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30話 襲撃

何ということか!

木陰に身を潜める男たちは、明らかに野盗なのである!


「もちろん気付いている」


エリオットはさも当然とばかりに言う。

アニタのジト目が突き刺さる。

もちろんそんなウソなど容易く看過しているアニタであった。


「てっきり地元市民の可能性もあるし、とか言うんじゃないかと思ったわ」


言わないで良かったとエリオットは内心胸を撫で下ろした。


「さて、めんどうな輩の目的を探るとしよう」


エリオットはレレーナの肩に手を回し、エスコートするように回れ右をする。

すると盗賊たちは慌てて、わらわらと街道へと出て来たではないか。


「あーやっぱり狙いは俺らか」


エリオットはため息をついた。

あからさまに護衛付きの旅人を襲うなんて、そうとう野盗も生活が苦しいのだろうか。


「どうするんだい? ホログラム魔法じゃどうにもならないよ」


レレーナは下がりながら訊いてくる。


「安心しろ。こっからは護衛の役目だ。あんたは何もしなくていいよ」


エリオットは自信たっぷりに言った。

野盗は全員で10名ほど。

うち鳥に騎乗する野盗は3人ばかり。

その3人が3人とも長柄の槍を構えて、鳥を走らせる。


「前後で別れてくれるのはありがたいな」


エリオットは左腕を構えると、突っ込んでくる騎兵の前に立ちふさがった。

正面から迎え撃つつもりだ。


「厄介なのは機動力と射程の鳥。というかこいつさえ潰せばどうとでもなる」


ベストな戦法は、ニューロン加速させて騎兵を一瞬で殲滅する。

歩兵は後でどうとでもなる。

と、エリオットが算段しているときだった。


火炎球(ファイヤーボール)


論理詠唱により放たれた炎の玉がエリオットのすぐ脇を抜けて、鳥たちの前に着弾、爆発!

炎に驚いた鳥は立ち止まって、暴れ出したではないか。

どうやらあまり訓練をしていなかったようだ。

背に乗せた野盗たちを次々に振り落としてしまう。


「ファックオフ!」


中指を立てるアニタは、言葉とは正反対の清々しい表情を浮かべていた。

憂さ晴らしなんだろうなと思いつつ、


「あとは任せておくか」


エリオットは左腕を下ろした。

後続の野盗たちが、鳥から落とされた野盗たちと合流し、ひとまとまりとなって向かって来る。

《魂喰らい》を使うまでもない。

アニタはジャケット丈に切り詰めたローブを翻し、腰からロッドを抜いた。

先端に宝石がいくつも埋め込まれた、魔法の発動体である。

アニタがニヤリと獰猛な笑みを浮かべ、口元から犬歯が覗いた。


「ははッ! 一撃でぶっ飛ばしてやんよ! 風強打(ウィンドボム)!」


長い詠唱の後、野盗たちの目前で圧縮された空気が爆発めいた音とともに弾けた。



KABOOOOM!!!



悲鳴すらかき消して、野盗たちはまとめて吹き飛ばされた。

土埃がぱらぱらと舞い落ちる。


野盗たちは全員倒れ伏し、びくびくと痙攣している。

死んではいないが、この様子では当分起き上がることはできないだろう。

溜まっていた鬱憤全てを、理不尽に叩きつけたような魔法攻撃であった。


「ふぅ。すっきりした」


アニタはすっかり機嫌を直したらしく、懐から魔力回復用の葉巻を取り出し、


「でも、こんなところで野盗の襲撃なんて珍しいよなぁ」


火をつける寸前に思い出したように言う。

やはりアニタはただのトリガーハッピーではない。

葉巻の先端から細い白煙が伸びる。


「あーたしかにな。見通しのいい街道で待ち伏せってのも」

「つまり、どうやら私はかなりツイていないようだね」


エリオットの言葉を遮るようにしてレレーナが言う。

やや顔は伏せ気味だ。


「さぁ? どうだか。俺なんて助けた相手に金は奪われるわ、野盗の襲撃に遭うわ。最近、散々だぞ」


気を使ってくれてるとレレーナは判断したらしい。

顔を上げると柔らかに微笑んだ。


「そうかそうか。ありがとう」

「とゆーか金返せ」

「頂戴したエン硬貨は依頼料に含まれてるから、安心してくれたまえ」

「は!? このクソアマ!」


地団太を踏むエリオット。

左腕の鉤爪がガチガチと触れ合い、金属音が響く。


「ほら、金は返してくれるんだから、さっさと早く行こうぜー」


とアニタに促され、さらに背中を押されながら渋々歩き出す。

そんなエリオットを呆けたように見ていたレレーナは、ぽつりとつぶやいた。


「キミたちを雇って正解だよ」





昼下がり。


盗賊の襲撃があったのは昨日のこと。

それ以降は特に何もなく、ラウロウサ・シティへの行程は順調に進んでいる。

エリオットたちがいるこの町は、街道沿いにいくつかある町の1つだ。

町の規模は村より多少大きい程度だが、立地が良いのか人通りは多い。

近くに山や川があるおかげで、露店に並ぶ商品も豊富である。


所はそんな小さな町の小さな食堂。

ピークの時間は過ぎているせいか、食事をとる人たちはそれほど多くない。

食堂の一番奥にある丸テーブルを囲んで、エリオットたちは昼食をとっていた。

空の皿が積まれているが、そのほとんどがアニタとレレーナが平らげた皿である。

支払い?

エリオットが立て替えるのが必然の流れだ。


「あのぅ……食べ過ぎでは……いや、なんでもないです」


エリオットが恐る恐る訊くと、2人からキッと睨まれた。


相棒(エリオット)はデリカシーがないな!」

「まったくだね。もっと気を利かせないといけないよ」

「……すみません」


背中を丸めて小さくなるエリオット。


「いや、なんで俺が謝る流れなんだ?」


エリオットは眉を顰めて自問する。


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