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21# こういう時に幼女に癒されたい?

21話の投稿と同時に、1〜20話の改善も行いました。

誤字や日本語がおかしいところを直したり、描写不足のところをもっと詳しく書いたりして、読みやすくしてみました。

 (すず)ちゃんが家に来てナナくんに会った水曜日から3日後、もう土曜日になった。


 七李(ななり)お姉ちゃんがナナくんになったのは先週の土曜日だった。つまりもう一週間経った。


 それはさておき、今大変なことになっているようだ。


 今日あたしは朝からなんか身体がだるくて、イライラで何をやっても億劫(おっくう)に感じてしまう。それだけでなく、時々お(なか)が痛い。でも何か変な物を食べた覚えがない。それに上手く説明できないけど今の痛みは今までの腹痛とは違う。


 これは病気なの? ううん、こんな症状が何だとあたしはすぐ察しがついた。そもそもあたしの今の年齢ならアレ(・・)がそろそろ来るっていう時期だった。


 そう思ってあたしは自分なりに一応色々準備をしておいた。経験はまったくないけれど、知識くらいは持っている。






 そして午後になったら……やっぱりアレだった。本当に来たんだ。しかも思ったより重くて苦しい。もう限界……。


 「ね、ナナくん」


 あたしはナナくんの部屋に入ってきた。今ナナくんは椅子に座って、机の上のノートパソコンを(いじ)っている最中のようだ。


 「姉貴、何か用?」

 「あのね、今日あたしなんか調子悪くて……」


 焦っていながらも、すぐ本題に入ることを躊躇(ちゅうちょ)してしまって、あたしが前置きから始めた。


 「やっぱりね。朝からなんか様子が変だなと思っていた。なんか元気ないよね」

 「うん、その通りだよ」

 「病気なの?」

 「それは……違う。実はね……、これは……アレだ」

 「アレって何のこと?」


 ナナくんは目を()らして、(しら)けた声で質問をした。


 「アレだよ。アレが来た」

 「お化けでも出た?」

 「違う。本当にあたしが何を言いたいのかわからないの?」


 わからないわけないだろう。だってナナくんは……。


 「……うん、全然わからない」


 ナナくんがまだ知らないフリを続けている。


 「あのね、実は……毎月来るアレのことだよ。わかる?」


 やっぱりあたしがこれを今口に出すことに抵抗感がある。


 「毎月って? あ、給料か?」

 「そうじゃない! 女しかないアレだよ!」


 なんか今の誤答がわざとらしくて、あたしがイラッとしてきてしまった。


 「じゃ、男のオレには関係ないことだよね」

 「それは……。もう、いい加減に! わかっているくせに。わざとか!?」


 あたしはつい大きい声を出してしまって、ナナくんもそんなあたしを見て驚いた。


 「……ごめん、でも今のオレが関わるべきではないことだよね?」

 「やっぱり……わかってたんだね」

 「それはまあ。でもお前は言いたくないようだから、せっかく空気を読んであげたのに」

 「気を(つか)ってくれてありがたいけど、やっぱり……」


 案の定、ナナくんは今の自分がこんなこと話せる立場ではないと思って、あえて気を(つか)ってくれて言わないようにしていたね。


 「結局本当にこんなことをオレに話していいの?」

 「そ、それは……。ちょっと抵抗感があるけど、やっぱりいいの。お願い、ナナくん……。ううん、七李(ななり)お姉ちゃん……」


 ナナくんとしてではなく、七李お姉ちゃんとしてなら問題ないだろう。


 「わかったわ。この様子じゃどうやら結構重いのね」


 あたしがナナくんのことを『七李お姉ちゃん』と呼び直したら、ナナくんもそれに合わせて喋り方を『お姉ちゃんモード』へスイッチしてくれた。


 「うん、お姉ちゃん、意地悪……」

 「ごめん、桃四(ももよ)……泣かないで」

 「泣いてないもん」


 そしてあたしはナナくん……お姉ちゃんと一緒にゆっくりベッドに座って人生相談を始めた。






 結局これは一体どういうことなのか? 言い辛いけど、実はアレだ。それはいわゆる『初潮』っていう生理現象だ。


 あたし粟崎(あわさき)桃四(ももよ)、今13歳、中学1年生……やっと初めての『月経(おつきさま)』がやってきた。


 小学生の頃からアレが来た友達も多かったので、あたしにももしかしたらもうすぐ自分の番が来るかなと心配して、とっくに覚悟して準備しておいた。


 うちにはお母さんがいない。だからこんなことを相談できる人は七李お姉ちゃんしかいない。


 もちろん、こんな話をあたしが何度もお姉ちゃんと話したことがある。お姉ちゃんも女の先輩として『いつか来たらその時相談に乗ってあげる』って言ってくれた。


 だけど、中学生になってもアレがまだ来ていなかった。その所為(せい)であたしが時々不安を感じたこともある。


 そして先週お姉ちゃんが突然事故に遭って、亡くなってしまった。


 ううん、もっと正確に言うと、お姉ちゃんは男の子……つまりナナくんになってしまった。


 まさかその直後、あたしの初潮が来るとはね。これは本当に予想外なことだった。


 男の子になったお姉ちゃんはもちろん、もうアレとは無縁になったはず。あたしもこんな姿になったお姉ちゃんにあんなことを相談するのはやっぱり抵抗感がある。普通の男の子ならあまり聞きたくない話だろうとわかっている。


 だから朝からアレが来るとわかっていたのに、お姉ちゃんを避けようとしていた。


 お姉ちゃんもあたしの様子を見てなんか察していたようだけど、あたしが自分から言わない限り触れないつもりだったようだ。


 あたしだって、色々自分なりに準備して、知識だけはもちろんすでに勉強しておいた。だからお姉ちゃんに頼らなくたって、自分で何とかできるはずだと思っていた。


 しかし結局アレが実際に来たら、なんか思った以上にきつくて頭が上手く回らなくなってしまった。痛いし、イライラするし。もうどうしたらいいかわからなくなってきた。


 結局やっぱり素直にお姉ちゃんに頼るしかない。こういう時は強がらなくていいよね。お姉ちゃんだって元女の子だ。きっとこれくらい大した問題ないよ。


 お姉ちゃんは今身体が男の子になったとはいえ、あたしより5年長く女としての生活を送っていた。つまり経験者だ。


 例えどんな姿になってもあたしにとってお姉ちゃんは頼りになれる人に変わりはない。


 痛みを抑える方法とか、注意するべきこととか、こんな時に食べる料理とか、必要な用品の使い方とか、やっぱり経験者から学んだ方が手っ取り早い。


 「まさか、自分とはもうお別れ……だと思ったら、妹が代わりになるとはな」


 そうよね。まるでおつきさまがお姉ちゃんからあたしにうつってきちゃったような感じ。


 「お姉ちゃん、(ずる)い。一人だけ楽になっちゃって」


 優しく話し相手をしてくれたお姉ちゃんに対して、あたしはつい八つ当たりをした。だって本当に(ずる)いんだもの。


 「そう言われてもな。あたしは好きでこうなったわけじゃないし」


 わかってるよ。あの事故は誰も思いがけないことだったって。お姉ちゃんは別に好きで女の子を()めたってわけじゃない。でも……。


 「やっぱり、あたしも男の子になりたい!」

 「そう来るか。気持ちがわかるけど、いきなりトラックに()かれに行くなんて思わないでね」

 「もしそうやって本当にアレがなくなってくれたら、あたし……」

 「おい、落ち着け! 確かになくなるかもしれないけど、別の意味でね」


 あたしが投げ()りな気分でそんな洒落(しゃれ)にならない冗談を言ってみたら、お姉ちゃんは慌ててあたしを慰めてくれた。


 「お姉ちゃん、やっぱりもう一つお願いしたいこと」

 「何? いきなり」

 「今すぐ女の子になってくれ」

 「は?」

 「やっぱり、今のナナくんの姿でこんな話をするのは(しゃく)だ。せめてナナちゃんになってよ」


 そんなことを相談する時やっぱり相手が男の子だと認識してしまったら落ち着かない。幸い、今のナナくんならすぐに可愛い女の子の姿になれる。だからせめて外見だけでもいい。


 「つまり女装して欲しいってこと?」

 「うん」


 やっぱりお姉ちゃんがあたしの気持ちを理解してくれたんだ。


 「お前、こんな時でもまだそんなこと……」

 「駄目なの?」

 「いや、駄目じゃないけど、本当に必要?」

 「うん」


 わがまま言っているとはわかっているけど、やっぱり必要だよね。あたしの精神のためには。


 「まあいいけど」


 呆れたような顔をしていながらも、結局お姉ちゃんは女装してくれた。


 「ありがとう。お姉ちゃん」


 そしてお姉ちゃんは女の子の格好に着替えて(かつら)を被って、先日と同じような可愛い銀髪少女の姿になった。やっぱりこの姿を見たらひとまずあたしの心が(いや)される。


 こうやってあたしが夕方までお姉ちゃんと話して、色々アドバイスしてもらった。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 「もうこれでいい? そろそろ夕飯を準備しないと」

 「うん、本当にありがとう」


 もうすぐ夕方になって、今夜もお姉ちゃんは晩ご飯を準備してくれる。


 「じゃ……」

 「ちょっと! そのままでお願い」


 お姉ちゃんが(かつら)を外そうとしたら、あたしはすぐ呼び()めた。


 「は? 女装はもういいだろう?」

 「やっぱりそのままの姿でご飯を作って欲しい」

 「またか。ご飯を作る時くらい動きやすい格好になりたい。(かつら)も邪魔だし」

 「でも今この格好()めたら、あたしはきっと調子が崩れる」

 「いや、これはさすがに関係ないよね」

 「関係あるよ」


 やっぱりあたしはご飯を作っている銀髪ロリ少女を見たいの。目にしたらきっとすごく(いや)されるよ!


 「わかった。まったくお前がわがままだ」

 「やった!」


 まだ文句を言っているけど、お姉ちゃんはあたしのわがままを聞いて、着替えずそのままの格好で部屋を出て台所に向かった。やっぱりお姉ちゃんはあたしには甘いんだね。






 「お前、まだ調子悪いだろう? 無理に手伝わなくてもいいのに」


 あたしが台所までお姉ちゃんに付いてきて、今お姉ちゃんのそばで料理作りの手伝いをしている。


 「ううん、大丈夫よ。今あたしがお姉ちゃんと一緒にいる方がむしろ具合がよくなる」


 エプロン姿の幼女はやっぱりそばにいる人の心を(いや)す力が宿っている。例えそれが外見だけだとしても。


 「だったらいいけど、無理はしないでね」

 「はい〜。お姉ちゃん大好き」


 こんなちっちゃいお姉ちゃんも素敵で可愛くてあたしは好き。


 「ところで、赤飯とか欲しい?」

 「え?」


 そういえば初潮が来たら赤飯を()いて祝うという風習があるよね。理由はよくわからないけど。


 「いや、やっぱり今赤っぽい物はあまり見たくない」


 こんな物を食べて逆に(かん)(さわ)るよ。


 結局今日(土曜日)と翌日(日曜日)、お姉ちゃんはずっとこのままお姉ちゃんでいてくれて、あたしもいっぱいお姉ちゃんに甘えさせてもらった。


 こんな小学生の子供の姿になったけど、中身は七李お姉ちゃんそのままだ。お姉ちゃんはいつもあたしのそばにいる。今までも、これからも。


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