33:仲間探し
どうにか今日中に更新間に合いました。
本当遅くなってごめんなさい!
シュリスたちが修行に懸命について行く中、並行して行われた仲間探しも順調に進んだ。
一番最初に接触出来たのは、聖女や賢者と同じくアルレクのメインストーリーで必ず仲間になるエルフ族の青年リーバルだ。リーバルは女好きで性格は軽く、作品ファンからはチャラ男エルフなどと呼ばれていたキャラクターだが、弓の腕前は一級品で魔法と併用して繰り出される弓術の威力は凄まじいものがあった。
そんな彼はラルクスと同じ里出身で幼馴染であり、エルメリーゼとも旧知の中だ。
アルレクでの賢者エルメリーゼは夫を亡くしていたからか、リーバルとの絡みはほとんどなかった。どちらも遠距離攻撃型だから、そもそも同じパーティーに組み入れる事自体が少なかったけれど、リーバルの方からも賢者とは距離を置く描写が多かったように思う。
けれどゲームと違い、現実でラルクスは生きている。賢者夫妻とリーバルの関係は良好で、長い付き合いの中で厚い信頼を培っていた。
そこでエルメリーゼたちは、シュリスが打ち明けたアルレクの話を、前世の事を伏せてリーバルにも一部伝える事にした。自分たちはシュリスたちの修行で忙しいから、代わりに動いてもらうよう頼んだのだ。
他でもない昔馴染みの頼みだ。その上、魔王討伐にも関わる事ならと、リーバルは快く引き受けてくれていた。
「シュリスちゃん、何してるのー?」
「リーバルさん、こんにちは。どうでしたか?」
「んー、とりあえず今回はセルバの騎士団長に会えたよ」
修行の一環として、シュリスは治癒の魔法薬作りも行っている。ラルクスから教わったエルフの秘薬にシュリスが神聖魔法を付与すると、とんでもなく効能が上がる事が分かったからだ。
その魔法薬を作るべく、庭の片隅にあるラルクスが育てている薬草畑でシュリスが材料集めをしていたある昼下がり、フッと空気が揺れて家の前にリーバルが現れた。
エルメリーゼが作り出した転移魔法は、生来魔力量の多いエルフ族には簡単に扱えるため、リーバルも覚えている。その能力を活かして、リーバルは仲間を探しに世界中を行き来していた。
ゲーム開始前なため、シュリスが伝えられたのは個別ストーリーで知ったキャラクターたちの過去についてだ。現在がどの時点かが分からないから難易度は高いものの、どの国で何をしているなどの大まかな情報は渡す事が出来る。
それを元にしてリーバルは無事に見つける事が出来ると、顔を出しにきていた。
「それよりさ、頑張った僕にご褒美ちょうだいよ」
「そういうのは私じゃなくエル様にお願いします」
「えー、嫌だよ。エルメリーゼに絡むとラルクがうるさいし」
リーバルもエルフ族らしく美形だが、鋭さのあるラルクスとは違って甘めの顔立ちだ。公式設定では四百歳を越えていた気がするが、垂れ目がちで童顔だから人族でいう二十代ぐらいに若々しく見える。
目をキラキラさせて長い金髪を揺らす様は、犬が戯れついているようで可愛いと、前世で人気があったと記憶していた。
けれど残念ながら、シュリスはゲームでも現実でもリーバルに対して何とも思っていない。可愛さでいえば、幼い頃のゼルエダの方がずっと可愛いと思う。
だからベタベタと付き纏われても面倒くさいだけだった。
「それより騎士団長さんですけど」
「ああ、シュリスちゃんが心配してたことなら大丈夫だよ。ちゃんと両目付いてた」
今回リーバルが接触出来たのは、同じくメインストーリーで仲間となる隻眼の剣士だ。彼が片目を失うのは、セルバ王国滅亡時だと知っていたが、すでに現実はゲームの流れから変わっている。もしすでに隻眼になっていたらと、シュリスは心配していた。
「ドワーフの里に行くよう、伝言も伝えたよ。神託だって言ったら、すぐに行くって飛び出していった」
「そうでしたか。ありがとうございます」
リーバルに頼んで動いてもらっているのは、仲間探しだけではない。それぞれのキャラの最強装備も早い段階で手に入れられないかと、シュリスは記憶の限り伝えている。
そしてこれらの話は、リーバルに説明する過程で神のお告げで得た事になっていた。
神託を受けるのは大神殿の大神官だけだ、という事は神殿関係者しか知らない。シュリスは神官見習いでしかないけれど、神殿に明るくない人からすれば全く分からない。
特にエルフ族のリーバルは、精霊とは深い関わりを持つが神からは遠い存在だ。その上、シュリスは見習い用とはいえ神官服を着ているし、治癒魔法も使える。リーバルからすれば、立派な神官そのものにしか見えていないから、すんなり信じてくれたのだ。
「それにしてもすごいよね。シュリスちゃんのおかげで獣王国の王子様も助けられたしさ。神のお告げって本当にあるんだって、みんな感謝してたよ」
「あはは……そうですか」
メインストーリーで仲間になる三人の男キャラの最後の一人、虎族の熱血武闘家の正体は、魔王軍に攻め滅ぼされてしまったゲーベルン獣王国の第二王子だった。
瀕死の傷を負い敗走した彼はとある小さな村で助けられるが、そこもまた魔王軍に蹂躙されてしまい、生き残って復讐を誓うのだ。
そんな彼の事も、リーバルはうまく手を回して救い出してくれたらしい。
妙に距離が近いリーバルの事はどうにも苦手だけれど、レベルアップに勤しむ自分たちの代わりに動いてくれている事を思うと、感謝の気持ちも自然と抱くというものだ。
すり寄ってくるリーバルからさり気なく距離を取りながらも、シュリスは柔らかな微笑みを返した。




