江戸の守護者!の巻!
寛永の頃、江戸の町。
島原の乱を経て数年、天下太平の気風が世を覆っても、七郎に平穏は訪れない。
なぜなら彼は江戸を守るために、命を懸けた日々だからだ。
古寺に魔物が出ると聞いて、七郎は深夜に出かけた。
黒装束に身を包んだ彼もまた、魔物の一種かもしれない。
三池典太の快刀を腰に差し、七郎は月明かりを頼りに古寺へ入った。
そこで見たのは、浪人らしき骸を喰らう不気味な人影であった。
「貴様は何故、人を喰らうか」
七郎の問いに人影は振り返った。振り返った人影の両目は、深紅に輝いていた。
声は女であった。
「苦しみだよ……」
「苦しみ?」
「死の苦しみを全身で感じている……」
女は答えた。人を喰らう理由は、全身に感じた苦しみを安らげるためだという。
死の苦しみを安らげるのは、生の喜びであった。
生きる喜びとは生活の充実であり、艱難辛苦の先に生じるものだ。
一度死してよみがえった女の魔物は、他者を喰らう事で己を安らげるという。
「あんたの魂は美味そうだ……」
女が静かに立ち上がったので、七郎も刀柄に右手を伸ばした。
「そうか、俺は美味そうか」
七郎は苦笑した。命を懸けた日々も、決して無駄ではなかったようだ。
そして今また、新たな最高の一瞬がある――
――ウシャア~!
女が七郎へ飛びかかった。七郎はその動きを読んでいた。
女が伸ばした両手を避けつつ、三池典太で拝み打ちにする。
女の体は空中で一刀両断されて、境内に落ちた。その肉体は瞬く間に溶け崩れていく。
「魔性、死すべし」
いくぶん哀れみをこめて七郎はつぶやいた。
彼の絶望的な戦いは、魔を降伏する事へ帰結する。
悪神である修羅も、時に仏敵を降伏するゆえに、仏法天道の守護者なのだ。




