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47:作戦を立てて

 アルレクでの魔大陸攻略はなかなかハードなものだったとシュリスは記憶しているけれど、幸いにも現実ではそこまでではなかった。シュリスが神使のローブを手に入れた事はもちろん大きいが、何より混成軍の力が大きかったからだ。

 シュリスたちが先行して魔大陸を進み安全地帯を設置すれば、すぐに本隊が続いてくれる。おかげで孤立する事はないし、きちんと休息を取る事も出来る。満身創痍でひたすらに魔王戦を目指したゲームとは雲泥の差だ。


 この分なら、そう遠からず魔王の住む城にたどり着く事が出来るだろう。けれどその前に、勇者の最強装備を手に入れなくてはならない。

 そこでシュリスたちは、戦いの合間に取りに向かう事にした。魔王軍の注意を混成軍が引きつけてくれている今なら、移動にもそう苦労しないはずだから。


「私とラルクとリーバルは中に入らなくていいの?」

「はい。エル様たちには外からの襲撃を防いでほしいんです」


 出発を前に、シュリスは作戦について仲間たちと話し合った。

 今回、勇者の最強装備を手に入れに向かうのは、魔大陸へ先行して渡ってきた時と同じ八名だ。けれどこれを、シュリスは途中で二つに分けるつもりでいた。


 装備があるのは魔大陸がまだ人の住む土地であった頃に作られた神殿の跡地なのだが、ここには問題が二つあった。

 一つは、ダンジョンボスであるハロスの存在だ。

 シュリスたちが魔大陸へ上陸しても、ハロスは一度も姿を現していない。その理由は分からないが、ゲームと同じような展開になる事は現実でもままあるから、十中八九そこで待ち構えているのではないかとシュリスは思っている。


 そのハロスと戦う際に気をつけなくてはならないのが、アルレクと同じなら神殿跡地では普通の魔法が使えないという点だ。

 濃密な瘴気と魔力が作用し跡地内部では魔法が暴発しやすくなるため、ハロス戦では魔法攻撃が一切出来なかった。シュリス自身前世でその情報を知らずにゲームをしていた頃は、何度も魔法で自爆しパーティーを全滅させていたのだから、現実でも同じだと思って行動した方がいい。

 唯一の救いは、瘴気の影響を一切受けないからか神聖魔法だけは使えるという事だろう。回復役の聖女は、どのプレイヤーでもパーティーに入れっぱなしだったはずだ。


 そんなシュリスの思い出を一々話したりはしないが、エルメリーゼとラルクス、リーバルには神殿の外で待機してもらうつもりでいた。けれどただ待つだけではなく、三人にも重大な任務がある。

 訝しげに問いかけたエルメリーゼに、シュリスは自ら書き記した神殿跡地の見取り図を指しながら話した。


「ハロスとはここ、祭壇の間で戦うことになるはずです。ハロスを弱らせるために私は結界を敷きますが、そうすれば異変に気づいた魔物たちが集まってくるでしょう。だからギリギリ結界の範囲内で、けれど魔力暴走の恐れのないこの辺りにエル様たちは待機しててほしいんです」

「それで集まってきた敵を倒せばいいわけね」

「はい、私たちの戦いが終わるまで耐えて頂く必要があるので、大変かとは思いますが」

「そのぐらい平気よ。結界もあるわけだし。ね、ラルク」

「ああ、一匹も通さないから安心しろ」

「シュリスちゃん、僕もいるからね! 僕も活躍するから!」


 エルメリーゼは賢妃のサークレット、リーバルは虹牙の豪弓という最強装備をそれぞれ手に入れている。イレギュラーなラルクスには何も特別な装備はないが、その分シュリス手製の魔法薬を大量に預けてある。

 彼らなら出来るだろうとシュリスが話すと、エルメリーゼたちは笑顔で頷いた。

 意気込むリーバルに苦笑しつつ、シュリスはゼルエダたちに目を向けた。


「ゼルエダは、とにかく勇者の剣を掴むことを考えてね。剣の形とは限らないんだけど」

「分かってる。祭壇の上に刺さってるものを、何であれ抜けばいいんだよね。任せて」


 勇者の最強装備はアルレクのプレイヤーたちからは勇者の剣と呼ばれていたけれど、必ずしも剣の形をしているわけではない。

 というのも、アルレクでは勇者の育成もプレイヤーが内容選択をする事が出来るため、メイン武器も選べたからだ。弓や槍、斧など多彩な形状になる可能性があるが、ゼルエダの得意武器は剣だから、十中八九そうなるだろうとシュリスは思っている。


 懸念が残るとすればゼルエダが抜けなかった場合だが、それを考えてしまうと最早身動きがとれなくなる。勇者しか抜けないそれを、ゼルエダなら手に出来ると信じるしかない。


「中では魔法が使えないので、ゼルエダが抜くまではトリスタンとレグルスが頼みの綱になります。でも一番は敵の攻撃を受けないことよ。ソラも出来るだけハロスを足止めして。影を狙うのは難しいかもしれないけど」

「ん、ソラ出来る」

「上手くいかなくても気にするな。お前たちのことはしっかり守ろう」

「隙を見てこっちから攻撃する分には構わないんだよな? サビルの分まで、しっかり殴ってやる。腕が鳴るぜ」


 トリスタンたちもそれぞれ最強装備を手にしているが、中でもソラの持つ夜叉のクナイが鍵となるはずだ。

 ゲームでは1ターン敵の行動を封じる事が出来たそれは、影を地面に縫い付ける事で敵の動きを制限出来る特殊な魔道具でもあるのだ。


 魔法で底上げしなくても地力でかなりのスピードで動けるトリスタンとレグルスでハロスを撹乱してもらい、ソラに動きを止めてもらう事で攻撃を阻止する。

 その間にシュリスが結界を張りゼルエダが装備を入手すれば、弱ったハロスを簡単に倒す事が出来るだろう。


 本隊に戦力を残しつつ、ハロス戦を攻略するにはこれが一番良い方法のはずだ。このメンバーならすでに何度も死線を潜り抜けてきたから、連携もしっかり取れる。

 ハロスの持つ他の攻撃手段についても情報を共有すると、シュリスたちはひっそりと混成軍のキャンプ地を離れた。

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