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虚無戦史  作者: MIROKU
守護者(ガーディアン)編
39/143

江戸の守護者!の巻!

 寛永の頃、江戸の町。

 島原の乱を経て数年、天下太平の気風が世を覆っても、七郎に平穏は訪れない。

 なぜなら彼は江戸を守るために、命を懸けた日々だからだ。



 古寺に魔物が出ると聞いて、七郎は深夜に出かけた。

 黒装束に身を包んだ彼もまた、魔物の一種かもしれない。

 三池典太の快刀を腰に差し、七郎は月明かりを頼りに古寺へ入った。

 そこで見たのは、浪人らしき骸を喰らう不気味な人影であった。

「貴様は何故、人を喰らうか」

 七郎の問いに人影は振り返った。振り返った人影の両目は、深紅に輝いていた。

 声は女であった。

「苦しみだよ……」

「苦しみ?」

「死の苦しみを全身で感じている……」

 女は答えた。人を喰らう理由は、全身に感じた苦しみを安らげるためだという。

 死の苦しみを安らげるのは、生の喜びであった。

 生きる喜びとは生活の充実であり、艱難辛苦の先に生じるものだ。

 一度死してよみがえった女の魔物は、他者を喰らう事で己を安らげるという。

「あんたの魂は美味そうだ……」

 女が静かに立ち上がったので、七郎も刀柄に右手を伸ばした。

「そうか、俺は美味そうか」

 七郎は苦笑した。命を懸けた日々も、決して無駄ではなかったようだ。

 そして今また、新たな最高の一瞬がある――

 ――ウシャア~!

 女が七郎へ飛びかかった。七郎はその動きを読んでいた。

 女が伸ばした両手を避けつつ、三池典太で拝み打ちにする。

 女の体は空中で一刀両断されて、境内に落ちた。その肉体は瞬く間に溶け崩れていく。

「魔性、死すべし」

 いくぶん哀れみをこめて七郎はつぶやいた。

 彼の絶望的な戦いは、魔を降伏する事へ帰結する。

 悪神である修羅も、時に仏敵を降伏するゆえに、仏法天道の守護者なのだ。

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