったりと動かなくなる。


「くそっ、いきなり魔法攻撃しやがった!」

「なんて卑怯な奴だ!」


残る男たちは口々に言いたい放題だ。


「うっさい! 無差別攻撃してくる奴がふざけたこと言うなッ!」


再びの青い衝撃波が別の男を吹き飛ばした。

これで残る相手は2人となった。

とはいえ詰められてはかなわない。

アニタは机から飛び出ると、カウンターの裏へとダイブするように移動した。

カウンターをバリケードめいて使って、男たちを迎え撃とうという考えだ。


そこまでを見届けた後、エリオットは机の裏に顔を引っ込める。

男たちはアニタに注意をとられており、自分たちのことは眼中にない。


「さて、俺たちはこの隙に裏口から出るとしよう」


エリオットはテーブルの裏からこそこそと移動する。

一拍遅れて、レレーナはおっかなびっくり後に続く。

魔法で応戦するアニタの背後を通り、食堂のバックヤードを抜ける。

途中、料理人が頭を抱えて蹲っていた。

レレーナはそんな彼らを見下ろし、それから未だ戦闘音が絶えない背後を振り返り、


「アニタ君を置いて行って良いのかな?」

「あいつなら大丈夫だ」


エリオットは自信満々に言う。

レレーナは目を細めた。


「ほぅ。それはそれは。キミは彼女をとても信頼しているようだね」

「相棒だからな」

「それはいいことだ。護衛される側としては心強い。ところで、私たちは今裏口から逃げようとしているが、襲撃者たちが裏に回っているなんてことはないのかね?」

「大丈夫。魔法爆弾(グレネード)投げ込むような短絡的な奴らだぞ。わざわざ裏口で待ち伏せなんてしない」

「それは経験かい?」

「冒険者としての勘さ」


エリオットはゆっくりと裏口のドアを押し開けた。

棒を持った覆面姿の男と目が合った。


「うおあああああッ!」


エリオットは反射的に思いっきり蹴り上げる。

イイのが股間に決まった。

呻き声を上げることすらできず、男は泡を吹いて崩れ落ちる。


「おい待て。何が冒険者の勘、だ。普通に待ち伏せされていたぞ」


レレーナのジト目が背中に突き刺さる。


「……いや違う。大丈夫、違う」


エリオットは決して振り返らない。


「何が違うんだい? ほら、言ってみたまえ」

「これはまた別の……押し込み強盗か火事場泥棒。そう、そうに違いない」

「んなわけあるか」


レレーナの声音はとても冷たくフラットだ。


『ぬしよ! まだおるぞ!』


突如姿を現したタマが叫ぶのと同時、


「うおおおお!」


腰だめに剣を構えて、別の覆面男が突っ込んでくる。

裏口に回った覆面男たちは2人組だったのだ!

間合いを詰める速度が異様に速い。残像すら生まれるほどだ!

おそらく足に何らかの改造を施しているに違いない。


エリオットは迎え撃つべく態勢を整え――しかし、男の切っ先は真っすぐレレーナに向けられている。

――なぜレレーナに?

心中に浮かんだ違和感を無理やり押さえ、エリオットは目の前の脅威を対処せんと動く。



ニューロンが加速した。



エリオットは男の横へと回り込むと左腕を一閃。

同時に鈍化した時間の流れが元に戻る。

男の頭が高く飛んだ。

夥しい鮮血を間欠泉めいて吹き出しながら!


目前で起こった突然の死に、レレーナが息を呑んだ。


「殺した!」

「ああ、殺すさ!」


エリオットは有無を言わさずレレーナの手を引いて走り出す。

別動隊は予想外だった。

相手は少数だと踏んでいたが、意外と人数を揃えて来ているらしい。

少しマズいことになりそうだ。


「クソッ、アニタのやつ。どこでどれだけ敵を作ってやがる!?」


毒づいても当の本人は遥か後ろで、耳には入らない。


「クソッ!」


幸いなことに食堂で起こった悲劇のせいで、小さな町の中は騒々しく、エリオットたちを気にする者は誰もいない。

2人は人ごみを掻き分けながら一気に町中を駆け抜ける。

追って来る者の気配はない。

やがて町の端まで来た頃、レレーナが口を開いた。


「今日は宿に泊まる予定だったのだが……」


軽口か非難なのか判断が難しい。


「残念だな。それは諦めてくれ」

「仕方がないね。野宿もそれはそれで乙なものだしね」

「助かる」

「気にしないでくれたまえ。護衛とはそういうものだ。あと、そろそろ離してくれないかな?」


レレーナの手を握ったままだった。

だが、ここで恥ずかしがって慌てて手を離すほど初心(うぶ)ではない。


「けっこう強引なんだな。そういうの、私は嫌いではないよ」


とはいえ悪戯っぽく微笑まれてはまた別の話だ。

エリオットは顔をしかめて明後日の方向を向いた。



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