17# どうやら一気に弟も妹もできた?
「やっぱり変かな? オレはこんな格好」
ナナくんが女の子の格好をした理由を説明した後、今もまだその格好のままで自分の部屋に戻って話の続きをしている。
「そんなことないよ。むしろ意外といけるかもね」
いけないことなんてどこにもないよ。可愛いは正義だからね。
「でも、こんな姿を見たら疑問に思っちゃうね。ナナくんって本当に男の子なの? もしかして本当は女の子なんじゃないか?」
こんな可愛い子は男の子であるわけが……なくはないけど。
「はっ? 今更何馬鹿なこと言ってる?」
「だって、最初に病院で会った時はね、正直もし髪が短くなかったら女の子だと思ってたかもよ。でも実は髪の短い女の子である可能性もあるのでは?」
髪の短い女の子もいるのよね。そんなに変じゃないかも。
「いや、本当に男だよ。この体は?」
「証拠はあるのか?」
「は?」
「本当にこの体が男だと証明して見せてよ」
「いや、そう言われてもね……。おい、もしかしてどさくさに紛れてあれを見たいだけだよね」
バレたか。実はその通り、これが狙いだった。
「そんなこと言わずに……」
「見せるわけないだろう! 変態!」
また怒られちゃった。こんな銀髪ロリっ子の姿で怒っている仕草もなんか可愛くて悪くないけど、やっぱり『変態』だなんて心外だ。
「じゃ、やっぱりナナくんは女の子ね? これから『ナナちゃん』って呼んだ方がいいかな?」
「まだ続ける気なのかよ! しつこいぞ」
ナナくんは拗ねた顔をした。
「お前な……、やっぱり駄目な妹だ。大体年頃の女の子は軽々しくあんなものを見たいとか言うべきではないぞ。セクハラ発言はよめろ。スケベ女か? 痴女かよ?」
また七李お姉ちゃんモードで説教か……。でも今のナナちゃんの姿はむしろ背伸びしている生意気な女の子にしか見えないのよね。全然迫力ない。むしろなんか可愛い〜。
「お前、なんでニコニコしてるの?」
「今ナナちゃんの方が妹よ。うふふ」
「いや、妹じゃなく、弟だけど」
「弟? こんな格好で説得力ない。どう見ても女の子だもん。中を見せないと男の子だと信じない」
「またかよ! お前全然人の話聞いてない!」
やっぱり駄目か。無理強いもよくないしね。この辺にしておこうか。
「別にあたしは男の子になりたくてなったというわけじゃないのに……」
ナナくんは溜息をつきがらそう呟いた。なんかいきなり雰囲気は重くなってきてない?
「え?」
「もし本当にこの体は女の子だったらその方がいいかもね」
ナナくんは俯いて落ち込んでいるような表情で文句を言った。
「まさか七李お姉ちゃん、男の子になったことは後悔しているの?」
確かに色々変わってしまって大変だろうね。なのにあたしはついからかいすぎちゃって。
「どうだろうね。昔も想像してみたことがあるよ。自分が男だったらどうなる、って」
「そんなことあるの?」
「本気で考えたってわけじゃないけどね。でも実際に男になってしまったらやっぱり色々慣れなくて大変だよね」
「そうね……。あれが付いていることとか……」
「だーかーら、こんな話はもう……! お前の頭はそんなことしかないのか! お前をこんな変態女に育てた覚えはないぞ」
うわ、ナナくんはすごく嫌な目であたしを睨んでいる。なんかあれを話題にすると、地雷を踏むことになるみたい。
「いや、ごめん。あたしは悪かった」
変態扱いはさすがに……。
「まあ、もし乗っ取とられたのが女の子の体だったら、この状況はただ昔に戻るみたいなことになるよね。その場合だったらあまり大変じゃないかも」
「そうね。部屋や服とか、生き方とか、色々変える必要もなくて大分楽だよね」
お姉ちゃんが子供の頃着ていた服も残っている。今着ている服もその一着だった。だから女の子だったら昔の服はすぐそのまま着用できるよね。
でも男の子になったから、服は新しいものを買わなければならない。今昔の服を着てもただの女装やコスプレでしかない。日常で使えるというわけではない。
「でもこの体ならもし女の子だと偽装したら誰でも信じると思うよ。なんなら女の子として生きていけるかも」
「いや、そんなの無理に決まってる。今ならともかく、大きくなったらさすがに男女の差が見られてすぐバレるよ」
実は『男の娘』でも悪くないと思ったけど、やっぱり現実的ではないよね。残念だ。
「まあ、そうかもね」
「もういいよ。覚悟できたからこれから男として生きていくよ」
「そうか。ならよかった」
やっぱりナナくん強いよね。多分これは七李お姉ちゃんの性格のおかげでもあるよね。
「それって、つまりこれからも、その……女の子と付き合うっていうことになるのかな?」
これについてやっぱりあたしは気になっているのだからついでに訊いてみた。
「……え? それは……まだそこまで考えていないよ。恋愛のことなんて昔でも全然経験なかったし」
「そうね。そもそもお姉ちゃんは彼氏いなかったよね」
確かにお姉ちゃんは今までまだ誰とも付き合ったことがないね。
「まあ、告白されたことくらいはあるよ。全部断っちゃったけど」
それってまさかそもそも本当は男に興味ないとか? 時々あたしもそう考えていたね。お姉ちゃんがこんな可愛いのになんで彼氏いないなんて。
でもそんなことは今もう関係ないかもね。どうせ今ナナくんは今男の子だからやっぱり恋愛対象は女の子だよね。あ、でも別にナナくんがホモになっても構わないけどね〜。
「お前、また何か嫌らしいことでも考えているよね」
「えっ!?」
また顔に出たね。さっき考えたことはさすがに言えないよね。何とか言って誤魔化そう。
「いや、恋愛って難しそうだなって。それはさておき、結局ナナくんは普通に男の子として生きていくよね」
「そうするしかないよ」
まあ、あたしもつい色々変な想像をしていたけど、結局やっぱり普通に男の子として育っていくのが一番だよね。恋愛のことは……今まだ子供だからすぐ考える必要がないかもしれない。
でももし大人になってもまだ恋人がいないのなら、その時あたしと付き合わせてもらうよ。むしろ付き合ってください! なんちゃってね。
「あ、でも女装趣味の男の子って……」
「趣味じゃないし。やっぱり止めようか」
「いや、止めなくてもいいよ。むしろ続けてよ。趣味が悪いとか言わせないよ」
そうよね。最近『男の娘』は随分人気出るし。
「だーかーら、趣味って言うな! ただ……、やっぱりたまに昔の自分に近い姿になってみたいだけ」
「そうか。なるほど」
そんな気持ちはあたしでもわかるかも。
「だから時々こんな格好でもいいかな?」
「時々ではなく、学校に行く日までずっとこんな格好しても大丈夫だと思うけど」
「いや、それはさすがに」
本当にいけると思うけどね。このまま本当に『男の娘』やっていけば? まあ半分冗談だけど。
「まあ、そもそもあたしは妹より弟が欲しいんだからこれでよかったと思う」
「姉貴がそう言うのなら……」
でも本当にナナちゃんもナナくんもあたしは好きだよね。今はなんか同時に弟と妹をゲットしたみたいで嬉しかった。
昔は『姉』で、今は『弟』と『妹』。なんか不思議だよね。そういえばまだ『兄』がいないね。でも弟の方がいいから兄なんてやっぱり必要ないね〜。
「そろそろ晩ご飯の準備をしないとね。今のオレは普通より時間かかりそうだから」
「あたしが手伝うよ」
今日の晩ご飯もまたナナくんの手作り料理が食べられるね。まだ小さい体で慣れていないのだから朝の時みたいにあたしが手伝わないとね。
「それはいいけど、勝手なことはするなよ。お前が食材に手を出すと危ないから」
「相変わらず酷いよ!」
料理のことになるとあたしが全然信用されていないね。でも力仕事だけなら問題ないだろう。今あたしが大きくて頼れる姉だから。
「ね、ナナくんそのままの格好でエプロン姿になっても悪くないかもね」
やっぱり料理を作るのなら女の子の格好の方が似合うのよね。
「いや、やっぱり着替えるよ」
「あ、それともメイド服とかも悪くないかも」
ロリメイドさんが料理を作ってくれるって、なんかいいよね。
「そんな服は持ってないよ」
「じゃ、今度プレゼントに買ってあげる」
持っていなければ買えばいいってことだよ。
「要らないよ! メイドカフェじゃあるまいし!」
「それと、猫耳や尻尾も面白いよね」
メイドで猫耳のナナちゃんの姿を想像してみたら……うん、悪くないかもね!
「オレは着せ替え人形かよ!?」
「それとも、兎耳の方がいい?」
猫もいいけど、兎もきっと可愛いよね。狼や狐も……。
「お前本当に全然人の話聞いてない! もういい。オレはもう着替えて台所に行く」
「ちょっと待って! せめて今の格好は写真撮らせてよ。お願い〜」
結局メイド服とかはまだ駄目のようだけど、とにかく今の可愛いドレス姿のナナちゃんの写真はゲット〜。




