18# うちの弟と妹はすごくいい子だよ?
「ね、鈴ちゃん、見て見て。可愛いよ〜」
翌日、あたしは学校で昨日撮ったナナちゃんの写真を鈴ちゃんに見せた。
「あ、本当に可愛い女の子ね。誰なの?」
「ナナちゃん、あたしの妹よ〜」
「妹? でも、昨日は弟って言ったのでは?」
「実は妹にもなれるの〜」
「どうやって? ……まさか弟に女装させたね」
「うふふ、正解〜」
「おいあんた、変態か」
なんで鈴ちゃんにまで変態呼ばわりされちゃったの!?
「違うよ。ナナくんは自ら女装したいと思ってたよ」
「いや、そんなわけないじゃん。普通の男の子ならそんな趣味あるものか? もし本当にそうだとしたら変態よ」
「ナナくんは変態なんかじゃないもん!」
中身は女の子だからね。でもこの事実はまだ鈴ちゃんには言えないよね。
「だから、どう考えても変態はあんたの方よ。これはあんたの趣味だよね」
確かに実際にあたしもそうするつもりだったかもね。でもナナくんが自分で女装したってのは事実だよ。
でもやっぱりそんなこと言ったらナナくんは『女装趣味の男の子』だということになって、変な目で見られちゃうから、今のところで『姉貴の趣味で女装させられた可哀想な弟』にしておこう。
「あはは、それもそうだけどね」
「やっぱり、不憫な弟ね」
いやいや、実際に本人が好きであんな格好したのにね。
「でもすごく似合ってるよね?」
「まあ、確かにそうだよね」
「だから女装させて大正解だったね」
「いや、そんなわけが……。まあ、そうかもね」
呆れそうな顔をしていながらも、鈴ちゃんは否定しない。やっぱりナナくんの女装は完璧ね〜。
「あんた、ショタコンだけではなく、ロリコンにもなっちゃうの?」
「え? そんなことは……。ショタコンならともかく、ロリコンだなんて……」
「ショタコンは否定しないか……。やっぱり自覚あるよね」
「あはは。でもやっぱり可愛いよね。ナナくんもナナちゃんも。このままあたしはショタコンでもロリコンでもいいか〜」
可愛いは正義だからね。ショタコンも、ロリコンも、悪いことなんかではないし〜。
「あんた、本当に重傷ね」
「だって、可愛いものは可愛いんだから〜」
「外見だけで人を判断するのかよ?」
「そ、それもそうだけど……」
面食いに何が悪いのよ? でも確かに顔だけでなく、性格も大切だよね。
「ナナくんは本当にとてもいい子よ」
「あんたの趣味に付き合ってくれたからいい子ね?」
「違うよ! 確かにそれもそうだけど、とにかくそれだけじゃないよ」
「じゃ、ナナくんってどんな性格なの?」
「え? それは……えーと、どこから説明したらいいかな……。簡単に言うと、七李お姉ちゃんとそっくりよ」
だって、七李お姉ちゃん本人だから。
「七李お姉ちゃんと同じ? 男の子なのに」
「うん」
「でも確かに七李お姉ちゃんって……、口悪くて、面倒くさがり屋さんで、勉強嫌いで……」
「なんで欠点ばかり言うの!?」
確かにそうだけど、七李お姉ちゃんにもいいところいっぱいあるよ。
「じゃ、やっぱりナナくんはそうじゃないよね?」
「うっ……、まあ実はその通り。本当にお姉ちゃんとそっくりだから」
今こんな姿になっても七李お姉ちゃんは……ナナくんは相変わらず愚痴多くて、面倒なことがあったらすぐ顔に出ちゃう。
「まあ、あんたは元からお姉ちゃん大好きだからね。だからもしあの子がお姉ちゃんとそっくりだったらこんなにメロメロになるのもあまり予想外ではないかも」
「鈴ちゃん、わかってくれるみたいね〜」
「私も七李お姉ちゃんとは何度も会ったことがあるからな。あんなんだけど、美人で優しくて料理上手だよね」
「そうだよね」
確かにお姉ちゃんは怒りやすくてよく文句言うけど、実は優しくていつもあたしのことを心配している。
「でも……、本当にもう会えないのよね。私もなんか悲しくなってきた」
「鈴ちゃん……」
やっぱり鈴ちゃんもまたお姉ちゃんと会いたかったのね。
「あ、でも一番辛いのはやっぱり桃ちゃんだよね」
「あたしはもう大丈夫。ナナくんが一緒にいてくれたことですごく癒されてるよ」
「そうか。やっぱりあんたはあの子大好きね」
「うん。大大大好き」
「あんたをブラコンにするくらいね」
「えへへ、そこまでは」
「褒めてはいないし!」
弟のことを愛して大切にするという意味なら褒め言葉であるはずだよね。
「やっぱりあの子と会ってみたいね。今日放課後とかいいかな?」
「は? あんなに早く会いたいの?」
なんかいきなりだね。まあ、あたしがナナくんのことでいっぱい自慢話をしていたからね。
「ちょうど今日の放課後私は特に予定がないからね。桃ちゃんは?」
「あたしも特にないね」
昨日と同じように、早く家に帰って、ナナくんと遊ぶつもりよ。
「なら私はあんたの家に行ってもいいかな? 駄目かな?」
「うん、いいよ。でも念のためにナナくんにラインで伝えて確認しておくね」
「ナナくんはラインやってるの?」
「うん、変なの?」
「つまり、スマホ持ってるの?」
あ、そういうことね。いきなりあんな小さい子にスマホを使わせるのはちょっと早いと思われるよね。
「あれはお姉ちゃんのスマホだよ」
「へぇ? 七李お姉ちゃんの? これ勝手に使わせてもいいの?」
「いいの。お姉ちゃんが命を懸けて助けた子だから、これ子はやっぱりお姉ちゃんの代わりみたいな存在だよ」
「そうか……」
鈴ちゃん、まだお姉ちゃんのことを気遣ってくれているようだね。
「あ、ナナくんの返事が来た。速いよね」
「どう?」
「問題ないよ。じゃ今日放課後一緒にあたしの家に行こうね」
「うん」
こうやって、放課後鈴ちゃんをナナくんに会わせるということになった。




