表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/50

20話 廃工場攻防戦

夜が明け、山の稜線から朝日が漏れ出している。

場所はコルセア・シティ郊外。


草木に埋もれるようにして廃工場が1つあった。

割れた魔法光の看板は傾き、社名は汚れて読めない。

この廃工場は暗黒巨大商業組合の買収により、数年前に稼働を停止しており、今はもう誰もいない。


――はずだった。


崩れた敷地と外とを隔てる外壁は崩れ、しかし合間を影が(よぎ)った。


「――こちら異常なし」


人相の悪い、いかにもゴロツキといった感じの男がいた。

革鎧と剣で武装しており、周囲に視線を向けながら廃工場周りを歩いている。

彼の他にも3人ほど、同じような恰好で巡回している。


「先生はこれから実験だとよ」

「はぁ? 一晩中警備して、まだ続けなきゃならねえのかよ」

「そう言うな。金払いはいいんだ。たとえ気狂いでも金を貰ってるからにゃあ――」


火炎球(ファイヤーボール)


閃光!

爆発!

炎上!


「ぎゃああああああ!」


ゴロツキたちは悲鳴を上げてダイブ!

間一髪で爆発の範囲から逃れた。


「な、なん!? テロか!?」

「テロでも無警告魔法攻撃なんてしねぇよ!」

「じゃあなんだよ!」

「たぶん破壊衝動を抑えられなくなった悲しきバケモノが、研究施設から逃げ出してきたに違いない!」

「んなわけあるかッ! 火炎球(ファイヤーボール)!」


KABOOOOOM!!!


ゴロツキが2人ほど爆発で吹き飛んだ!

突然の強襲に混乱するゴロツキ達は、狼狽えるばかりで反撃も何もできずにいる。

2発目の火炎球(ファイヤーボール)の爆炎が薄れる頃、ようやく木々の合間から自分たちへと向かって来る2人組を見止めた。

小柄な女の魔法使いと異形の左腕をもつ戦士風の男だ。


アニタとエリオットである。


「待て! 我々は善良な一般市民だ! 魔法攻撃されるいわれはないぞ!」


リーダー格らしきゴロツキが尻餅をついたまま言う。

エリオットは正面から見下ろした。


「仮に一般市民だとしても、盗賊ギルドの許可なくここ(廃工場)を占拠は許されないぞ」


そこで一旦言葉を切り、増援が来ないことを確かめると、


「よって無警告の先制攻撃が許される」

「許されるかああああッ!」


唾を飛ばして反論するゴロツキたち一同。

エリオットは不快そうに顔をしかめた。


「でも、あんたら誘拐犯だろ?」


途端にゴロツキたちは静かになった。


生体融合(フュージョン)の実験に、そこら辺から市民を搔っ攫ってきてるだろ? そんな奴らに、遠慮がいるかい?」


代わりに絡みつくような殺気が周囲に満ちる。

隠そうとする気も無いらしい。


――おかげで無駄な問答がいらなくて済む。


「よく調べたな……」


リーダー格のゴロツキが剣を抜いた。

さらに左肘からは蟲の足めいた鎌が生えている。


「俺たちも無駄な争いは避けたいんだが……」


それに合わせて残る2人のゴロツキたちも各々武器を握った。


「あんたらは深く知りすぎたようだな。悪いが消えてもら」

「うっせぇ寝てろ!」


アニタの論理詠唱により火炎球(ファイヤーボール)が着弾!


KABOOOOOM!!!


爆炎と閃光が巻き起こり、ゴロツキ達をまとめて吹っ飛ばした。

呆れたようにエリオットは大きなため息をついた。


「おいおい……こっちには魔法使いがいるんだぞ。距離も詰めずにアホな事言ってちゃ、こうなるだろうが」


哀れみなどは一切ない。心の底からの呆れだ。


「さて、アタシのおかげで、護衛は全部吹っ飛んだみたいだしな! さっさと中に突入すっぞ!」


おかげという部分を特に強調し、アニタはさっさと廃工場の敷地へと入って行く。

エリオットは一歩遅れて続く。

端っから襲撃されることを想定していなかったのかもしれない。

シーフ特有の気配察知より、外にいたゴロツキ以外に(廃工場)から出てくる気配はない。

周囲も特に動きはない。


「言っとくけど、室内じゃアタシ魔法使えないからね。炎上して石工も燃えたら寝覚めが悪いし」


彼女の手には、宝石がゴテゴテと着いた魔法の発動体()が握られている。


「その割には真っ先に突っ込んでるけど……」


アニタは廃工場正面にあるドアノブを回し、


「ありゃ、鍵がかかってる」


ご丁寧に施錠してある。

他の木窓は割れて、吹き曝しだというのに。


「ぶち破って燃やすのもあれだしなあ。エリオット、お前シーフだろ。鍵開けくらいしてくれよ」

「木窓から入ればいいじゃん」

「ばっか。こういうのは正面から入ってなんぼなんだよ」


エリオットはあまり納得した様子ではないが、アニタと入れ替わりにドアの前に立つ。

そして、左腕を一閃。

ドアがバラバラに砕けた。


「なんか違う」

「うるさい。左腕のせいで開錠できねぇんだよ」


エリオットを先頭に廃工場内へと入る。

ふと横を見た。

割れた木窓の下、ご丁寧にも棘状の罠が敷かれている。


「いけすかねえ相手だ」


エリオットたちは廃工場の奥へと進む。

そして、鼻を突く異臭とともに青白い魔法の光が2人を出迎えた。

黒いローブを纏った魔法医らしき中年の男が、こちらを見て驚きに固まっていた。

周囲には術台や檻、ドクのクリニックでよく目にするような魔法的道具がいくつも置かれている。

こいつこそ闇魔法医と見て正解だろう。


「貴様ら……なぜここが……」


闇魔法医が一歩後ずさる。


「好き放題にやってくれたからな。盗賊ギルドも冒険者組合もカンカンだぜ」

「バカな! ここを襲撃する輩がいるはずが……」

「ごちゃごちゃうっせぇ! さっさと泣いて這いつくばって、命乞いしやがれ!」


アニタが右手の人差し指に火を灯しながら怒鳴る。

闇魔法医は短く悲鳴を上げると、


「これでもくらえッ!」


テーブルの上にあった陶器をアニタ目掛けて投げつける。


――何かの魔法薬か!?


エリオットはアニタを庇うように前に出ると、左腕で叩き落とす。

陶器が割れ、破片が散らばる。


水だった。


「チッ!」


エリオットはすぐさま魔法医を追う。

だが、闇魔法医は廃工場からでるのではなく――掛けられていた布を取った。

布によって隠されていたのは、大きな鉄製の檻であった。


傷だらけの格子の中には、熊みたいに大柄な男が収まっている。

目は焦点があっておらず、ぐるんぐるんと回っている。


「ピンクの象が飛ぶ。空を飛ぶ。ピンクのAAAA象がAAAA」


涎がだらだらと流れ、正気でないことは一目瞭然。

そして左腕は甲殻状の大腕と化し、刃や爪が無数に生えている。

改造廃人(ジャンキー)


「もう実験済みかよ……」


闇魔法医はソレが入った檻の鍵を、開けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ