7# 大きくなったら姉を嫁にしていい?
明日はまた学校ね……。
今日はナナくんの退院や七李お姉ちゃんの葬式のこともあって結局学校は休んだけど、今のあたしはナナくんからいっぱいエネルギーもらったから、明日元気に戻れるよ!
とは言ってもやっぱりお姉ちゃんは……。七李お姉ちゃんはもう……、どう足掻いても元に戻れないよね。
今はナナくんになってまだあたしのそばに残っているからつい忘れていたけど。今あたしはもう姉がいない。
もうあたしを構って抱き締めてくれるお姉ちゃんはいない……。本当に寂しいよ。
でも駄目だ。あたしだってもう子供じゃないんだから。小学校卒業したし。今は弟がいて、自分はお姉ちゃんになったし。しっかりしないとね。今度あたしが姉としてナナくんのお世話してあげるからね!
とはいえ、ナナくんの中身はお姉ちゃんそのままだし。結局あたしがいなくても自分で色々できちゃいそうだよね……。あたしはナナくんに何をしてあげられるのかな? ううん、弱気は駄目だ。ナナくんのお世話はあたしが必ずちゃんとやるからね!
実はあたし、この前からずっと弟が欲しかったんだよね。でもお母さんはあたしが物心がついた頃からすでに亡くなってお父さんしか残っていないのだから、弟や妹なんてどうしても叶わない夢だった。
お父さんは再婚したりしないの? ……とかあたしが訊いたこともあるけど、やっぱりそんな気はないみたい。まあ、それはそれでいいかも。別に新しいお母さんなんて必要ないよ。あたしには七李お姉ちゃんがいるから……。
いや、『いた』ね。でもそんなことは今もういいから。
まさか、こんな形で弟ゲットだとは。血が繋がっていないけど、そんなのどうでもいいと思う。だって中身は他の誰でもない、大好きな七李お姉ちゃんだし。
昔からあたしはいつもお姉ちゃんにくっついてたよね。『大きくなったらお姉ちゃんを嫁にもらう』とか言ったこともある。
あの時お姉ちゃんはあたしがただ冗談で言ったと思ったようだけど、実は本気だったよ。
あたしはお姉ちゃんのことが大好き。だからお姉ちゃんが男の人と一緒にいるところを見るたびにあたしが焼き餅を焼いてきょろきょろ落ち着かなかった。
だっていつかお姉ちゃんが誰かに奪われて、遥々遠いところに去っていってしまうかもしれないと、不安に思っていたから。
「お姉ちゃん……」
あたしと七李お姉ちゃんは所詮女同士で、しかも血の繋がった姉妹……。どうせこれ以上の関係にはなれないのよね。だからそんなあたしの思惑はずっとただの夢でしかなかった。
あれ……、待って……。
今のお姉ちゃんはナナくんだよね。そしてナナくんは男の子……、弟だけど血は繋がっていない。つまり義理の姉弟。
もしかしてこれいける! これっていけるじゃん! むしろ本当の姉弟じゃないから都合がいい!
よし、ナナくんを嫁に……あ、今は婿と言った方が正確か。
うふふ、あたしはナナくんと……って、いやいや、待って……。あたしは今いけないこと考えちゃってるよね。
あれ……、『いける』のに『いけない』? どういうこと? 結局どっち?
何を馬鹿なこと考えてるのよ、あたし。駄目だよね。なんか変になってしまった。もう……寝よう。寝るよ。
そのつもりだったけど、結局頭の中はどうしてもまだ変な想像ばかりで、全然眠れない。
だって、やっぱり七李お姉ちゃんのことが好き。もちろん、今ナナくんのことも好き。大好きよ。
今自分の中の何かが突然覚醒してきた気がする……。
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一時間経ってもやっぱり眠れないので、とにかく自分の寝室から出てきた。
出てきて何をする気なの? それは、ちょっと夜這ィ……じゃなく、ナナくんの様子を見に行くだけ。
あたしはナナくんの部屋に入ってきた。もう寝ているようだね。いつものお姉ちゃんならあたしより夜遅く寝るけど、今ナナくんは子供だから寝る時間は早くなるよね。
ナナくんはちゃんとぐっすりとベッドで寝ている。気づかれないようにあたしが静かに近づいていく。
いい寝顔だ。あふふ、無防備だよね。今あたしが何かしたらどうなるの? まあ、別に何もするつもりはないよ……?
ナナくんの体は小さいので、ベッドが広く見えるね。もう一人一緒に添い寝しても余裕よ。
そう考えてあたしはついベッドに上がってナナくんのそばに横になってしまった。
これっていわゆる『弟と添い寝』……これも弟ができたらやりたいことの一つね。なんかいいよね。
昔あたしが眠れなかった夜も、よくお姉ちゃんの部屋に入り込んで添い寝してたね。
だから別に今は普通に昔と同じだよ。姉妹一緒に寝る……。あ、今は姉弟になっているけど。
あたし、なんか……幸……せ……。
そう考えたらなんか眠気が……。やっぱりナナくんの隣は一番居心地よくて落ち着けるね。
そのままいつの間にかあたしは寝落ちしてしまった。




