魔を斬る剣!の巻!
「なんだよ、来年は悪徳ロリータかよ!」
海母神に仕える武神の一人、シンは戦乙女の次回予告を見ていた。
トロピカルな戦乙女たちの活躍は終わった。
彼女達にとっては、戦いも人生の一ページでしかない。
その先にあるものを目指すために「今、一番大事なこと」に取り組んできたトロピカルな戦乙女。
その行動こそ真実だ――
「ペネロープを思い出しちまう……」
シンはつぶやく。彼は人間であった五百年前、吸血鬼ペネロープと戦った。
ペネロープは吸血鬼の王「不死王」と人間の間に産まれたダンピールだった。
外見年齢は十二歳前後だったペネロープと、どうして恋をするようになったのか?
今ではシンに思い出す事もできない……
「――味方になるんじゃないか?」
シンの傍らには眉目秀麗の青年がいた。
元「吸血鬼ハンター」のランバーだ。彼もまたペネロープと戦っている。
もっとも、ランバーはシンより五十歳ほど年下で、彼が戦ったペネロープは外見年齢十八歳前後だった。
それがどうして恋人になったのか――
「ぬぎぎぎ……」
シンは歯ぎしりして悔しがる。彼はペネロープの「恋」の相手だった。
対するランバーは「愛」の対象であった。
二人は共に海母神に仕え、幾多の戦いを制した武神だが、それは互いに恋敵と認識していたからか。
それはあたかも、ら○まにおける早乙女○馬と響○牙のようなものだ。
「……ち、とにかく俺達は俺達の務めを果たそうぜ。混沌を撃退するんだ!」
**
関ヶ原の戦を経た頃、江戸。
世間は、徳川と豊臣の戦に注目していた。
勝った方が間違いなく日本の覇者となり、負けた方は間違いなく滅ぼされると。
世を圧迫するような緊張は、この時代にもあった――
「――何者だ?」
柳生宗矩は城から屋敷への帰り道、何者かに遭遇した。
すでに黄昏時だ。この時間は「この世」と「あの世」がつながる時間帯なのだ。
この夕闇の中で出会う者が、全てこの世の者とは限らない。
“ふふふ……”
それは女の姿をしていた。
宗矩が見たのは刺客ではなく、人知を越えた魔性の姿だ。
眼前の魔性を見据え、宗矩は刀を抜いた。
白刃を八相に構え、不動の態を取る。
その様子は、魔を降伏する不動明王の如しだ。
「――参る」
宗矩は踏みこんだ。
一陣の風が吹く如く、宗矩の剣が空を斬り裂く。
宗矩は刹那の間に三間あまりも踏みこんでいた。
同時に魔性の首は宙を舞っていた。
“はっはっはっはっ……”
地に落ちた魔性の首は――
美しい女の生首は最後に呪いの言葉をつぶやいた。
“汝らは戦火を避け―― 世の闇を知らずに生きてきた。この世は魔天の”
言いかけた魔性の首に、宗矩の投げつけた刀が突き刺さった。
「ほざけ」
宗矩は言う。すでに魔性の姿はなかった。全ては夕闇の中で宗矩が見た幻だったのか。
「いやあ、お見事ー!」
その時、物陰から現れたシンが拍手した。
「なかなかのお手前……」
シンの隣に立つランバーもまた、宗矩の剣に感服したようだった。
「な、なんだお主ら」
宗矩は戸惑う。混沌と戦う同志の出会いは、どこか滑稽だ。




